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本編 幼少期
14 ルーカスの前世 sideアーサー
しおりを挟むその話を聞いて私は、腹が立った。他人と違うというだけで、化け物だと罵り、暴力を振るう者にも。家柄の良い人間が嫌っていると言うだけで、正当化される嫌がらせにも。我が子の頑張りを不正だといい、殺せてしまう両親にも。そして何より、ルーカスを初めて見た時に、愛せるのか不安になった自分に、心底腹が立つ。
ルーカスはそのまま話を続ける。
「前世にいいおもい出はひとつもない。けれど今世は、すこししか生きていないのにいいおもいでがたくさんあるんだよ?」
翼と角を見ても気味悪がらずに、普通に接してくれたことが嬉しかったと。撫でてくれたり抱いてくれたりしたことがすごく嬉しかったと。
そんな事で喜んでくれることが、嬉しい半面悲しくなった。そんなものいつでもしてやる。
「それからね、お庭をもらったのもすごくうれしくて。ものをもらったのなんて初めてだからうれしくて。それにとう様とかあ様の色にぼくの色をくわえてくれたのがすごくうれしかった。たいせつな家ぞくだって言われたみたいでうれしかった」
シャルの言う通りにして良かった。
「ああ。ルーカスは私達の大切な大切な家族だ」
「そうよ。翼の生えた私達の可愛い天使よ」
「っ!! ありがとう。それからね、かあ様のおなかにいた時にきこえたかあ様のおうたもすごくすきだよ」
歌というのは、シャルの音の魔法のことだろう。音の魔法の歌には心を癒し、精神を整える力がある。特にシャルは歌が得意でその力が強い。褒められて、とても嬉しそうにしている。
「ふふふっありがとう。またお歌を歌うわね」
「あのね、とう様、かあ様。ぼくを撫でてくれてありがとう。歌を歌ってくれてありがとう。愛してくれて、ありがとう」
「っ! ああ、ああ」
「「生まれてきてくれてありがとう」」
それからも、ルーカスはエドワードやウィリアムの魔法のことや絵本を読んでくれたことをとても嬉しそうに話していた。
そろそろ昼寝の時間だろう。
「ルーカス、そろそろ昼寝の時間だ」
「うん、かあ様、また、ね」
「ええ、また、会いに来てね。良い夢を」
私は外にいたモニカにルーカスを任せ、部屋にはシャルとふたりになった。
「本当に、ルークは覚え子だったのですね」
「ああ。しかし、あんなにも悲惨な過去だったとは。ルーカスはよく私達に心を許してくれたと思う」
「はい、私達の愛情を信じてくれたのでしょう。しかし、私はもう……他の方達にもこのことを伝えるのですか?」
「……まず、ジェシーには先に伝えようと思う。エドワード達には近いうちに、セバスにも伝えよう。ルーカスの教育をしてくれる、私の信頼出来る者数名にも伝えようと思っている。他はルーカスが伝えたいと思った者に自ら伝えるだろう」
「そうですか。ジェシーには、私の代わりにルークの母になって欲しいのです。彼女は明るくてきっとルークにとって良い影響をもたらしてくれるでしょう。私はもう長くはありませんから」
「っ!! ……確かにジェシーは良い母になってくれるだろう。しかし、君にも出来る限り長くルーカスを見守ってやって欲しい。だから、もう少しだけ、共に頑張ろう」
「っ、はい」
「話していて疲れただろう」
シャーロットはルーカスを身篭ってから数ヶ月程経つと、少しずつ体調が悪くなっていった。元々身篭りにくい体質だったため体に負担がかかったのだろう。それでも子供を産みたいと懇願し、11の月にルーカスを産んだ。
今までも頑張っていた彼女に、頑張ってくれという言葉しかかけることの出来ない自分が本当に情けない。
冬の寒さと産後の体力の消費によりシャーロットは体調を崩し床に臥せてしまった。しかし、生まれた子には翼と角という他とは違う特徴があった。そのことはすぐに帝国内だけでなく、隣国にも知れ渡った。
知れ渡ったことは問題ない。隠すことでもないからだ。しかし、噂は尾ひれをつける。皇子は翼や角を持っていて魔物のように醜いと、醜い化け物は美しい側妃の命を吸い取って殺そうとしていると。だから皇家と仲が悪く孤立しているはずだと。
そんな根拠の無い噂が耳に入ってきた頃には手が付けられないほどまでに広がってしまっていた。そして孤立した皇子を利用しようと企てる者までいるようだ。
私はシャルの部屋を後にし、ジェシーの元へと向かった。
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