セフィロト

讃岐うどん

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『黄金卿』編

エピローグ

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「黄金卿、エルドラドは死亡。3人の調律師による活躍か、か」
 とある病院のとある病室で、楽は入院していた。原因は地脈の連続使用だ。だが、公的な理由は交通事故にしてある。
「悪かーねぇ。だがな──」
 うんうん、と何度か頷き、目線は右へ。
「テメー一体どう云うつもりだぁ! 秀!」
 ベッドの隣でリンゴの皮を丁寧に剥いている少年へ怒鳴った。
「ッ! そんな大声出すなよ。ここ病院だぜ?」
「んなこと分かってんだよ。じゃねぇ、何でテメーがあそこに居たんだ!?」
 ここが個室で無ければ、今頃出禁を喰らっていただろう。罵声が飛び、秀は分かった分かったと言って、手に持っていたリンゴを切り分ける。
「こっちだって事情があったんだ。仕方ないだろ。ほら、口開けろ」
 爪楊枝を刺したリンゴを喰わせる。嫌がっていたが、リンゴを口にした途端、表情が落ち着いた。意外と美味しかったらしい。
「──ん。本来、オマエはこっちの世界とは無縁の筈だ」
「そうだな」
 否定せず、ただ、肯定する。
「それが、何であのピルグリムの子アストラルと一緒に居たんだ?」
「……」
 理由自体は話せるだろう。だけど、話したく無い。いつしか目線は握った果実へ。
「オマエ、あいつが何なのか、知っているよな?」
「……」
 あの日、結界『黄金郷』が解かれた時、彼はラセツと出会した。近くに倒れていたアストラルの回収、それと治療を施すためのアドバイス、をくれたのだ。応急処置を施したラセツは、「後は任せた」と言って、彼女を秀に押し付け、同じく闇に消えていった。
期待の新星ニュースター。若いながらもその実力はトップクラス。調律師の中じゃ、今一番有名だろうな。色んな意味で」
「──ああ」
 ぶっきらぼうに返事して、立ち上がる。そろそろ時間だ。彼女が待っている以上、これ以上長居は出来ない。
「聞かせろ。オマエはこれから、どうするんだ?」
「どうする、とは?」
「このことを忘れて、何も知らない一般人に戻るか、それとも……」
 真剣な目付きで、秀を見る。
「真実を受け止め、この世界を征くのか」
 秀は立ったまま、楽を見つめる。
「……わからない。今はまだ、どうしたいのか決まっていないんだ」
「そうかよ。なら、またな」
「ああ。また見舞い来るよ」
 出て行った。
「おう」
 テメーの所為だけどな。思ったけど、口には出さない。彼が入院した原因の半分は、地脈の連続使用。ただし、もう半分は秀の所為だ。
 地脈の起動によって大量の命力が逆流し、筋肉、神経をズタズタに破壊したのだ。本来なら一週間寝込むぐらいで済むのだが、トドメを秀が刺した。
 小屋からの救出。それまでは良かった。だが、途中で彼を放置して、どこかに行ってしまった。お陰で自力下山する羽目になってしまったのだ。



「怪我人の見舞いの次は、また──」
 家に着いた。玄関戸を開ける。靴を脱いで、憂鬱とした顔で買い物袋を置く。中身は大量の食材だ。料理は苦手であるが、やるしか無い。
「ただいま。ほら、出来たぞー」
 お粥。一回炊飯器爆発しかけたが、まあ、誤差だろう。水入れるなら水入れろって書いとけよ。初心者に優しく無い。
「おかえりなさい。早かったね」
 秀のベッドを占領しているのは、アストラル。造られた笑顔から、苦しみが滲み出ている。
「まぁね。怪我人を待たせれるほど、落ちぶれてないし」
 よいしょ。机を取り出して、ベッドの横に置く。湯気の出ているお粥は、あんまり美味しそうには見えない。及第点あるかな。
「──ん」
「どう?」
 もぐもぐと食べている。顔色を窺っているが、弱りきった彼女は表情を変えず、ただ飲み込む。
「パサパサしてる……」
「マジか」
 まさか。そう思い、一口。
「ヴ。なんだこれ?」
 お粥を作ったつもりが炒飯になるとは。
 しかも、味が無い。具もない。プラスチック食べてるみたいだ。
「マッズいな」
「でしょ?」
 アストラルが秀の部屋に居るのは、3日前に遡る。エルドラドを討伐した日、気絶した彼女を介抱した秀の提案だった。
 戦闘が終わり、目を覚ました彼女に行く宛が無いことを知った秀が、「なら、しばらく泊まるか?」と言ったことが要因である。
 先日の戦いの治療も兼ね、居候させてもらっていた。




「それにしても……まさか、な」
「ええ。そうなった、とは」
 男調律師どもは、例のボロ屋で会談していた。2人とも、戦が終わった後とは到底思えないほど、緊張が抜けていない。
 それどころか、漸く本題に入ったような雰囲気だ。
「まさか……例の神具かんぐが見つかるとはな」
「噂話が現実になるのは……些か、複雑ですね」
 天下蒼天は目線を逸らす。


「本当の目的はコッチだったんだろ?」
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