獣人世界へ、ようこそ?

ふにゃー

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  欲深いのは人族が顕著なのかな?

  そう思いながら、次の村トカレに向かい、朝日が出始めた早朝に出たんだけど……

  昨夜、扉を開けようとして、1t以上ある岩塩の塊に阻まれ、ギシギシと音を立てるくらい扉を軋ませていた。

  魔法袋の中に入れてた出来上がりふわふわの白パンに、照り焼きチキン、夏野菜たっぷりのミネストローネを食べて寝たのに、不眠気味。

  朝は、青空市場の常連で人気の屋台で買った燻製肉の薄切りと卵のサニーサイドに、ケチャップ添え。

  柔らか白パンは勿論だけど、目覚めのコーヒーが欲しいなあ。

  先日の商会で置いてた嗜好品の飲み物の主は紅茶、ワインで……

  蒸留酒のブランデー、ウィスキーは見掛けなかった。

  エールはやはり庶民派の様だったけど、蜂蜜酒のミードはどっちだろ?

  そんな事を考えながら、歩く足を早めてた。

  村の中は赤点ばかりだったので、追い掛けて来るんじゃないか?と思ってたの。


  追い掛ける赤点がなく、日が上がって来たところで、森の奥で薬草畑の扉を設置して、日課をするのに中へ。

  魔法袋に邪な思いを抱く様な連中に、亜空間の扉を見せるなんて馬鹿な真似はしないから。

  それでも、水やりだけをして長居せず、早々に出て来たよ。

  魔法袋に入れた後は、南東にあるトカレ村に黙々と進んだ。

  ちなみに、先月、揉めた月光袋があるのは、バレジ村の北東の山間部なの。

  そういえば……薬師連中ともなれば、魔法袋持ちは当たり前だからか!

  それで見知っていて、自分が小さくひ弱な猫獣人だから狙えると踏んだのか!

  でも、背中に弓を背負った冒険者スタイルなのに?

  薬師ギルド依頼のポーターと思ったの?

  うーん、それなら通常は護衛が居るのに、居ないんだから考えようよ。

  といっても、自分は戦えるから、攻撃力があるからではなく、隠密と警戒、逃げ足が速いに特化してる方なんだけどね。

  それでも、内勤の薬師がメインで、冒険者メインじゃないから、木の上移動ではなく地面移動の歩きだよ。

  そういえば、エルフともなれば、樹上での高速移動って事になるのかな?

  リーナの記憶でも、冒険者のエルフに会った事はないようで……

  婆ちゃんから耳にした情報によると、ラノベで描かれてたエルフっぽいよ。戦い方

  ここに来て初めて会ったエルフは、商業ギルドの職員だったけど……



  トカレ村に入ったのは昨日と同じく夕刻。

  といっても、夕刻に調整したというのが正直の話。

  同じ目に遭いたくないからが理由だったんだけど……

  意外と、バレジ村と距離が開いてて、ゆっくりと採集っていう訳には行かなかったんだよねえ。

  ただ、こちらは獣人多めの村の様だった。

  それも、村を取り囲むのが木の柵ではなく、つるんとした土壁って事は、土属性魔法を使える者が居るみたい。

  その村の門前に立ってた門番が、獣人だったんだけど……何の?

  犬?狼?垂れた尻尾は焦げ茶だけど、耳が……小さくない?

  そう思いながら、村長の家に案内された。


  村長は人族の爺ちゃんって感じの人だった。

  人族主義の帝国から、山越えして逃げて来て居着いたんだそうです。

  自分が猫獣人の姿してるからか、世間話を色々としてくれた。

  荷物の受け渡し後は引き返すんだろうと思ってた村長に、夕食に誘われたんだけど……

  氷河に万年雪を掘りに行くので早く寝る話で驚かれはしたけど……

  「予兆が?」とは聞くよねえ。

  「あくまで、長雨が遅いとかの兆候が出てるってだけで、病自体はまだみたいだけど、念の為?」

  自分の返答に、考え込んだ爺ちゃん村長。

  「掘削に良い場所を案内するので、少し分けて欲しい」

  「って、何処で保存しておくのよ!?」

  「それは一応、持ってるので」

  そういうのであれば、了解された。

  ただ、やはり村を出るのは早朝に代わりはなかった。



  次の朝、氷河に行くのが、自分と爺ちゃん村長だけじゃなく、虎が二足歩行してる!って風貌の虎獣人が居て……

  爺ちゃん村長の護衛という話だった。

  ただ、歩き始めたら、薬師ギルドから聞いて来たルートとは違う様で……

  トカレ村から北東方向に歩けば、山道がカーブを繰り返す難所があって、そこから氷河の上に上がって行くって話だったのに……

  「村人しか知らんルートじゃから他言するんじゃないぞ。一見すると氷室にしか思えん様にしとるんじゃ」

  そう言って教えてやる気になった理由が気になれば……

  「猫獣人の薬師なんぞ、エスペラント王国のリナペッタに居るアンナくらいじゃと思ってたからのぉ」

  懐かしそうに言われ、「師匠と知り合い!?」と尻尾が固まって、ピン!と立つくらい驚いた。

  「何じゃ!アンナの弟子か!」と爺ちゃん村長も驚いてた。

  ただ……

  婆ちゃんは亡くなり、リナペッタはフェラージ帝国に強襲されたので逃げて来たっていう話には、残念そうな顔になってた。ごめんよう。

  人族と獣人族だと寿命が違うんだよ。

  けど、知古が間にあった事で、更に色々と教えてくれた。


  案内されたのは、トカレ村からほぼ東だけど、山々の谷を進んだので、暑い筈なのにひんやりとしてた。

  ただ、頭上に僅かにしか空が見えないので、方向が分からなくなりそう。

  迷わないコツは、勾配が少しでも上がると不正解なんだそうだ。

  それと、水属性が得意だからか、常に水の気配を感じてたんだよね。

  森独特の匂い、イオンよりも清流の洗われる様な清々しい気を。

  通常、谷間には川が流れてるのに、姿が見えないって事は地下水脈があるんだね。

  そうこうしたら、木々が開かれた場所に出たんだけど……

  そこには、元々あったところを押し広げ、崩壊しない様に土魔法で補強された大きな洞窟が顔を出してた。

  ここに着くのに、早朝に出て、太陽が頭上という事は6時間は歩いてる事になる。

  「入る前に昼にしよう」って事で、各自が持って来た携帯食を口にした。

  その際に言われた予定は……

  掘削は1日では終わらないだろうから、この広場を野営地にするって話だった。

  あと、中に光源はないから暗いって言われたけど……

  「そうだったな。猫獣人は夜目が利くんじゃったな」

  そう言って、息を吐いてたけど、婆ちゃんに言われたのか。

  ちなみに、虎獣人さんの視線が痛い。

  照り焼きハンバーグにロックオンしてて……

  肉はボアとコッコの合い挽きというヘルシーなものになってるので、ソイの実が手に入った事で照り焼きにしたの。

  と言うか、牛系の肉って、山間部が多い地形には居ないので、中々手に入らない様でね。

  それで、森に入る度に手に入る物で作ったのよ。

  「香ばしい香りじゃが、何を使っておるんじゃ?」

  爺ちゃん村長に聞かれて、正直にソイの実だと言えば……

  「何だってー!?」と咆哮する様な声を上げた虎獣人さん。


  獣人が住んでた村の森には沢山なってたけど、食べられる果実ではないので、放置になってたそうな。

  あまりの視線に折れて、ハンバーグを爺ちゃん村長と半々で出してあげたら……

  「美味い!」「ほぉ、柔らかくて良いのぉ」と高評価。

  まあ、肉の塊ではなく、ミンチにして作る事もあって、爺ちゃんだけあって食べやすいので、作り方を教えて欲しいと言われた。

  滞在に掛かる費用は持つという対価で了承したんだ。

  ただ、照り焼きには通常ソイの実以外に、砂糖などの甘味と味醂が要るんだけど、砂糖は高いので自己流で替えてる。

  砂糖と言われるのは、黒砂糖のサトウキビに、薄茶のサトウダイコン(甜菜)もあるみたいだけど、手間暇からかサトウキビは馬の餌になってる。

  北の大地では外貨を得るのに、甜菜を植えてたので見てたけど……

  砂糖として1番流通してるのは、異世界あるあるのシュガーボール。

  凍らない大地の平原部に、よくなってるらしい。

  高価ではあるけど、手が出ない程ではないっていうくらいには流通してるよ。

  他の甘味、蜂蜜は……薬師が回復薬に使うので、出回っていないの。

  市場などでよく見掛ける甘味は、木からの蜜。

  木の蜜で有名なのは楓のメイプルシロップで、この世界でもあるけど、他に白い蜜を出す木があってね。

  森の恵って事で、女神様の名前が付いた「テラレリア」

  それが癖もなく、とても美味なんだけど、女神様の恩寵と言われる所以は、そんな蜜を出す木が森にあったら普通、虫に集られるものだけど……

  虫には毒なのか寄りもしないんだって。

  冒険者ギルドに、この蜜の採集依頼が出るくらいで、薬草採集よりも単価が高いので、依頼は奪い合いになるのは国が変わっても一緒みたい。

  で、この蜜の素晴らしいのは、照りも良いって事。味醂が不要。

  だから、テラレリアの蜜とソイの実を合わせてると、名前を出せば納得した様で、村の近場にもあるんだって。

  ちなみに、森の中には、地球にはなかった、ほわ!って思う実がなる木が色々あるんだよ!

  ムクロジの実は、シルク製品を洗う石鹸だし……

  まあ、果物自体、目を見開いて固まる形態でなってる事に驚きもした。

  確かに、ウリ科だし蔓性だけど、重量から考えて地面だと思ってたのが、樹上にあって、先日暫しフリーズしたからね。

  メロンやスイカが木の梢に隠される様になってたら驚くよ!

  変わり種と思うのは幾つかあるけど……

  パンの実は、地球では場所によればあったって話と同じかは分からないけど、実を葉に包んで焼き、切って開ければパンになるっていうもの。

  けど、モウの実はヤシの実に形も色も似てるけど、南方の海辺じゃなく森の中にもなり、モウ=乳牛なので、ミルクの実って事。

  この実の欠点は、チーズやバター、生クリームなどの加工が出来ない事って言われてる。

  でも、牧畜産業の思惑を感じる話なんだよねえ、出来るんだもん。

  そう、婆ちゃんが株分けに興味を持って、試行錯誤した様で薬草畑の隅にある。

  ちなみに、実から発芽とヤシの実と同じなのに、種探ししたもよう……

  ただ、植物性と動物性の違いは、コクなので好みの問題かなあ。

  で、ミルクの実があるとなれば……

  イースターの卵の様なカラフルな色の卵を実としてなる木もあって……

  貴族が口にするマヨネーズは、コッチで作るという高級品で、木自体が稀少だっていうのは、商業ギルドで聞いた。

  ヘルシーでフルーティーなマヨネーズになるのは確実だね。

  稀少だっていうグアの実だという木に出会わないかなあ?

  しかし、グアって名前は何処から?















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