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第3章 聴講生になったので、自由にします!

王宮に行く事になりました。用事は何?

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  王都に婆ちゃんだけを送りに行けば……

  ノアが「王宮から招集の手紙が届いてます」と言って、婆ちゃんに差し出していた。

  てっきり婆ちゃんだけだと思ってたら……

  「ライラ、お前さんもとの事だ」

  ぇぇぇぇ!だよ!

  受け取ってない、居ないって事には出来ない、受け取りの魔法が、婆ちゃんが手紙開封した時、城に向かって飛んで行ったので……

  溜息が出るけど、行かないとダメだ。


  1人でじゃないけど、王宮からの呼び出しって事で、婆ちゃんと向かったんだけど……

  王宮に来るのは初めて。

  子爵家の要望のままに入って居れば、デビュッタントで来てたかも知れないけどさ。

  処で、王宮からの呼び出しって誰からの?

  見上げる程の王城は、某ネズミランドの城の様な形状でそびえ立ち、白く塗られ絢爛豪華さを誇って居る。

  海に面しない内陸部の王国だけど、領地を増やそうと隣国に戦を吹っ掛ける性分の者もいない、穏やかな大国ではあるけど……

  東が魔の森に面しているし、南は山岳地帯が国境。

  西は大河が流れており、その為、橋は掛かって居ない。

  西から入国するには、船に乗り南の国ローランドからか、初級ダンジョンがある国フォーセルダ、もしくは北の帝国から南下し、アゼリア王国を通過してだから……

  うわぁ、うちの国って攻めにくいんだね。

  そりゃまあ、延々と囲まれたら負けるだろうけど、小さい国じゃなく大国だからなあ。

  ただ、自然な要害に守られてる状態だから、攻め込むなら北からかなあ。

  でも、アゼリア王国とは王家の親戚状態だから、攻められるなら、帝国ことロンバルディ帝国。

  召喚なのか転生なのかまでは分からないけど、記憶保持者が100年以上昔に居たのは確か。

  その前後以降、帝国、戦争してないんだよね。

  と言うか、広大な魔の森、帝国にも面していて……

  以前居た魔王の城、帝国側だったんじゃない?と推論した事もあるんだよねえ。

  とりあえず、周辺国との交流も友好で、学生の交換留学が行われるくらい。

  なので、婆ちゃんだけでなく、自分まで呼び出される理由と言ったら……

  やっぱり広場前にあった勇者の剣の事かな?

  確かに、自分が見つけたんだけど、自分の手は離れたよね?

  そんな事を考えてる時には、王城の中に入り……

  最初は門番、途中から文官に案内人は変わったんだけど、何処に案内されるんだ?

  王城は始めてだけに、さっぱり分からないけど、影と思われる者って、やっぱり居るんだねえ。

  ただ、分類は赤じゃないけど、青でもなく、黄緑。

  どうしても、初めて来る場所では索敵しちゃうんだ。

  うん。王城内のmap作成は止めようね。


  色々と考えてたら、目的地に近付いた様だった。

  案内された場所の部屋の前には兵が居るって事は、執務室かな?

  謁見室の前の通路は天井が高く、扉も絢爛豪華で大きかったけど、執務室は質実剛健タイプ。

  それも、物理だけじゃなく、魔法面においても、防御の印が敷かられてる。

  そのくらい感じ取れるからね!

  これでも、一応Aランクの冒険者なんだもん。

  「参られました」

  コンコン、1拍空けてコンっていうノックって、意味がありそうだな。

  そう感じてた時には、部屋から「入れ」と返ってきた。


  中に居たのは、尻を蹴り飛ばした第2王子殿下エドワード様に似た青年って事は、王太子になられた第1王子殿下リチャード様かな?

  ニッコリと、イケメンを利用した笑みを浮かべ、挨拶して来た。

  「やあ、会うのは初めてだね」

  勿論?自分はカーテシーのお辞儀をしたけど、婆ちゃんは自由すぎる!

  どっこいしょと言って、許可を貰う前に、高価そうなソファに座り込んだ。

  焦ってたら、楽しそうに笑ってる王太子殿下。

  「執務室だから、気にしないで良いよ。君も座って」

  そう言われて、婆ちゃんの横に座ったんだけど……

  婆ちゃん、もしかして、呼び出され慣れてる?


  その後、呼び出し理由が判明したんだけど……

  なんと!婆ちゃんの次の代の顔合わせ!?

  それにはビックリしたんだけど、どうやら、それは表向きの建て前みたいで……

  コッチが真相?

  学園には通っていなかった病弱な深窓の令嬢が、最近、外に出始めた。

  お茶会や夜会は招待されないと出席出来ないので、出歩いてるのは下町。

  なので、着飾っては居ないけど、どう見ても高位貴族の令嬢というのは隠せない。

  そうしたら、何処の家の?ってなるよねえ。

  初めて姿を見せた時なんて、共の侍女も護衛も居らず、人目を引いたくらいの令嬢。

  ちなみに、年代は、ヴィルジーク様や王太子様と同じ年代なので、令嬢としては行き遅れ。

  あくまで、この命短しの世界での感覚だけど。

  現代での結婚適齢期が20代後半とすれば、23歳なんてまだまだいける、咲き誇る花だねえ。

  だけど、この年代の男性は既にこの国において、堅固な立ち位置を築き始めている。

  独身の方は数少なく、伯爵より上となれば、片手で事足りる。

  実は、ヴィルジーク様も、婚約者も居ない独身の1人なんだけど……

  公爵家と言え三男だったので、騎士になった訳。

  通常であれば近衛を目指し、王家の側にいるのが栄達。

  なのに……何故か、王国騎士団の隊長を目指したので、王太子様は首を傾げたそうだ。

  だけど、まあ、父親の元公爵はバリバリの王国軍の将軍だからねえ。

  という事で理解してたんだけど、辺境伯の養子に入った事で、ヴィルジーク様がただの脳筋でなかった事を思い出したんだってー。

  と言うか、王太子殿下の話、有意義だったけど、脱線しすぎ!


  その深窓の令嬢って言うのが、傾国の美女の様で……

  第2王子のエドワード殿下は、がっちり性癖をクリスティーナ・アギレラ様に掴まれてるので、気にもしなかった様だけど……

  ヴィルジーク様は東の辺境伯ダーインに養子に入ったので、ランバルディア公爵家は関与してない。

  だけど、他の公爵家3つの内1つエイドリアンと、侯爵家2家が取り合っているんだってー。

  その1人がコーデリアの兄と聞いて、眉間に皺になった。

  というのも、コーデリアから手紙が来てたから。

  「傾国と言うが、魅了ではなかったんじゃな?」

  婆ちゃんが確認するのも分からなくはない。

  この国において、魅了魔法は犯罪で、処刑対象だから。

  「魔術師塔で既に調べ済みだ」

  そう答えたのは、王太子様ではなく、入って来た、たぶん国王陛下。

  自分は立ち上がって、カーテシーで挨拶したけど、婆ちゃんは座ったまま!

  だけど、シブメン来たー!と萌えるよ~!

  「マーゴット久しぶりだな」って声も渋い~!

  いささか、王太子殿下に退かれた気がしないでもないけど、このどっしりと構えた貫禄さも素敵。

  鍛えられているのか、美丈夫!

  ちなみに、王家以外、一夫一妻なんだけど、お家騒動が起きない様に、王妃様以外の女性は居ない賢王です。



  婆ちゃんに、相談って言うのが、そのクラノス伯爵家の令嬢ミリノリア様の事だったみたい。

  コーデリアも困っていて、イルラに状態異常を弾く魔道具を作って貰ったり、魅了が出来ない魔道具のブレスレットを兄に持たせ、プレゼントさせたりと、色々してた模様。

  でも、効果はなく、悪化した為、王家が乗り出して来たんだろう。

  コーデリア曰く、媚び女の様な、あからさまではないけど、腕へのボディタッチはするし、2人きりで会いたいにも応じるし……

  押しに弱い様で、キスを許してしまってると……

  貴族の令嬢の認識ではしてはいけない、許してはいけないラインを超えてる。

  男側からすれば、ミリノリア嬢は俺を選んでくれたと考えるのも当然で……

  コーデリアの手紙にも、「逆ハー狙いのビッチ?!」と書かれてあったくらいだもん。

  だけど、首を傾げて分かってないって事は、別の感覚を持ってない?

  そう言われて、思い出したのが前世の緩い貞操観念。

  ビッチほどじゃなくても、キスくらいはセーフ?って考えてるのか?

  コーデリアは、自身を第2王子が襲った未遂の件を思い出したのか、「R18の乙女ゲームだった?」と迷走してるし。

  それで、国としては、有力な貴族同士が対立は国難を招きやすいって事で、どうにかしたいと。

  うーん、その気持ちは分からなくはないけど……

  「魅了の状態異常を解除する回復薬の様な物はないのか?!」

  王太子殿下、それ無茶振りって言うんですよ?

  「そんな便利な薬ある訳なかろう」

  婆ちゃんが、遠慮なくそう言ってるんだ。

  けど、良いのか?良いのか。

  なら、「当の本人はなんと?」と聞けば……

  「どうしたら良いのかと悩んでる様だけど、私に言うのは止めて欲しい」

  ん?!それって、王太子殿下を巻き込もうって!?

  折角、第1子の王子ジェームス様が生まれた所なのに!?

  そう、チビ王子が生まれた事で、第2王子エドワード殿下とクリスティーナ・アギレラ様、学園卒業後、ご成婚。

  同時に、臣下降下して公爵家を立ち上げる事になる予定みたいなんだよ。

  そりゃ、王族は一夫多妻可能だけど、王太子妃の家がエイドリアン公爵家なんだよ。

  そんな事したら、王家とエイドリアン公爵家の間に亀裂が入るよ!

  それで、王太子殿下が必死なんだね。

  魅了魔法であれば、ミリノリア嬢には悪いけど、お話同様、断罪で終了案件だった。

  穏便に、水面下で納めるとなったら……

  あー、あれがあったなあ。と思い出した。

「ねえ、婆ちゃん、この間のセシーの滴、使ったら良いんだよ」

  にやっとして、口にした自分の言葉に、目を見開いたのは婆ちゃんだけだったけど、直ぐに大爆笑。

「それはなんだ?」と聞く国王陛下に、婆ちゃんが説明しだした。

  実は、その滴を服用すれば、デブ化して行くの。

  運動したり、ダイエットしても痩せません。

  服用を止めれば、徐々に痩せて行くんだ。

  ちなみに、副作用はありません。

  辺境領にある上級ダンジョンで手に入れた時は、何に使うのコレ!?と思ったんだけどねえ。

  薬師ダンジョンとも言えるダンジョンで出たから、いつか使えるだろう。と思って、残しておいたんだ。

  だけどさあ。本当に、彼女の外見だけじゃなく、内面も好きなのであれば、おデブになっても愛せるよね。

  現代日本でも、ストレスで拒食症になる子も居れば、食べ過ぎで太る子も居るんだから、変な話じゃない。

  それとも、子供と妻の居る王太子殿下に乗り換える気がミリノリア嬢にあるのなら、尚更、飲んでよねえ。




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