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いつものように茶屋のお手伝いをしていたら、ボタンがころんっと転がった。拾ってみると間違いなくこれは私のブラウスのものだった。
さすがにボタンが取れたまま働くなんて出来ない私は、急いで彼のいる厨房へと向かった。
「あのっ、針と糸をお借り出来ませんか?」
「確か……そこの棚にあるから使ってくれていいよ。これが最後の注文だしね、僕はこれを運んでくるよ」
そう言って彼は甘味を手に厨房から離れた。私はというとブラウスを脱ぎ、一時的に前掛けで胸元を隠すと針に糸を通してボタンを縫っていく。
ボタンくらい楽勝だと思っていた。
その考えが甘かったと反省しなくてはいけない。
ああ、私はなんて愚かなんだろう――後悔したところでブラウスは元になんか戻らない。
私は形状が変ってしまったブラウスを握り締めて声を殺すように泣いた。
そんな私の肩にふわっと、てぬぐいが乗せられた。
「その恰好はどうしたんだい? それに、その手に握ってる服は……」
「うぅ……わ、私っ。ただボタンが外れたので縫おうとしただけなんです。なのにっ、なのに……」
「……これは、ひどいね。どうしてハサミを使ってしまったんだい?」
「糸を切ろうと思って、です……」
私の答えに彼は唖然としていた。それも無理はないかもしれない。糸を切ろうとして布を切ってしまうのだから。
彼は私からブラウスを受け取ると、大きなため息をついた。
今の私の耳にはそれはつらく感じてしまった。
「まぁ……失敗したのは仕方がないよ。その恰好じゃ帰れないだろうし、お客さんが帰ったら一旦店を閉めて小袖を取ってくるよ」
「ごめんなさい。ご迷惑をおかけします」
「うん、次からは僕に教えてくれるかい?」
私が小さく頷くと、彼は優しく頭を撫でてくれた。
彼の優しさが私の胸を熱くする。
それから数刻が過ぎて彼は小袖と下駄を持ってきてくれたのだった。
私は手伝ってもらい、小袖へと着替えた。
そして今日は早めに切り上げて、彼は茶屋の暖簾を外した。
「鷹華、帰ろうか。大丈夫、手は握っててあげるから。少しは下駄にも慣れないとね」
「気を付けます。でっでも、転ばないようにぎゅっと握っててくださいね? 絶対に離さないでくださいね?」
差し出された手を取り、私は強くぎゅっと握った。
前は緊張のあまり気が付かなかったけど、彼の手は大きくてちょっとゴツゴツしてて、やっぱり男の人だって改めて感じた。
手から伝わる熱にちょっと照れくさい。
彼の横顔を覗き見ると、彼は涼しい顔で真っ直ぐ前を見ていた。
(ちょっと、こっち向いてくれないかな……)
……私ってば何を考えているんだろう。この気持ちは何?
そんな想いが私の頭を巡る。
だけどそんな考えはアクシデントで消えてしまうものだった。
そう、私は枝に小袖を引っかけて裾を破ってしまったのだった。
折角の小袖を……ごめんなさい。今日はなんて厄日なのでしょうか……。
さすがにボタンが取れたまま働くなんて出来ない私は、急いで彼のいる厨房へと向かった。
「あのっ、針と糸をお借り出来ませんか?」
「確か……そこの棚にあるから使ってくれていいよ。これが最後の注文だしね、僕はこれを運んでくるよ」
そう言って彼は甘味を手に厨房から離れた。私はというとブラウスを脱ぎ、一時的に前掛けで胸元を隠すと針に糸を通してボタンを縫っていく。
ボタンくらい楽勝だと思っていた。
その考えが甘かったと反省しなくてはいけない。
ああ、私はなんて愚かなんだろう――後悔したところでブラウスは元になんか戻らない。
私は形状が変ってしまったブラウスを握り締めて声を殺すように泣いた。
そんな私の肩にふわっと、てぬぐいが乗せられた。
「その恰好はどうしたんだい? それに、その手に握ってる服は……」
「うぅ……わ、私っ。ただボタンが外れたので縫おうとしただけなんです。なのにっ、なのに……」
「……これは、ひどいね。どうしてハサミを使ってしまったんだい?」
「糸を切ろうと思って、です……」
私の答えに彼は唖然としていた。それも無理はないかもしれない。糸を切ろうとして布を切ってしまうのだから。
彼は私からブラウスを受け取ると、大きなため息をついた。
今の私の耳にはそれはつらく感じてしまった。
「まぁ……失敗したのは仕方がないよ。その恰好じゃ帰れないだろうし、お客さんが帰ったら一旦店を閉めて小袖を取ってくるよ」
「ごめんなさい。ご迷惑をおかけします」
「うん、次からは僕に教えてくれるかい?」
私が小さく頷くと、彼は優しく頭を撫でてくれた。
彼の優しさが私の胸を熱くする。
それから数刻が過ぎて彼は小袖と下駄を持ってきてくれたのだった。
私は手伝ってもらい、小袖へと着替えた。
そして今日は早めに切り上げて、彼は茶屋の暖簾を外した。
「鷹華、帰ろうか。大丈夫、手は握っててあげるから。少しは下駄にも慣れないとね」
「気を付けます。でっでも、転ばないようにぎゅっと握っててくださいね? 絶対に離さないでくださいね?」
差し出された手を取り、私は強くぎゅっと握った。
前は緊張のあまり気が付かなかったけど、彼の手は大きくてちょっとゴツゴツしてて、やっぱり男の人だって改めて感じた。
手から伝わる熱にちょっと照れくさい。
彼の横顔を覗き見ると、彼は涼しい顔で真っ直ぐ前を見ていた。
(ちょっと、こっち向いてくれないかな……)
……私ってば何を考えているんだろう。この気持ちは何?
そんな想いが私の頭を巡る。
だけどそんな考えはアクシデントで消えてしまうものだった。
そう、私は枝に小袖を引っかけて裾を破ってしまったのだった。
折角の小袖を……ごめんなさい。今日はなんて厄日なのでしょうか……。
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