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【 旅と温泉グルメ しゃぶれどもしゃぶれども(中部編) 】

04: 信州高山温泉郷山田温泉 朝日屋亭にて 「転がり込んだ幸運」

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 信州高山温泉郷の内、蕨温泉から少し奥まった場所にある山田温泉の朝日屋亭さんで、相方と一緒に昼食を頂いた時のエピソードです。

 ここは細い山間の道を抜けていく途中にあるので余り立派な駐車場は望めません。
 山田温泉自体、結構マイナーな場所なので駐車場が空いているかとも思ったのですが、とんでもない。
 アン達が村営駐車場に車を止められたのはかなりラッキーな出来事だったようです。

 山田温泉の村営駐車場に車を止めたのは丁度お昼時で、そのすぐ側にある朝日屋亭もお客さんですごく立て混んでいました。
 で結局、アン達は囲炉裏テーブルで中年のご夫婦と相席になりました。
 朝日屋亭さんは凄く丁寧な仕事をするので、両カップルとも料理待ちの状態が長く続いて困ったことに、、。
 注文が終わって向かい合わせになったら、お互いの視線の持って行きようがないのです。

 特にご主人の方がソワソワ、夫婦間の間に微妙な空気が、、短時間なら誰もアンの事を男だって思わせない自信があるけど、、このお店、注文してから料理が出てくるまでが異常に長いんです。
 黙ったまま一切のアクションを止めたら絶対、中身は「男」って判らないだろうけど、暫くすると、声とか水商売風の所作で正体が判っちゃうんですよね(笑)。
 ソワソワの原因は勿論アンにあって、幸い隣のテーブルが空いた時にはアン達は渡りに船みたいな感じですぐに席を移動しました。

 で時は流れ、中年夫婦は無事食事にありついてテーブルを離れ、次にやってきたのが小学生くらいの姉弟を引き連れた家族連れ。
 空腹を抱えた子どもだと、このお店の待ち時間はこたえるだろうな、、と可哀想に思っていたら、なんと彼らが注文した味噌煮込みうどんセットが待ち時間なしに運ばれてくるじゃありませんか。

 あっ!と思って相方が「それってうちの注文です。席を変わっちゃったから、、」と言ったんだけど、遠慮がちに言ったのがまずかったのか、それとも小学生の男の子が箸をすぐに付けちゃったのが駄目だったのか、全ては後の祭りでした。
 で次に隣のテーブルに運ばれて来たのが「味噌煮込みのすいとんセット」、これも相方の注文したもので「あっ、それもうちのです!」のやや怒気の孕んだ相方の一声が、今度は届いて、お店の人も事の次第をやっと理解したようで今度は無事にこちらのテーブルへ。

 この経緯に気づき、結果的に食べ物を横取りしたような形になってしまった家族連れもなんだか気まずいような雰囲気に、、。
 でも次に出てきた問題は、弟君だけが食事にありついて、他の三人は長い待ち時間があるってことなんですよね。
 特に上のお姉ちゃんは、健気に空腹を我慢してるんだけど、その様子は見てて可哀想なくらい。
 弟君も自分だけ満腹になって空腹の家族を見守るのも辛かっただろうなぁ。
 ・・・って「転がり込んだ幸運」は、本当に幸運なのかってゆーお話でした。
 この話ではお店の人も含めてだれも得してないんだよね。
 でも人生ってすべからくみんなこんなものなのかも。

PS 雪国の街道筋の家の作りってちょっと変わってて面白いですよ。
 街道端の袖卯建をもつ出梁作りとか、今なら断熱工法とか違うアプローチをしますが、自然環境への対応の為の知恵の働かせ所は今も昔も同じですね。
 そういう昔の建物の面影がちょっと古びた民家だと残っているのが風情ですね。

 朝日屋亭さんは、そんな風情を保ったまま、自家製味噌(小四郎味噌)でうどんとか、すいとんとかの煮込んだものを食べさせてくれるお店なんですが、支払い時に調理場を覗き込んだという相方に後で話を聞いてみると、味噌焼きおにぎりなんか、これだけ大勢お客さんが入っているのに、2・3個ずつ丁寧におにぎりを炙っていたのとのこと、、、。
 大阪でこんな事をやると一悶着おこりそうですが、ここの煮込みうどんの味を堪能すると、苛立ちも収まってしまいます。
 美味しいというよりも、そんな味なんですね。
 相方は郷土食の「ひんのべ団子汁」が、特に気に入った様子。
 アンはむき身の味噌が付いた焼きおにぎりが手間をかけた分だけ有り難かったです、合掌(笑)。

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