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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~
リーズ・ナブルとダールトン=スペルチナ
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それが引き抜かれたのを見たとき、俺はようやく相手が戦う準備ができたのだと思った。
苦々しい、汗にまみれたそれまでのものとは違う、一種の覚悟が決まったともいえる顔をしている。
「・・・これを使うまでもないと、そう思っていた」
それは最初に俺に向けていた長剣。
すらりとした刀身に対してその根本、持ち手のところに施された加工を見る限り、普通の物ではないのは簡単にわかる。
この終盤でそれを用いることにしたのだ、当然奥の手であるはず。
「・・・・・・我が家にあるなかでも上位の業物。これを抜いた以上、俺が敗北する未来はない」
「・・・そうです・・・---かっ!!」
不用意に、一歩。
それまでの緩やかな歩みとは違う、踏み込んだところから煙すらあがるような瞬発力のある前進。
相手の意表を突くつもりのこの突進は、
「---はぁああ!!」
ビュンッッッッ!!!!
「、とぉおお!?」
気炎と共に放たれたそれによって妨害される。
目の前から迫る危機を感じ、咄嗟に身を捻らせて回避する。
巻き上がる土埃。体を叩く衝撃。
ずれたところから元いたところを見れば、くっきりと刻まれている一筋の線。
「ほぉ・・・」
深さはおよそ拳一つ分。
底にいくにつれ細くなっていく形はまるで獣の爪痕のよう。
して、それをなしたものの正体とは。
「---魔法剣、属性は『風』か」
「如何にも」
---当然、その剣に他はなく。
「着地の瞬間を狙ったが、よく避けた」
「遠間から振るってきたんだ、何かあるもんだと警戒するさ」
回避した姿勢のまま、答え合わせと言葉を交わす。
改めて構えられた剣の腹、そこに刻まれている翼のような紋様に確信を深める。
それは魔道具に刻まれることも多いポピュラーかつ人気のあるもの。
「『翼獣型』、風を発生させるものの中でも特に『切断』に特化した『風切羽』の紋様か。なるほど、よく切れるわけだ」
「一目でよくわかるものだ」
「仕事柄、そういうものにも触れる機会があっただけさ」
俺たち人間が魔物と戦いを繰り返してきた歴史、その中でも特に戦場で活躍してきたのが武器や防具に刻まれる紋様。
類感魔法制御用術式---通称『シジル』と呼ばれる治金技術の一つである。
簡単に言えば、魔物が扱う魔法現象を再現する、というものだ。
材料には主に魔鉄、さらに魔物の部位が使用される場合には更なる効果を発揮する。
刻まれた物に使用者の魔力を注ぐことで発動し、形としては俺の付与魔法に近いものであり、俺が扱うものより余程殺傷力に満ちている。
それを、こうして使ってきた。
「詰みだ。魔剣『ファルコ』の射程はお前の拳の届かないところにある、負けを宣言しろ」
お互いの距離は大股で約十歩といったところ。
確かに拳は届かない。近づく前に風の刃で切り裂かれるだろう。
そう確信しているからこその、敗北勧告。
「お前は強い。だが、それは手の届く範囲での話だ。こうしてお前の触れられないところから攻撃できる、動きもある程度わかる、なんだったら離れてもいい。俺に近づけない限り、お前に勝利はない」
勝算がある。
あれほどの数を倒した相手でも、勝てる手段がある。
それ故の、勝利宣言。
しかし。
「そういうくせに、何故あんたは嬉しそうじゃないんだ?」
その顔は、とてもではないが勝者となろうとする男のする顔ではなかった。
喜の感情は見えず、大きな怒で彩られているその顔。
「・・・・・・なにを喜べという?」
そんな表情をする男から漏れる言葉。
それは今までこの男に抱いていたことがまるで嘘のように、傲慢さなど欠片もないもの。
「挑発をした。進言し貶めようとした。それが叶わず戦えど、一人相手に数で攻めて破れた。そいつが目の前に来れば手段を選ばずこの有り様だ。まるで臆病者だ、俺は」
騎士として、ということだろうか。
貴族としてのこの男を相手しているつもりだったが、どうにも何かが琴線に触れたらしい。
それまでの行いを後悔でもするかのように口にする。
「だったらなんでこんなこと」
「・・・貴様にはわからんことだ」
煽っていた俺がいうことではないかもしれないが、そこで黙りこまれてしまってはどうにもならないというか。
そんなこちらの困惑をよそに、相手さんは戦闘再開とばかりに構えをとる。
「さあ、どうする。このまま負けを認めるか」
「・・・わからん、がまあいいか」
気にしていても仕方がない。
どちらにしろこの勝負、負ける気はないのだから。
「挑ませてもらうとするよ」
「では---覚悟しろ!!」
一閃と共に放たれた風の刃。
高速で迫るそれは正確に俺を捉えている。
さすがにこれの直撃を食らえば大怪我ではすまない結果になることだろう。
そう判断した俺は、相手と同じく更なる一手を打つことにした。
苦々しい、汗にまみれたそれまでのものとは違う、一種の覚悟が決まったともいえる顔をしている。
「・・・これを使うまでもないと、そう思っていた」
それは最初に俺に向けていた長剣。
すらりとした刀身に対してその根本、持ち手のところに施された加工を見る限り、普通の物ではないのは簡単にわかる。
この終盤でそれを用いることにしたのだ、当然奥の手であるはず。
「・・・・・・我が家にあるなかでも上位の業物。これを抜いた以上、俺が敗北する未来はない」
「・・・そうです・・・---かっ!!」
不用意に、一歩。
それまでの緩やかな歩みとは違う、踏み込んだところから煙すらあがるような瞬発力のある前進。
相手の意表を突くつもりのこの突進は、
「---はぁああ!!」
ビュンッッッッ!!!!
「、とぉおお!?」
気炎と共に放たれたそれによって妨害される。
目の前から迫る危機を感じ、咄嗟に身を捻らせて回避する。
巻き上がる土埃。体を叩く衝撃。
ずれたところから元いたところを見れば、くっきりと刻まれている一筋の線。
「ほぉ・・・」
深さはおよそ拳一つ分。
底にいくにつれ細くなっていく形はまるで獣の爪痕のよう。
して、それをなしたものの正体とは。
「---魔法剣、属性は『風』か」
「如何にも」
---当然、その剣に他はなく。
「着地の瞬間を狙ったが、よく避けた」
「遠間から振るってきたんだ、何かあるもんだと警戒するさ」
回避した姿勢のまま、答え合わせと言葉を交わす。
改めて構えられた剣の腹、そこに刻まれている翼のような紋様に確信を深める。
それは魔道具に刻まれることも多いポピュラーかつ人気のあるもの。
「『翼獣型』、風を発生させるものの中でも特に『切断』に特化した『風切羽』の紋様か。なるほど、よく切れるわけだ」
「一目でよくわかるものだ」
「仕事柄、そういうものにも触れる機会があっただけさ」
俺たち人間が魔物と戦いを繰り返してきた歴史、その中でも特に戦場で活躍してきたのが武器や防具に刻まれる紋様。
類感魔法制御用術式---通称『シジル』と呼ばれる治金技術の一つである。
簡単に言えば、魔物が扱う魔法現象を再現する、というものだ。
材料には主に魔鉄、さらに魔物の部位が使用される場合には更なる効果を発揮する。
刻まれた物に使用者の魔力を注ぐことで発動し、形としては俺の付与魔法に近いものであり、俺が扱うものより余程殺傷力に満ちている。
それを、こうして使ってきた。
「詰みだ。魔剣『ファルコ』の射程はお前の拳の届かないところにある、負けを宣言しろ」
お互いの距離は大股で約十歩といったところ。
確かに拳は届かない。近づく前に風の刃で切り裂かれるだろう。
そう確信しているからこその、敗北勧告。
「お前は強い。だが、それは手の届く範囲での話だ。こうしてお前の触れられないところから攻撃できる、動きもある程度わかる、なんだったら離れてもいい。俺に近づけない限り、お前に勝利はない」
勝算がある。
あれほどの数を倒した相手でも、勝てる手段がある。
それ故の、勝利宣言。
しかし。
「そういうくせに、何故あんたは嬉しそうじゃないんだ?」
その顔は、とてもではないが勝者となろうとする男のする顔ではなかった。
喜の感情は見えず、大きな怒で彩られているその顔。
「・・・・・・なにを喜べという?」
そんな表情をする男から漏れる言葉。
それは今までこの男に抱いていたことがまるで嘘のように、傲慢さなど欠片もないもの。
「挑発をした。進言し貶めようとした。それが叶わず戦えど、一人相手に数で攻めて破れた。そいつが目の前に来れば手段を選ばずこの有り様だ。まるで臆病者だ、俺は」
騎士として、ということだろうか。
貴族としてのこの男を相手しているつもりだったが、どうにも何かが琴線に触れたらしい。
それまでの行いを後悔でもするかのように口にする。
「だったらなんでこんなこと」
「・・・貴様にはわからんことだ」
煽っていた俺がいうことではないかもしれないが、そこで黙りこまれてしまってはどうにもならないというか。
そんなこちらの困惑をよそに、相手さんは戦闘再開とばかりに構えをとる。
「さあ、どうする。このまま負けを認めるか」
「・・・わからん、がまあいいか」
気にしていても仕方がない。
どちらにしろこの勝負、負ける気はないのだから。
「挑ませてもらうとするよ」
「では---覚悟しろ!!」
一閃と共に放たれた風の刃。
高速で迫るそれは正確に俺を捉えている。
さすがにこれの直撃を食らえば大怪我ではすまない結果になることだろう。
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