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第3章 聴講生になったので、自由にします!

どうして、そうなるの!?

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  謁見の間で、婚約じゃなく、婚姻を命じられ……

  何処の誰かを聞く事無く、「御意」と答えてた自分。

  横で、ダーイン伯ギルバート様が焦ってるのが伝わって来てた。

  「何処の誰かとは聞かぬのか?」

  反対に、国王陛下に聞かれたくらい、おかしかったんだろうか?

  「陛下から勧められるお相手は素晴らしい方に違いありませんから。ですが、冒険者であり、薬師であり、テイマーであるのは辞めませんので、政略となる事お許しください」

  ハッキリキッパリ口にすると、陛下に対して何て事をと口にする者が居た様だけど……

  国王陛下は笑った後、「辞められたら、困るのは国の方だ」と同意してくれた。

  んだけど……

  「ダーイン伯、そなたかヴィルジーク、どちらが娶れ」

  国王陛下の言葉に、居合わせた連中、ざわついた。

  自分の耳がおかしくなったのか?

  固まってしまった自分、その後の会話、ほぼ耳に入ってなかった。


  「内縁の者が居りますので、ヴィルジークに譲ります」

  「そうか。ならば、そうするが良い。これで東の防衛が整う」

  そう言って頷く国王陛下に、青くなる者が数名居た。

  「北がきな臭いのでな。国内を万全に致せ」

  大事な事を、ボソッと口にした国王陛下に、全員、目を見開いていた。


  「良かった、良かった」というご機嫌なギルバート様と、王宮を出て来たんだけど……

  謁見の間を出るまで、呆然として固まってた自分。

  「ライラが娘になってくれるって、行幸、行幸」

  ボッと赤くなる自分を見て、にこにこ笑顔って……

  馬車の中だけに、隠れられない。

  と思ってたら、真顔になったギルバート様。

  「記憶保持者なんだってね」

  その言葉に、心臓が止まるかと思うほどギョッとしたんだけど、それって聞かされたって事だよね。

  という事は、やっぱり国は気付いてた!

  あー、だから、そういう意味でも婚姻か!

  それだけじゃなく、冒険者としても、薬師としても、辞めてくれるな、か。

  あ、でも、自分は嬉しいけど、ヴィルジーク様は……

  コーデリアと自分がすり替わっただけじゃないか。

  どっちにしても、好きな人が居るヴィルジーク様にとったら……

  王命だなんて、断れないじゃないか。

  ごめんなさい。

  邪魔にならない様に、屋敷に入らず、小屋に居るね。


  赤くなったり、青くなったり、しょんぼりする自分を見てたギルバート様、微笑んで見てた。

  王都の屋敷に着いた後、辺境伯領に戻った。

  王都に居た母を、婆ちゃんの店から回収もして。

  母、ヴィルジーク様との婚姻っていう王命に、びっくりしてたけど、嬉しそうだった。

  小屋を屋敷の裏庭に出す許可を貰い……

  母は屋敷内で寝起きする事になった。

  子爵家からの追求をかわせる様になったから。

  そういう意味でも、ダーイン伯に嫁げるのはありがたい。

  ただ、母が「婚姻式に着る服を作らなくちゃ」と言い出した。

  スパイダーシルクだけは、まあ大量にあるからねえ。

  森に入れば、必ず出る蜘蛛をインベントリ内で解体して渡してるの。

  最近は、織物だけじゃなく、レース編みにも熱中してるので、在庫は少し減ったらしいけど。

  鉤針、レース針をジョセフィアの鍛冶屋で作って貰ったの。

  そこの鍛冶屋、武器は作らず、包丁をはじめ料理道具を作ってる店だったので、頼めば作ってくれたの。

  自分に暇な時間はほぼないので、魔法を掛けて、編ませていたら、母に食いつかれた。

  家から出すとダメンズに纏わり付かれる母には、織物以外にも、棒針を教え、その次がリリアンで、リリアンの派生で織紐。

  虹色羊の毛を使用したセーターなんて着たら、隠れられる様な代物になった。

  他はどれもがスパイダーシルクが材料。

  そうそう、鍛冶屋でステンレス製で作って貰った理由が、魔法を掛けられるって事。

  木や竹を削って、棒針は作ってたんだけど、鉤針、レース針は使ってると、引っ掛ける部分が壊れちゃうのよ。

  だけど、ドワーフのオルゲンさんには断られちゃったの!

  それで、誰か作ってくれないかなあと思ってたら、嬉しかったんだ。

  今度は、ボビンレースの方も作りたいけど、あれは細く硬めの綿糸と大量のまち針と図案が居るんだよなあ。

  軽い金属じゃないと困るだけに教えて良かった。 

  この世界では、真鍮が合金ではなく鉱石の様に、ステンレスも鉱石であったの。

  鉄とクロムでステンレスなので、銅の屑クロムはないのかな?と思えば、ジョセフィアでは屑山となってた。

  その隣には、亜鉛の屑アルミがあった。

  ので、アルミとクロムを合わせて、型抜き型だけど、軽いボタンが作れるとも言えば……

  むっちゃ喜んでたよ。

  ボタンと言えば、貝ボタンで貴族の男性のシャツに使用されているくらい。

  あ、冒険者の高ランクや騎士の衣装には付いてるね。

  お仕着せの服も、上級使用人の服には付いてる。

  高位令嬢の服は基本後ろ開きで、着込んだ後縫うの。

  だから、事に及んで着込む事は無理です。

  それに、コルセットにパニエもあるので、無理だと思うけど、反対に、襲われた風を装うのは簡単。

  背中の縫い糸を細くしておけば、力を入れれば切れるから。

  何でも、ヴィルジーク様のご学友がされたらしい。

  公爵家の嫡男だけに、やばかったそうだ。

  ハンカチを落とし拾わせるなんて、初歩も初歩。

  王都の屋敷前で挫いて、少し休ませて欲しいとか、夜会で別室に行く際、飲み物を持って、ぶつかりに来るとか……

  中々、肉食なご令嬢が多く、学園ではキャットファイトがよく見られたんだってー。

  それは女嫌いになりそうだわ。

  話逸れたけど……

  平民の服は、伸縮性のないTシャツに紐縛りのズボンが基本。

  女性はTシャツの長い版だけど、長くて膝丈。

  裕福な家ほど丈は長くなる。

  染色は、村出身なら森に素材取りに行けるから出来るけど、町なら売ってる古着物になる。

  母は余り糸で刺繍などしてたんだけど、見習ってすることが出来る者は余裕がある方だね。

  って~!また逸れた!

  その店には、飾り用の薔薇のモチーフの足付きアルミボタンと、くるみボタンの仕様を教えたので……

  勿論!商業ギルドにも登録しに行ったよ!

  自分2、製作者4、販売3、ギルド1の配分にして来た。

  くるみボタンは簡単に作れた用で、自分も100個以上作って貰ったんだけど、使い方は端切れ布を使って、作って見せたの。

  背中にズラズラッと並べたら素敵だと思って。

  あ、まさか……

  そこから、ドレス業界に知れた?

  端切れで出来るし、内職には適してるもんね。
  
  ほら、母、王都にしばらく居るって言ってたからさあ。

  くるみボタンのセットは持って帰って直ぐに、レース編み共々食い付いて、持って行ってたから……

  絶対、ファッションリーダーと言われる王妃様の耳に入ってるよね。

  あ~、そのラインの可能性もあったかあ。

  まあ、母は式をあげてないもんね。

  ドレスのスタイルを描いたり、添えるレースや布を考えてる処を見ると、本当に嬉しそうだ。







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