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第五章 風嵐都市編
第五話「かつての戦友」
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ダイダリオスの前には黒鉄の鎧を纏った男が立っている。
前に現れた男はシャステイルだった。
「なぜ、お前が邪神教の姿でここにいる?」
ダイダリオスに問いかける。
「俺は神王陛下の命令で邪神教に潜伏していた。シャステイル、お前こそ…十年前の出来事以来姿を消して、今まで何をしていたんだ?」
憎悪の籠った目でシャステイルを見る。
十年前、風嵐都市の隣国で巻き起こった大規模な紛争。
その紛争で隣国は滅びてしまった。
当時、聖騎士として救援に派遣されたシャステイルとダイダリオスは焼野原になった街を見て絶望する。
後に首謀者が邪神教だということを知ったシャステイルは風嵐神ファルファレラへ対策を講じるよう進言したが、進言は通ることなく却下されてしまったのだ。
その頃からシャステイルはファルファレラの見据える未来に異変を感じるようになってしまい、聖騎士の座を降り、行方を眩ませた。
「俺はあれ以来、邪神教を探して殺して回っていた」
シャステイルの言葉を聞いて、荒ぶるダイダリオス。
「お前は神王殿下を裏切った…!殿下に慕われていたお前が!隊長として…聖騎士に残っていれば、あの方も…」
「ダイダリオス、あれはもう俺たちの慕っていた神王殿下ではないてん…。お前だって気付いているだろう!」
「ふざけるな…のうのうと生き、国を捨てたお前を…俺は、許さない!」
ダイダリオスの纏うオーラが激しさを増し、一帯の地面が揺れる。
「いつかの決着を着けようか、隊長」
爆風が巻き起こり、シャステイルは腕で顔を守る。
「ダイダリオス、お前を止める」
シャステイルの手に収束する。それはやがて透明の剣へと形を変えた。
バチバチと音を立て、直立するダイダリオスもまた、全身が漆黒の外装に覆われ、異様な雰囲気を感じさせるものへと変貌を遂げる。
「シャステイル!!!」
足元の地面が抉れ、ダイダリオスが視界から消えた。
凄まじい速さで背後へと回り込み、死角から放たれた一撃をシャステイルは受け止める。
―ドンッ!!
ダイダリオスの強烈な蹴りがシャステイルを吹き飛ばす。
受け身を取ったシャステイルへと怒涛の攻撃を仕掛ける。
かつて七翼の聖騎士《一席》を担っていたシャステイルですら全力のダイダリオスに圧倒されてしまう。
「《風斬り》!!」
シャステイルは防戦一方ながらも反撃を行うが、ダイダリオスの能力でかき消されてしまう。
剣を形成していた風は形を崩し、無防備となったシャステイルをダイダリオスの爪が切り裂いた。
「ソノ鎧の能力はもう知っている」
真空を操る能力が無効化されてしまい、シャステイルは押されていた。
(能力の無効化に加えて…邪眼による動体視力と反射神経の限界突破か。厄介だな…)
今まで一切焦りを見せてこなかったシャステイルの額から汗が流れ落ちる。
シャステイルには勝機があった。だが、その技は一度見切られると二度は通用しない。
(次の一撃で決めなければ…、負ける…)
視界で追えるギリギリの速度で動くダイダリオスが攻撃に移った。
剣を振りかざし、技を放とうとするシャステイルにダイダリオスは言う。
「ソノ風ノ剣ハ通用シナイゾ…!!」
シャステイルとダイダリオスが同時に攻撃を放った。
「はあああああ!!!!」
「ハアアアアア!!!!」
ダイダリオスの攻撃でシャステイルの風は霧散してしまう。
「終ワリダ!!」
急に視界が斜めになる。
何が起こったかわからなかったダイダリオスだがすぐに理解した。
胴体に激痛が走ったからだ。
(斬られた…!?)
自身の肩から胸にかけて何かに斬られていた。。
「能力ガ…ナゼ…」
痛みの方向へ目をやると、そこには風の剣ではなく一本の剣があった。
「…風の形成した剣の中にもう一つ本物の剣を仕込んでおいた」
「お前の敗因は、能力を無効化できたと思い込み実体のある剣に気付かなかったことだ。昔から…詰めが甘い」
ダイダリオスは倒れ込む。
「俺ハ…結局勝テナカッタノカ…」
連戦で酷使した身体は限界を迎えていた。
「シャステイル…アノ方ヲ…救ッテヤッテクレ」
途切れかけの意識でシャステイルに話しかける。
「ああ…。お前はもう、休め…」
ダイダリオスの外装が崩れ落ち、呼吸が止まる。
「ぐ…」
戦いには勝利したが、身体は悲鳴を上げていた。
シャステイルは傷だらけの身体を振るい立たせ、風嵐神がいる場所へと向かう。
前に現れた男はシャステイルだった。
「なぜ、お前が邪神教の姿でここにいる?」
ダイダリオスに問いかける。
「俺は神王陛下の命令で邪神教に潜伏していた。シャステイル、お前こそ…十年前の出来事以来姿を消して、今まで何をしていたんだ?」
憎悪の籠った目でシャステイルを見る。
十年前、風嵐都市の隣国で巻き起こった大規模な紛争。
その紛争で隣国は滅びてしまった。
当時、聖騎士として救援に派遣されたシャステイルとダイダリオスは焼野原になった街を見て絶望する。
後に首謀者が邪神教だということを知ったシャステイルは風嵐神ファルファレラへ対策を講じるよう進言したが、進言は通ることなく却下されてしまったのだ。
その頃からシャステイルはファルファレラの見据える未来に異変を感じるようになってしまい、聖騎士の座を降り、行方を眩ませた。
「俺はあれ以来、邪神教を探して殺して回っていた」
シャステイルの言葉を聞いて、荒ぶるダイダリオス。
「お前は神王殿下を裏切った…!殿下に慕われていたお前が!隊長として…聖騎士に残っていれば、あの方も…」
「ダイダリオス、あれはもう俺たちの慕っていた神王殿下ではないてん…。お前だって気付いているだろう!」
「ふざけるな…のうのうと生き、国を捨てたお前を…俺は、許さない!」
ダイダリオスの纏うオーラが激しさを増し、一帯の地面が揺れる。
「いつかの決着を着けようか、隊長」
爆風が巻き起こり、シャステイルは腕で顔を守る。
「ダイダリオス、お前を止める」
シャステイルの手に収束する。それはやがて透明の剣へと形を変えた。
バチバチと音を立て、直立するダイダリオスもまた、全身が漆黒の外装に覆われ、異様な雰囲気を感じさせるものへと変貌を遂げる。
「シャステイル!!!」
足元の地面が抉れ、ダイダリオスが視界から消えた。
凄まじい速さで背後へと回り込み、死角から放たれた一撃をシャステイルは受け止める。
―ドンッ!!
ダイダリオスの強烈な蹴りがシャステイルを吹き飛ばす。
受け身を取ったシャステイルへと怒涛の攻撃を仕掛ける。
かつて七翼の聖騎士《一席》を担っていたシャステイルですら全力のダイダリオスに圧倒されてしまう。
「《風斬り》!!」
シャステイルは防戦一方ながらも反撃を行うが、ダイダリオスの能力でかき消されてしまう。
剣を形成していた風は形を崩し、無防備となったシャステイルをダイダリオスの爪が切り裂いた。
「ソノ鎧の能力はもう知っている」
真空を操る能力が無効化されてしまい、シャステイルは押されていた。
(能力の無効化に加えて…邪眼による動体視力と反射神経の限界突破か。厄介だな…)
今まで一切焦りを見せてこなかったシャステイルの額から汗が流れ落ちる。
シャステイルには勝機があった。だが、その技は一度見切られると二度は通用しない。
(次の一撃で決めなければ…、負ける…)
視界で追えるギリギリの速度で動くダイダリオスが攻撃に移った。
剣を振りかざし、技を放とうとするシャステイルにダイダリオスは言う。
「ソノ風ノ剣ハ通用シナイゾ…!!」
シャステイルとダイダリオスが同時に攻撃を放った。
「はあああああ!!!!」
「ハアアアアア!!!!」
ダイダリオスの攻撃でシャステイルの風は霧散してしまう。
「終ワリダ!!」
急に視界が斜めになる。
何が起こったかわからなかったダイダリオスだがすぐに理解した。
胴体に激痛が走ったからだ。
(斬られた…!?)
自身の肩から胸にかけて何かに斬られていた。。
「能力ガ…ナゼ…」
痛みの方向へ目をやると、そこには風の剣ではなく一本の剣があった。
「…風の形成した剣の中にもう一つ本物の剣を仕込んでおいた」
「お前の敗因は、能力を無効化できたと思い込み実体のある剣に気付かなかったことだ。昔から…詰めが甘い」
ダイダリオスは倒れ込む。
「俺ハ…結局勝テナカッタノカ…」
連戦で酷使した身体は限界を迎えていた。
「シャステイル…アノ方ヲ…救ッテヤッテクレ」
途切れかけの意識でシャステイルに話しかける。
「ああ…。お前はもう、休め…」
ダイダリオスの外装が崩れ落ち、呼吸が止まる。
「ぐ…」
戦いには勝利したが、身体は悲鳴を上げていた。
シャステイルは傷だらけの身体を振るい立たせ、風嵐神がいる場所へと向かう。
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