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しおりを挟むアマイルのダンジョンで、罠の穴に落ちた人型の猫獣人♀を助けに、騎士崩れの男が飛び込んで行った
その噂で、ダンジョン内は勿論、アマイルの町で口に上がってたけど……
驚いた事に、彼ら、ギルドでパーティを組んでなかったそうだ。
で、冒険者連中、もっと観察眼を持った方が良いよと思ったのが……
レオンは、ガタイの良さと、たぶん自分が名前を口にしたからか、固有名詞として口にされてるの。
それと使ってた大剣が曰く付きの魔法剣だったのと、黒いマントの裏に紋章があった様で……
ハッキリと目にした者はいないけど、帝国のだとか、問題のロートンのだとか……
そっちでも話題にはなってたけど……
人型の猫獣人♀がねえ……
自分と2人居た筈なのに、1人になっていて……
更に、後押しになったのが……
余程怖かったのか、自分の髪色が黄金色からほぼ白になっていて……
リーナを知ってる者ほど分からなくなったと思う。
5階層まで戻り、一旦休憩した際、水辺で映るまで気付かなかったんだけど、見た時は驚いた。
だから……
今は人型に戻したんだけど……白猫オヤジの娘でも通りそうだ……
尻尾の縞も薄くなったから、ほぼ白に見えるの。
で……
自分が持ってた魔法袋、ダンジョンの下層に転がってるって、口元を緩めて喋ってるんだよ。
使用者制限の着いた魔法袋で、使用者が亡くなってる場合は、見付けた者に使用権が移るんだ。
但し、子供など遺族が居る場合は別で……
拾ったとして申請しても、血の登録は外れないの。
だから、殺して奪ったとしても、使えませーん!
それに、亡くなった時点で、遺族の元に移動してるか。
冒険者たちの魔法袋への執着が度を越してるので、魔法袋は今、空間収納に入れて出してない。
雑貨屋で買った麻の背負袋を使ってる。
何故そこまでかは……
自分は降りれない30階層のボスからのドロップ品が、アイテムバッグだったんだ。
町に戻ってから、もう一度調べに行ったの。
前回調べたのは、辛うじて自分が辿り着けそうな15階層まで。
あ、それ以上調べてないって事は、落ちる気なかったのかと、気付いて苦笑したんだから。
資料室にもだけど、冒険者ギルドの対応とかも気になってたから。
アイテムバッグ?形は様々みたいだけど、記録で残ってるのは……
ポーチ型、巾着型、指輪型、腕輪型、ペンダントトップ型などで……
内容量も、大きさに比例する様な事はないけど、大小様々……
有名なのは、国王陛下に進呈した指輪型で、内容量は王宮の大広間サイズだったらしい。
1階層にまで上がって来るのに、休憩も入れて5日掛かってる間に、レオンたちは見付かっておらず、ギルドも救出は出してない。
踏破してる43までは、セーフティーエリアも、帰還の転移陣もあるので、レオンたちが未踏破でも見つけられるから……
落ちたのは未踏破階層だって話にはなってたけど。
で、自分は、まだ閉じられていないというロートン王国に向かいます。
落ちた日から10日経ってるし……
自分の責任って訳でもないし……気にはなってるけど……
何やら、赤点とか気配とかないのに、ヒゲだけが落ち着かないので。
たぶん、背景があるレオンに関わった事かな?と思ってたんだ。
リーナのタグは、ダンジョンに入場?した日から使用せず……
1ヶ月掛かるかも知れないけど、魔王国に入る時に提示するまで出すつもりはない。
ので、空間収納の方に入れておいた。
薬草園にあるガラスの塔にある妖精の道から、ルカの手紙を持った小鳥型の妖精が来て……
【こっちに来るなら、気付かれない様にタグは隠して】ってあったから。
じゃあ、出入国は?だけど……
今ちょうど、ロートン王国から流出する者が多い様で……
魔法大国との国境では、一気の流入を留めるのに、テント群が出来てる様なんだ。
エスペラント王国との国境があるトワイゾの北のスラムより、規模が大きそう。
帝国の強襲で逃げて来て留まってるもの達で……
自分がトワイゾの町に入れたのは、時間差とタグのランクかと。
だから、反対に、あのタグの出国には難を示されそう。
エスペラント王国の出国時は、手薄になってたからね。
だから、そこを経由したら、ロートンには難なく入れそうだけど……
ロートン国内では、インフレが厳しそうなので、口にするものは魔法大国内で調達するつもりで居た。
なので、国境の町「カムデン」で買い物をしようと思ってた。
けど……
アマイルの市場で、鮭鱒が出始めたので……
調達を変更して……
ダンジョンじゃなく、アマイルの内外で。
ただ、大量に収納出来る空間があると分からない様に、小口で。
鮭鱒に関しては、アマイルを出て、野営しながら調達!
ダンジョンに行く振りで。
子持ちの鮭は特に肥えてるので、ご馳走様にゃ!
急げよって、自分も思ってたけど、遡上して川にいっぱいの鮭を見たら、自制なんて出来なくて……
熊と人には遭遇しない様に気を付けながら、回収してた。
その時間の合間で、醤油漬けにしたり、燻製にしたり……
燻製の石窯は、トワイゾの家で作ったのを、空間収納に持って来てるの。
薬草畑にって、一瞬思ったけど、止めたんだ。
空間収納に充分にあるっていう状況になって、ようやく、ほくほくしながら、ロートンに足を向けたんだけど……
カムデンでもインフレ気味、特に食糧。
収穫期の秋のはじめでコレなら……冬になったらどうするの?状態。
その上、関所辺りを山から見れば……
街道には、兵が常駐してるのか、バリケードが築かれ、兵士用?の天幕がある。
と思ったら……
木々を踏む音がし、木の上に登って、身を隠せば……
「あれ?おかしいな?今、ここに誰か居たと思ったのに…」
そう言って、周りを見回してる若い、未成年?と思える男がいた。
ダンジョンに潜れるのは、一応、成人以上って事になってるので、成人してるかいなかは、だいたい分かる様になった。
ただ、彼の言葉が、魔法大国のものとは少しイントネーションが違った。
もしかすると、越境しやすい場所があるのか?
そう思って、気配を殺して後をつけたら……
え!?という場所を越えて行った。
その向こう、森の木々の間に、煮炊きしてるのか煙が上がってるテントがあった。
兵は追い返してるんだろうね。
でも、きっと帰る場所なんてないから、ここに身を潜めていて……
だけど、数え切れないほど、集落っていえる程のテント群って……
ここで冬を越えられるの?
そりゃ飢えて逃げて来たロートン国民を、大体的に引き受けるのは、フライハイト魔法大国はハズレくじ引くようなものだし……
最悪、ロートンと戦って事になるけど……
帝国と睨み合ってる今、引き金は引かないと思うんだ。
あ、でも、川での釣りや森での採集や狩りは、容認されてるのか……?
けど、元々の者の食い扶持を減らしてる様なものだから……
どっちにしても厳しいか。
カムデンの者と思われる者が眉を寄せて、鬱憤溜めてそう……
彼らが越えられないのは、自分が鮭鱒を取ってた川の上流部は、切り立った崖が両サイドにある場所になる。
そこが国境になってるのは、天然の要害だから。
真下を覗けば、川は細くなった事で深くなり、淵といえるものになってる。
彼は怖いと思わないのか、飛び込んで泳いで、対岸のキャンプに戻ったんだけど……
彼のどんな相手か知らないけど、怒られてたよ。
まあ、身軽な自分なら、張り出してる木を使うかなあ?
投げ縄が要るけど……
ラノベの主人公なら、彼らと仲良くなって、食べ物を分けたり……
手を貸してあげたりするのかな?
そう思いながら、暗くなってから、崖登り用に作った命綱のロープの片端を輪っかにして……
対岸から張り出してる木の枝目掛けて、風魔法に乗せて飛ばし……
引っかかったら、綱を引いて引き絞り、しまったら本来は自分の足に付ける金属の輪を、綱に通してから、輪っかを作って、こっち側の木の枝に引っ掛けて引き絞る。
あー、そうか。
なぜ、助けようと思わないかは……
自ら動こうとしないからだよ。
それでいながら、人の所為にするし……
そんな事を考えながら、対岸まで、移動。
綱を残して行くか、ちょっと考えて、風魔法で証拠隠滅。
というのも、綱が勿体ないので、枝を切り落とそうとして、太めの枝を選んでた事で、ちょっと考えた……
ナイフで枝を傷付けても気付かれるし、結び目が残ってても気付かれるって……
それなら、勿体ないけど枝ごと切り刻んじゃえ!って事で。
無音には出来ないので、暴風を装って、切り刻み川に落とし……
誰か起きて来るかと、しばらく待機し、その後、暗闇の中、移動。
なるべく気付かれない様に、足音を殺して……
綱、彼らにはあったら良いかも?とは一瞬は思ったけど……
彼らがカムデンに現れたら、侵入方法が特定されるでしょ?
そうしたら、誰が?って事になる。
有象無象の知恵があると思えない連中が、とは考えてはくれないだろうからね。
それに、侵入方法が見付かった場合は有耶無耶では済ませてくれないし。
彼の様に飛び込んで泳いでとか未成年なら、怒られはするけど、それで終わりで済むから。
帝国から逃げたトカレ村の様に、知恵を絞り、助け合ってるのなら、きっと今頃、アマイルに居るよ。
え?どうするのかって?
小舟を作って、川を下れば良いんだよ。不法侵入ではあるけど……
いや、今も不法占拠か。
川から離れ、森を抜ければロートンで……
割と平野部が多い国土だから、ちゃんと運営すれば、良い土地って、ギルドの資料にはあった。
だから、冒険者ギルドとすれば、手伝いくらいしか依頼がないもよう。
だけど、そのロートン、村でも町でも人気はなく……畑も耕してない?
人が居ないのに、巡回する兵は居て……
それも充分ではないかもだけど、住民よりは食糧事情はマシなのか体格は良い。
んだけど……覚えた違和感は……
人族しかいない?だった。
魔王国に向かうには、交通が閉じられてなければ、王都ロートンを突っ切って、北北東なんだけど……
獣人って分からない方が良いのかも?って、ヒゲが……
人族に変身はせず、猫耳と尻尾を厳重に隠すって事にした。
それなら、方向は王都ってだけで、関わらないって事で。
殺伐とした雰囲気の空気だけに、慎重に喫し、警戒度maxで、匂いにも足音にも気を付けて、人に会わない方向で……
魔王国に向かったんだけど……
集団での召喚、やっぱり学生だったかっていう光景にでくわした!
ただ……
女子3人と男子1人が、ウルフに囲まれていて……
前に立ってるのが、ショートカットの女子だったのはどうなの?
全員、学生服ではなくなって、初心者冒険者の装備にも満たない有様。
まさか、鑑定の魔道具でも使って、戦闘職でなかったから、城から追い出した感じ?
だって、服も町で売ってる中古っぽいし、ショートソードも女の子が持ってるだけで、男の子が持ってるのは解体用のナイフ!
今の自分は日本人じゃないけど!
周囲に、彼らを監視してる様な点もなく、魔道具の反応もヒゲは感じてない。
と言う事で……
囲んでるウルフに、猫としての威圧を放ち、視線が逸れたと同時に……
「木に登れ!」と叫んで……
頭上から降り注ぐ様に、氷の矢を放った。
囲ってるウルフ全部に、小さくとも傷が付いたら……
痺れ草で作った燻玉を、地面に叩き付ける様に放てば……
キャン!キャン!と犬独特の声で泣き叫んだ。
その間に、自分も木に登って、援軍が来るか様子見。
一時後には、援軍は来ないって事で、全員木から降りたんだけど……
傷から入った痺れ薬で、ウルフ6頭痙攣してたから、頸動脈を切って、始末したんだけど……
血の匂いが流れてる上、この地は生きてる者が全員飢えてるから……
「君たちが何処に向かってるのか知らないけど、自分は早急に離れるから」
一方的に言い放てば……
「僕たち、この地に詳しくないんですが、追放されたんです」
「足手まといにならない様にしますから、付いて行って良いですか?」
男の子と前に立ってた女の子に続けて言われ……
「とりあえず、血の匂いが…」って話には、全員合点はいってた様で……
足を動かしてくれた。
んだけど……
「この方向は……」って、男の子は渋ってて……
「王都の方に戻ってると思ってるんだろうけど、行先は魔王国だから」
自分の言葉に、「魔王…」と呟いて顔が青いけど……
「この大陸じゃ、1番安心して暮らせると思うよ」
え?って顔してるけど……
「フライハイト魔法大国も、魔道具を作って国としては強いと思ってたけど……帝国の動きが怪しいからねえ。安全とは言いきれない」
歩きながら、最先端とは言えないけど、知ってる事情を説明すれば……
困った顔になってた。
「国に保護されたいのか、自身で働くかで変わるけど、魔法大国は実力主義だからね。それなら、まだ魔王国の方が包容力があるよ」
それに、魔の森の中にあるから、魔王国なんだよには、苦笑い。
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猫獣人だったとは気付いてなくて……
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猫好きだというナオトに、尻尾を狙われてる……
ちなみに、魔王国の結界は強力で、魔の森の街道に入ったら、隠したままではいられないというのは事実だったの。
それで、猫耳と尻尾が出て来たのよ。
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