セフィロト

讃岐うどん

文字の大きさ
24 / 28
ロシア編

第一話 続き

しおりを挟む

「──成程。死んだか、黄金卿」
 とある豪邸の一室で、男はフー、と深くため息をついた。華奢な机には煩雑に置かれた無数の資料。ノートパソコンのスペース以外の全てを失い、辛うじてとれたスペースに肘をつく。
「ええ。残念ですか?」
 目の前には女。肩まで伸ばした緋色の髪に、炎を思わせる紅蓮の瞳。お互い、大学生ぐらいだろうか。二十歳を過ぎているか過ぎていないかのギリギリのライン。
「そうさな。当然、残念だとも」
 男の目元には、深い隈。何日も寝ていないのだろう。常に暗い顔のせいか、本心から思っているのか不明だ。
 そんな男を見て、彼女は後ろで組んでいた手を解き、一歩。
「貴方が誑かしたクセに?」
 わざとらしく微笑み、翻す。
「そうだったか?」
 わざとらしくため息、目線を上げる。
「俺は今心傷しているんだ。これ以上責め立てないでくれ」
(嘘くさ)
 真意がどうであれ、少量でも涙を流したあたり、思うところはあったのかもしれない。実際はさておいて。
「それにしても、確か……アストラル、とか言ったか?」
 彼女と同じく腕を解き、机の上の資料を一枚、手に取る。a4サイズの紙に、隙間なく限界までびっしりと文字が書かれていた。
守護者ピルグリムの子?」
「そうそう」
 資料を要約すると、アストラルについてだ。作成者は目の前の女。右上のホッチキスは分厚い。
「幾ら、ラセツと協力したとはいえ、エルドラドアイツを討ち取るとは。……正直、未だに信じられんな。くだらないb級映画のシナリオみたいだ」
「現実ですよ。それに……ふふ」
 思い出したかのようにニヤニヤと笑う彼女に、嫌な顔をして引いた。
「何だ、気持ち悪い」
「ふふ……教えてあげようか黒風クン? 教えて欲しい? ねぇねぇ」
 黒風と呼ばれた男は本当に嫌そうな顔をして、
「いいよ。興味無いし」
 一蹴した。
「……」
 予想外だったのか、彼女……レッドバレットは一瞬固まり、慌てて言う。
「冗談だって。真面目な話、『』が顕界した」
「何だって!?」
 目を見開き、本気で驚く黒風。開いた口は塞がらず、勢いに任せて机を叩き、立ち上がる。
!?」
「うん、会った。と言っても、一瞬だけだし、だけどね」
 まるで恋する少女のように頬を赤らめるレッドバレット。側から見れば、奇妙な光景だろう。彼女の見た目、内側から発生するその圧倒的な力は、壊れたバランスで保たれていた。
「……何千年だ?」
 興奮冷めやまぬうちに座り込む。あくまでも冷静だ。冷静になれ。
「さぁ? 少なくとも、3は超えてる」
 かつての思い出が蘇る。あぁ、忘れてはいないとも。あの二人のことは。絶対に忘れないさ。
「封印を解く者が居たとはな。確か、深淵アビスの何処か色彩おれたちでも発見できなかった。一体、何者が?」
「さぁ? 今、ヒイロが調査しているけど、まだ詳細は不明。本当にどうやって見つけたんだろうね?」
 他人行儀で話す彼女だが、どこか嬉しそうだった。そして、問いかける。
「……興味湧かない?」
「……あるが、わざわざ確かめに行こうとは思わん。ヤツからの接触を待つ」
「えー。一緒行こうよ」
「ヤダね。なんでお前なんかといかなきゃならん。『海色の楼ブルーゼツ』ぐらいだろせめて」
「ちっ」
 やんわり……ど直球に断られた彼女は表面上落ち込み、部屋を去ろうと蹄を返す。
「行くのか?」
「まぁね。これでも私、ですから。
「そうか。じゃあな消えろ。ヤツが目覚めるまで2度とそのツラ見せつけるな」

 そう言われて、彼女は手を振りかえして出ていった。彼は呆れて、手を振りかえす。
 ああはいっても数千年の仲だ。彼の暴言など気にも止めていない。
……か」
 ポツリ、と呟いた。

、元気にしてるかなぁ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...