獣人世界へ、ようこそ？

プロローグ

  目を覚ましたら、記憶にない天井だった。


  こんなフレーズで始まる小説を読んだ気がするんだけど……

  実際に、自分に起こると、しばらく思考停止するんだね。

  ここは何処だ。誰かにお持ち帰りされたのか？など……

  ただ、自分の場合、更に、今どき見かけない木の天井だった。

  耐震基準とかで数を減らした昭和の安アパートの天井くらいしか、思い当たらないんだけど、あくまで、ドラマの中で見た限りだけど……

  あ、でも壁も板って、珍しくない？

  木の天井に、木の壁……山小屋？

  え～、山の中に自分が居たとは思えない。

  だって、自分は……と考えたところで気付いた。

  自分が誰だったとか、何処に住んでたとか、直前の事も覚えてない。

  き、記憶喪失って事？と青くなった。

  とりあえず、何か手掛かりはないかと思い、起き上がろうとして、自分の状態が悪い事に気付いた。

  頭が重く、体がダルい。

  もしかして、倒れて、親切な人が面倒見てくれてるのか？

  いや、それなら、救急車が呼ばれて、病院の白い天井とご対面だよね？


  頭もぐるぐるだし、どうしようか？と思ってたら……

  ギシギシと音を立てて、近付いて来る存在が……

  等間隔での音から、寝てた場所が2階以上で、木だと思える階段があるという事にも気付いた。

  どういう対応しようか。と思ったけど、先ずは感謝からだ。

  何処の誰だったかも覚えてないけど、看病してくれていた事は真実の様だから。

  ただ、これまた木の扉が開いて……

  「おや、起きてたのかい？体は大丈夫かい？」

  そう問われた時、硬直して、頭が真っ白になった。