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第1章
採捕
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あっきーへ
今、私はバルぽんの目を盗んでこの手紙を書いています。
私はこの手紙を書き終えたらちょっくら地下に潜りに行きます。
(おっと、このことはバルぽんには言わないでくださいね。まだ連れ戻されたくはないですから)
最近はデスクワークばかりで兎狩りをしていなかったので体が鈍って仕方なかったのです。
他人が捕まえた兎もいいですが、やっぱり自分で捕まえた兎の方が良いですからね。活きのいいものが一番ですよ。
~中略(兎狩りについての記述が延々と続く)~
私が出かけている間はバルぽんに私の代理をお願いしておきます。
困ったことがあったら、バルぽんに相談してください。
そうそう、バルぽんにお願いごとをするときには、「兎1匹分」と伝えてください。喜んできいてくれますよ。
最後になりましたが、気になっていることと思うので、あっきーの処遇について書いておきましょう。
これは城内では有名な話ですが、この城の労働力は不足していて、特に庶務については常に「猫の手も借りたい」状態です。
曲がりなりにも宰相である私のところに、身元不明の行き倒れの情報が直接届けられるあたりからお察しですね。
そこで私は都合の好いことにちょうど目の前に落ちている労働力を拾うことにしました。
仕事に追われる私達の「おつかい」をしてくれる者がいれば良いのです。
つまり、身元不明の行「き」倒れである「あっきー」には「したっぱ見習い」としてこの城で働いてもらうことになります。
既に宰相権限で手続きは済ませているので難しいことは何もありません。良かったですね。
ちなみに、この城の出入には身分証明が必要なので身元不明のあっきーは「宰相が任命したしたっぱ見習い」という身分が無ければ城外に出ることはできません。
「ネズミ一匹入り込めない」「地獄への片道切符」と言われる警備を肌で感じることを止めはしませんが、あまりオススメできませんよ。
追伸
封筒の中にあっきーへ渡したいものを入れています。
私からの贈り物なので遠慮なく受け取ってくださいね。
という横暴宰相さん(自由人から昇格しました)の手紙を宰相さんの部屋の前の廊下に座り込んで読んだ。
追い出されたときにもう一度ドアを開けようにも、閉まる間際の七尾サンの顔が思い出されて自然と手が止まったんだ。あれはそっ閉じ必至だったね。
触らぬ神に祟りなし…神は禁止ワードだったっけ。危ない危ない。
それにしても七尾サンの言っていた意味がジワジワと身に染みるな…。宰相さんに関わるとこうなるのか。なんという理不尽だ。
身分を保証してもらえるのはありがたいことなんだけど、逃げ場がないことも保証されてるじゃないか。
追伸に書いてあった通りに封筒を探ると確かに固いものが入っているのがわかった。これが渡したかったものか。
…ううむ? なにか見落としている気がするぞ。まあいいか。
シャラ、と音をたてて出てきたのは、子どもの粘土細工のように歪な形のトンボ玉がついた首飾りだ。
トンボ玉の色は黒っぽい茶色で、お世辞にも綺麗だとは言えない。トンボ玉以外は、金属っぽいのに光沢のない真っ黒な鎖だ。
なんか見るからに呪いの品っぽいのですが。これ、つけなきゃダメ?
目の前でビシッとホースを決めている小人の少女は羽もないのに宙に浮いたまま、キラキラとした粉末を控えめにまき散らしていて、見るからに妖精っぽい。
肩につかない長さの内巻き気味のとき鴇色の髪が、彼女が動くたびにゆらゆらと揺れている。
『やあやあ我こそはチュートリアル用フェアリー、チュレムなりぃ!』
葛藤の末に宰相さん贈与の首飾りをかけてみると妖精さんが見えるようになりました。
「チュレン、ちゃん?」
『ノンノン! のっとチュレン、いえすチュレム! 世紀のユビキタスが導きます! ウェアラブルデバイスのフェアリーさんだよー』
「ちょ、ちょっと待って! 横文字だらけでついていけないよ!」
『横、文字? オーケーオーケー。あいしー。言語プログラムに調整いれるよー。うぇいたりろー……っと。どうかな? 聞き取れる? テステス。ボクの名前はチュレムです。好きな季節は夕ブタの時期です。ボクのお仕事は魔道具使用のお手伝いをすることです。魔道具と使用者の仲介をする、とても大事な大事なお仕事なのです。キミ…あっきー君の場合はこの首飾りの魔道具との仲介役をボクが担当するのです!』
いつ息継ぎしてるのか不思議になるくらいの早口だった。
聞き取れた俺の耳を褒めて欲しい。
一気に言いきった後でこちらの様子を伺ってきたので大丈夫だと返すと満足気に『じゃあ続けるよー』と近づいてきた。
そうか、まだ続くのか。
『さてさて、あっきーが着けてるその首飾り型の魔道具はヴィー様の数多ある天才的発明の中でも一二を争う最高傑作です。ヴィー様は今でこそ宰相として辣腕を振るっていますが元は研究畑で活躍していたことはあまり知られていないです。実は『王国』でよく見かけられる魔道具の殆どはヴィー様が生み出したものなのです。そしてヴィー様の魔道具にはボクとヴィー様だけが利用可能な小径が設けてあるから、例えば照明を消したいときはボクに言ってくれればボクが小径を使って魔道具を操作できるのです』
「へぇ、」
『そうそう、魔道具といえば、この首飾り型魔道具の特徴は「成長する」ところです。この魔道具は持主の使い方の癖によって自動的に持主に合うように機能改善が行われるのです。毎日身につけて利用しているだけで充分なのでいつでも身につけたままでいるといいです。精密に作り込まれた呪術のおかげで万が一にも外れてしまったり壊れてしまう心配はないので安心です』
とんでもない事実が判明した。
「えっ!? まさか、あっ…取れない! 本当に取れないんだけど! コレって大丈夫なの!?」
両手で握りしめて全力で引っ張ってもある程度持ち上がるだけで、外れる気配が全くない。
呪術の力ってすげー。…って感心してる場合じゃない。
やっぱり呪いの品だったか!
『ウィウィ。もちろんヴィー様謹製の魔道具に誤作動なんてあるはずないのです。身体的な害が全くないのは保証するのです。身体的には』
あれ? 精神的にはヤバイの?
今、私はバルぽんの目を盗んでこの手紙を書いています。
私はこの手紙を書き終えたらちょっくら地下に潜りに行きます。
(おっと、このことはバルぽんには言わないでくださいね。まだ連れ戻されたくはないですから)
最近はデスクワークばかりで兎狩りをしていなかったので体が鈍って仕方なかったのです。
他人が捕まえた兎もいいですが、やっぱり自分で捕まえた兎の方が良いですからね。活きのいいものが一番ですよ。
~中略(兎狩りについての記述が延々と続く)~
私が出かけている間はバルぽんに私の代理をお願いしておきます。
困ったことがあったら、バルぽんに相談してください。
そうそう、バルぽんにお願いごとをするときには、「兎1匹分」と伝えてください。喜んできいてくれますよ。
最後になりましたが、気になっていることと思うので、あっきーの処遇について書いておきましょう。
これは城内では有名な話ですが、この城の労働力は不足していて、特に庶務については常に「猫の手も借りたい」状態です。
曲がりなりにも宰相である私のところに、身元不明の行き倒れの情報が直接届けられるあたりからお察しですね。
そこで私は都合の好いことにちょうど目の前に落ちている労働力を拾うことにしました。
仕事に追われる私達の「おつかい」をしてくれる者がいれば良いのです。
つまり、身元不明の行「き」倒れである「あっきー」には「したっぱ見習い」としてこの城で働いてもらうことになります。
既に宰相権限で手続きは済ませているので難しいことは何もありません。良かったですね。
ちなみに、この城の出入には身分証明が必要なので身元不明のあっきーは「宰相が任命したしたっぱ見習い」という身分が無ければ城外に出ることはできません。
「ネズミ一匹入り込めない」「地獄への片道切符」と言われる警備を肌で感じることを止めはしませんが、あまりオススメできませんよ。
追伸
封筒の中にあっきーへ渡したいものを入れています。
私からの贈り物なので遠慮なく受け取ってくださいね。
という横暴宰相さん(自由人から昇格しました)の手紙を宰相さんの部屋の前の廊下に座り込んで読んだ。
追い出されたときにもう一度ドアを開けようにも、閉まる間際の七尾サンの顔が思い出されて自然と手が止まったんだ。あれはそっ閉じ必至だったね。
触らぬ神に祟りなし…神は禁止ワードだったっけ。危ない危ない。
それにしても七尾サンの言っていた意味がジワジワと身に染みるな…。宰相さんに関わるとこうなるのか。なんという理不尽だ。
身分を保証してもらえるのはありがたいことなんだけど、逃げ場がないことも保証されてるじゃないか。
追伸に書いてあった通りに封筒を探ると確かに固いものが入っているのがわかった。これが渡したかったものか。
…ううむ? なにか見落としている気がするぞ。まあいいか。
シャラ、と音をたてて出てきたのは、子どもの粘土細工のように歪な形のトンボ玉がついた首飾りだ。
トンボ玉の色は黒っぽい茶色で、お世辞にも綺麗だとは言えない。トンボ玉以外は、金属っぽいのに光沢のない真っ黒な鎖だ。
なんか見るからに呪いの品っぽいのですが。これ、つけなきゃダメ?
目の前でビシッとホースを決めている小人の少女は羽もないのに宙に浮いたまま、キラキラとした粉末を控えめにまき散らしていて、見るからに妖精っぽい。
肩につかない長さの内巻き気味のとき鴇色の髪が、彼女が動くたびにゆらゆらと揺れている。
『やあやあ我こそはチュートリアル用フェアリー、チュレムなりぃ!』
葛藤の末に宰相さん贈与の首飾りをかけてみると妖精さんが見えるようになりました。
「チュレン、ちゃん?」
『ノンノン! のっとチュレン、いえすチュレム! 世紀のユビキタスが導きます! ウェアラブルデバイスのフェアリーさんだよー』
「ちょ、ちょっと待って! 横文字だらけでついていけないよ!」
『横、文字? オーケーオーケー。あいしー。言語プログラムに調整いれるよー。うぇいたりろー……っと。どうかな? 聞き取れる? テステス。ボクの名前はチュレムです。好きな季節は夕ブタの時期です。ボクのお仕事は魔道具使用のお手伝いをすることです。魔道具と使用者の仲介をする、とても大事な大事なお仕事なのです。キミ…あっきー君の場合はこの首飾りの魔道具との仲介役をボクが担当するのです!』
いつ息継ぎしてるのか不思議になるくらいの早口だった。
聞き取れた俺の耳を褒めて欲しい。
一気に言いきった後でこちらの様子を伺ってきたので大丈夫だと返すと満足気に『じゃあ続けるよー』と近づいてきた。
そうか、まだ続くのか。
『さてさて、あっきーが着けてるその首飾り型の魔道具はヴィー様の数多ある天才的発明の中でも一二を争う最高傑作です。ヴィー様は今でこそ宰相として辣腕を振るっていますが元は研究畑で活躍していたことはあまり知られていないです。実は『王国』でよく見かけられる魔道具の殆どはヴィー様が生み出したものなのです。そしてヴィー様の魔道具にはボクとヴィー様だけが利用可能な小径が設けてあるから、例えば照明を消したいときはボクに言ってくれればボクが小径を使って魔道具を操作できるのです』
「へぇ、」
『そうそう、魔道具といえば、この首飾り型魔道具の特徴は「成長する」ところです。この魔道具は持主の使い方の癖によって自動的に持主に合うように機能改善が行われるのです。毎日身につけて利用しているだけで充分なのでいつでも身につけたままでいるといいです。精密に作り込まれた呪術のおかげで万が一にも外れてしまったり壊れてしまう心配はないので安心です』
とんでもない事実が判明した。
「えっ!? まさか、あっ…取れない! 本当に取れないんだけど! コレって大丈夫なの!?」
両手で握りしめて全力で引っ張ってもある程度持ち上がるだけで、外れる気配が全くない。
呪術の力ってすげー。…って感心してる場合じゃない。
やっぱり呪いの品だったか!
『ウィウィ。もちろんヴィー様謹製の魔道具に誤作動なんてあるはずないのです。身体的な害が全くないのは保証するのです。身体的には』
あれ? 精神的にはヤバイの?
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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