22 / 28
『黄金卿』編
エピローグ
しおりを挟む「黄金卿、エルドラドは死亡。3人の調律師による活躍か、か」
とある病院のとある病室で、楽は入院していた。原因は地脈の連続使用だ。だが、公的な理由は交通事故にしてある。
「悪かーねぇ。だがな──」
うんうん、と何度か頷き、目線は右へ。
「テメー一体どう云うつもりだぁ! 秀!」
ベッドの隣でリンゴの皮を丁寧に剥いている少年へ怒鳴った。
「ッ! そんな大声出すなよ。ここ病院だぜ?」
「んなこと分かってんだよ。じゃねぇ、何でテメーがあそこに居たんだ!?」
ここが個室で無ければ、今頃出禁を喰らっていただろう。罵声が飛び、秀は分かった分かったと言って、手に持っていたリンゴを切り分ける。
「こっちだって事情があったんだ。仕方ないだろ。ほら、口開けろ」
爪楊枝を刺したリンゴを喰わせる。嫌がっていたが、リンゴを口にした途端、表情が落ち着いた。意外と美味しかったらしい。
「──ん。本来、オマエはこっちの世界とは無縁の筈だ」
「そうだな」
否定せず、ただ、肯定する。
「それが、何であのピルグリムの子と一緒に居たんだ?」
「……」
理由自体は話せるだろう。だけど、話したく無い。いつしか目線は握った果実へ。
「オマエ、あいつが何なのか、知っているよな?」
「……」
あの日、結界『黄金郷』が解かれた時、彼はラセツと出会した。近くに倒れていたアストラルの回収、それと治療を施すためのアドバイス、をくれたのだ。応急処置を施したラセツは、「後は任せた」と言って、彼女を秀に押し付け、同じく闇に消えていった。
「期待の新星。若いながらもその実力はトップクラス。調律師の中じゃ、今一番有名だろうな。色んな意味で」
「──ああ」
ぶっきらぼうに返事して、立ち上がる。そろそろ時間だ。彼女が待っている以上、これ以上長居は出来ない。
「聞かせろ。オマエはこれから、どうするんだ?」
「どうする、とは?」
「このことを忘れて、何も知らない一般人に戻るか、それとも……」
真剣な目付きで、秀を見る。
「真実を受け止め、この世界を征くのか」
秀は立ったまま、楽を見つめる。
「……わからない。今はまだ、どうしたいのか決まっていないんだ」
「そうかよ。なら、またな」
「ああ。また見舞い来るよ」
出て行った。
「おう」
テメーの所為だけどな。思ったけど、口には出さない。彼が入院した原因の半分は、地脈の連続使用。ただし、もう半分は秀の所為だ。
地脈の起動によって大量の命力が逆流し、筋肉、神経をズタズタに破壊したのだ。本来なら一週間寝込むぐらいで済むのだが、トドメを秀が刺した。
小屋からの救出。それまでは良かった。だが、途中で彼を放置して、どこかに行ってしまった。お陰で自力下山する羽目になってしまったのだ。
「怪我人の見舞いの次は、また──」
家に着いた。玄関戸を開ける。靴を脱いで、憂鬱とした顔で買い物袋を置く。中身は大量の食材だ。料理は苦手であるが、やるしか無い。
「ただいま。ほら、出来たぞー」
お粥。一回炊飯器爆発しかけたが、まあ、誤差だろう。水入れるなら水入れろって書いとけよ。初心者に優しく無い。
「おかえりなさい。早かったね」
秀のベッドを占領しているのは、アストラル。造られた笑顔から、苦しみが滲み出ている。
「まぁね。怪我人を待たせれるほど、落ちぶれてないし」
よいしょ。机を取り出して、ベッドの横に置く。湯気の出ているお粥は、あんまり美味しそうには見えない。及第点あるかな。
「──ん」
「どう?」
もぐもぐと食べている。顔色を窺っているが、弱りきった彼女は表情を変えず、ただ飲み込む。
「パサパサしてる……」
「マジか」
まさか。そう思い、一口。
「ヴ。なんだこれ?」
お粥を作ったつもりが炒飯になるとは。
しかも、味が無い。具もない。プラスチック食べてるみたいだ。
「マッズいな」
「でしょ?」
アストラルが秀の部屋に居るのは、3日前に遡る。エルドラドを討伐した日、気絶した彼女を介抱した秀の提案だった。
戦闘が終わり、目を覚ました彼女に行く宛が無いことを知った秀が、「なら、しばらく泊まるか?」と言ったことが要因である。
先日の戦いの治療も兼ね、居候させてもらっていた。
「それにしても……まさか、な」
「ええ。そうなった、とは」
男調律師どもは、例のボロ屋で会談していた。2人とも、戦が終わった後とは到底思えないほど、緊張が抜けていない。
それどころか、漸く本題に入ったような雰囲気だ。
「まさか……例の神具が見つかるとはな」
「噂話が現実になるのは……些か、複雑ですね」
天下蒼天は目線を逸らす。
「本当の目的はコッチだったんだろ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる