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しおりを挟む魔力持ちの国への報告義務と、魔力持ちの婚姻の許可制など、帝国並に囲い込む政策が発令される中……
王都にあるソビジェーブ家の侍女が、口を割った。
シンディが、本来、マクシミリアン殿下と居を営むのに建てられていた屋敷に乗り込んで行ったと。
一生懸命止めたらしいが、怖くなったそうだ。
その屋敷とは勿論、隣国の勇者がパーティで暮らしている処だ。
隣国の勇者に貸与した時点で、治外法権の様な状態になっており、押し入れば、隣国に戦への切っ掛けを与えてしまう。
という事で、使用人として、屋敷の中に手の者を入れようとしたのだが……
使用人の募集はしていないと断られ、困っていた時だった、辺境伯に内密な話をしに行ったのは。
リリの予知夢に出てくる、白髪混じりの髭面の初老の男性に似通っていた、現辺境伯が!
そう言えば、次期辺境伯の息子が平民の娘を選び、大反対され、無理やり結婚したのだが、娘は妊娠した際、医師に出産の際の危険性と育児を教えられて、行方をくらませてしまったと、耳にしたなと思い出した。
もし、王都の身元不明の遺体のリストを見に行っていたら、確実に怒り狂うタイプだな。
そう思いながら、慎重に、隣国の事情と状態を説明すれば……
頭の回転は早い様で、「儂の孫はアイツの屋敷か!」と声を荒らげた。
辺境伯を何とか落ち着かせた後、提案した。
「アイツは、あの屋敷を得てから、遠征など遠距離の討伐に行こうとしない。下男を入れようにも入れない。なので、誘き出す餌が欲しい」
そう言えば、企んだ様な笑みを浮かべた。
「辺境領にあるダンジョンで、スタンピードが起きたという事にすればいい。さすれば、嫌でも行かねばなるまい。辺境領では、たまによくある事だ」
そう言って笑ってるが、老齢と言え、現辺境伯は勇猛で有名な人物で、スタンピードが起きても今まで押さえ込んで来ている。
それを敢えて、手を緩めると言ってるのが伝わって来た。
その後、辺境伯と連絡を取りつつ、突入する為の下準備と段取りを組んでいた。
その時に、王家から借り受け、勇者が住む屋敷を見張らせていた者から、連絡が来た。
「夜半に、屋敷の裏口から出された、大きな荷物を持った者を付け、南の神殿の裏口に辿り着きました」
「その者はどうした?」
「捕まえてありますが、男かと思えば女でした」
女?と思ったのが、顔に出たのか……
「女と言え屈強で、1人が重症を負うくらいです」
それには、純粋に驚いていた。
「戦い方を知ってる、その様な女であれば、顔が割れるやも知れません」
影の言うのも尤もなので、軍部に面通しするようにだけ命じた。
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