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序
00: 宇宙は幽霊屋敷で一杯
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吹いてきた風に舞うようにして、一枚の紙切れがジャック・オー・ランタンのかぶり物のちょうど目の当たる部分に張り付いた。
かぼちゃ男は、それをはがして、自分の目の前に持ってきた。
一枚の紙は、どうやらどこかの本の序章ページを引きちぎったものらしい。
「我々は、単に未知、そして未来と過去からの遺構である時空転移ゲートを修復しているのではない。この世界そのものと、人類史自体の瓦解を食い止めているのだ。」
ヘンゼルとキューブ(グレーテル) 往復書簡より
かぼちゃ男は、その一文を読むと、あっさり紙切れを道に捨てた。
そんな事は知っている。時空転移ゲートのお陰で、俺達の知っているこの宇宙は、未知なる深淵世界から巨大な幽霊屋敷のオンパレード状態に成り下がった。
幽霊屋敷は、宇宙のあちこちにあるのだ。
もちろん、そこに化けて出てくる幽霊やお化けは、みんな宇宙人のなれの果てだった。
それにその幽霊達は、元は宇宙人って事で、そいつらが何をやっても、意味不明なことばかりだ。
まったくもう、これじゃ、この星のハロウィーンに登場する化け物たちの方が、ずっと可愛げがあるってものじゃないか。
・・・・・・・・・
紫紺の空に重く輝く三日月を見ながらカルロスは、崖下に飛び込む寸前に、彼が普段絶対にやらないことを、、そう、ある種の感慨をもって、自分自身の歳を数えるということをした。
ハロウィーンの明日が誕生日なのだ。
32才になる。
後先を考えずに無茶が出来る歳でもない、かと言って、総てを諦めきれるほど枯れきってもいない、、。
このままで行けば、自分は移民先のニホンの街で、一生うだつの上がらないゴロツキとして終わるだろう。
自分自身に、暗黒街で、のし上がる才覚がないとは思っていない。
腕っ節も度胸も、他の悪党共に遅れを取っているわけではない。
現に、チンピラなど眼中にないというような地元の凄腕刑事に、こいつは危ないと昔から目を付けられていた。
しかし、それでも芽がでない。
それが運と言われれば、運なのかも知れないが、かといって運に頼らず、どこかの組織に潜り込んで、底辺から這い上がる辛抱が自分にないのも分かり切っていた。
だから俺は、ここにいるんだ。
文字通り、生か死か、最後の賭けだった。
切り立った崖下から突風が吹き上がって来る。
風の中に花の甘い匂いが潜んでいる。
夜空にかかった三日月が、その風を己の懐に呼び込んでいるように思えた。
なけなしの有り金と、幾つかの裏切りと暴力で手に入れたのが、ダイビングポイントと呼ばれるこの「時刻」と「場所」だった。
そして「特異点」で、生き延びるための幾つかの装備。
覚悟が決まった今、後は出来るだけ遠くに飛び込むだけの事だった。
特異点が自分を受け入れるのか、それとも、単なる投身自殺に終わるのか、神のみぞ知る、、、「いや俺には神など生まれた時からいなかった」と男は思い直した。
総ては、やはり「運」が支配するのだ。
かぼちゃ男は、それをはがして、自分の目の前に持ってきた。
一枚の紙は、どうやらどこかの本の序章ページを引きちぎったものらしい。
「我々は、単に未知、そして未来と過去からの遺構である時空転移ゲートを修復しているのではない。この世界そのものと、人類史自体の瓦解を食い止めているのだ。」
ヘンゼルとキューブ(グレーテル) 往復書簡より
かぼちゃ男は、その一文を読むと、あっさり紙切れを道に捨てた。
そんな事は知っている。時空転移ゲートのお陰で、俺達の知っているこの宇宙は、未知なる深淵世界から巨大な幽霊屋敷のオンパレード状態に成り下がった。
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もちろん、そこに化けて出てくる幽霊やお化けは、みんな宇宙人のなれの果てだった。
それにその幽霊達は、元は宇宙人って事で、そいつらが何をやっても、意味不明なことばかりだ。
まったくもう、これじゃ、この星のハロウィーンに登場する化け物たちの方が、ずっと可愛げがあるってものじゃないか。
・・・・・・・・・
紫紺の空に重く輝く三日月を見ながらカルロスは、崖下に飛び込む寸前に、彼が普段絶対にやらないことを、、そう、ある種の感慨をもって、自分自身の歳を数えるということをした。
ハロウィーンの明日が誕生日なのだ。
32才になる。
後先を考えずに無茶が出来る歳でもない、かと言って、総てを諦めきれるほど枯れきってもいない、、。
このままで行けば、自分は移民先のニホンの街で、一生うだつの上がらないゴロツキとして終わるだろう。
自分自身に、暗黒街で、のし上がる才覚がないとは思っていない。
腕っ節も度胸も、他の悪党共に遅れを取っているわけではない。
現に、チンピラなど眼中にないというような地元の凄腕刑事に、こいつは危ないと昔から目を付けられていた。
しかし、それでも芽がでない。
それが運と言われれば、運なのかも知れないが、かといって運に頼らず、どこかの組織に潜り込んで、底辺から這い上がる辛抱が自分にないのも分かり切っていた。
だから俺は、ここにいるんだ。
文字通り、生か死か、最後の賭けだった。
切り立った崖下から突風が吹き上がって来る。
風の中に花の甘い匂いが潜んでいる。
夜空にかかった三日月が、その風を己の懐に呼び込んでいるように思えた。
なけなしの有り金と、幾つかの裏切りと暴力で手に入れたのが、ダイビングポイントと呼ばれるこの「時刻」と「場所」だった。
そして「特異点」で、生き延びるための幾つかの装備。
覚悟が決まった今、後は出来るだけ遠くに飛び込むだけの事だった。
特異点が自分を受け入れるのか、それとも、単なる投身自殺に終わるのか、神のみぞ知る、、、「いや俺には神など生まれた時からいなかった」と男は思い直した。
総ては、やはり「運」が支配するのだ。
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