リーズ・ナブルは此れにて御免 ~ 元軍人付与士は冒険者として成り上がる~

アゲインスト

文字の大きさ
36 / 109
ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~

リーズ・ナブルは敵意を煽る

しおりを挟む
 突如選手交代を告げた俺の言葉に、王子ばかりか周囲も疑問そうな顔をしている。
 必要がないと言った決闘を、俺がするという。
 その行為にどんな意味があるのか、頭を巡らしている。
 俺はダールトンにも分かりやすいように、考えていることを話し出した。
 
「そもそも、ダールトン殿は此度の偉業が分かっておられない」
 
 俺の言葉に再びダールトンがいきり立とうとするが、王子の鋭い目線で動きを縫い止められる。
 硬直する彼を尻目に、俺は話を続ける。
 
「高位の魔物というのは本来であれば幾人もの犠牲を覚悟して挑まねばならない存在。私が軍に所属していたときに別種のものの討伐に参加しましたが、とても今回のような結果にはなりませんでした」
「原因があると?」
「はい。現在軍が抱える戦力はその多くを遠方へと置いています。決定打に欠ける状況と共に、戦線を維持することは困難を極めます。
 その点、今回の戦況を考えれば破格の成果といえます。
 現場の判断もよかった。
 無理に倒そうとせず、時間稼ぎに終始して戦力の到着まで凌ぎきった。この結果にいちゃもんをつける、というのなら示してもらう他ありません」
「・・・否定するにたる力を示すべき、と」
「仰る通りでございます。しかし、指揮の能力を示すのであれば場を整える必要がございます。たかだか個人の嫉妬でそこまでする必要がどこにありましょう」
 
 リティアに食いついたダールトンの感情を、くだらん嫉妬と断じる。それはあいつの感情を逆撫でする行為で、案の定こちらに対するやつの苛立ちのような気配が強くなる。
 
「それで、決闘か」
「王子が求めた決闘は、お互いの正当性を証明するためのもの。
 それはいい。
 しかし彼は彼女だけでなく私の元いた部隊の者たち、今回の功労者も侮辱している。ならば、彼女と戦う前に自分と戦っていただきましょう。古巣を馬鹿にされて、黙っていられるものではない」
 
 ごめん、あんましそんなこと思ってないわ。
 嘘じゃないけど、本当のことを話すと面倒だしこういう流れでいかせてもらうぞ。
 友達のために戦う。
 それだけのことをするためだからな。
 
「私が決闘を求めるのは、そういった理由です。軍属を離れ旅立とうというときに、これでは安心して国を発てません。どうか、私に名誉を守るための機会をお与えください」
 
 それとも。
 
「ダールトン殿も、まさか平民だからという理由で逃げる訳はございませんでしょうね?」
「ふざけたことを・・・・・・!!」
「いいだろう」
「で、殿下っ!?」
 
 ダールトンが返答するまえに、王子が決定を下す。
 これで準備は整った、後は軽く挑発してやれば・・・・・・。
 
「ダールトン殿が怖いから嫌だというなら別にいいですよ?」
「そんなわけがなかろう!!」
「なら、受けていただけますね」
「くっ・・・」
 
 逃げ道はないぞ。
 衆人環視のなか、ここまで事態を進めたんだ。恨むなら自らの迂闊さを恨むがいい。
 お前はもう、戦うしかないんだよ。
 それが全く意味のないものでもな。
 対象が俺に変わったことで、お前が戦う理由がそもそも薄れている。ラインホード家との繋がりもそこまでではないように見える俺ではリティアにダメージを与えることも叶わない。
 何より俺に勝ったところで、それがなんだというのだろう。
 平民の冒険者に勝って得られるものなど、貴族にとってナプキンよりも意味のないものだ。せいぜい憂さ晴らしにしかならない。
 そのためにわざわざ戦うか?
 
 
「・・・・・・よかろう! ああ、受けてやるさ・・・っ!!!」
 
 
 当然こいつは、乗ってくる。
 あっさい思考のこの男には、せめてその勝利に得ようと行動するしかない。
 さんざん荒らした頭の中には、焦りと怒り、そしてそれをぶつけることに支配された自棄っぱちなものに染まっているのだろう。
 汗を垂らしながら、始まる前から追い詰められたような彼の表情は苦々しく歪んでいる。
 
「ですがしばし時間をいただきたい! 頭を冷やし気を整えませんと、このままではこやつを殺しかねませんので!!」
 
 おや、そこまで言ってくれるかい。
 ならいいや。
 
「構いませんが?」
「は?」
「決闘なのでしょう? でしたら当然全力を尽くしたものであるべきだ。殺さないよう手加減していたなんて言い訳されるわけにはいかない」
 
 俺が望むもの。
 それを達成するためには、それこそ真剣勝負でなければ。
 
「今後こんなことがないよう、あなたには学んでいただかなくてはいけない。命を掛ける行いに、どれほどの覚悟がいるのか分かっていただくには、それが必要だ」
 
 命懸けというのは、とんでもないことだ。
 自分以上の存在に挑むことは、それなくして成立するものではない。
 それを馬鹿にするのなら、理解してもらおう。
 その覚悟をするために、どれほどの恐怖を乗り越えなければならないかを。
 
 
「まさしく真剣勝負。私は、それを望みます」
 
 
 かくして、この決闘騒ぎ。
 公爵家、ダールトン=スペルチナ。
 
 対
 
 元軍人、リーズ・ナブル。
 
 異色のカードによるそれぞれの理由を賭けた、戦いの火蓋が切って落とされることになるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...