異国の地で願うもの、それは

桃木葉乃

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 鏡を見つめる度に思う。
 ――ああ、どうして私の髪は黒じゃなくて金なのだろう。サラサラじゃなくてふわっとしたウェーブなのだろうか。
 鏡に映る自分の姿……丈の短くなった小袖と帯にスカート。そして太股まで長い白の靴下。
 枝に引っかけて破けてしまった小袖は、彼が丈を短く仕立ててくれた。
 何度目かのため息を漏らした時、障子の向こうから彼の声が聞こえた。

「鷹華、そろそろ行こうか」
「あっ、はーい! 今、行きます」

 私は急いで行くと足首のリボンが可愛いい桃色のパンプスを履いた。
 そして茶屋へと向かう彼の後ろを付いて行く。

「記憶の方はどうだい? 戻りそうかな?」
「いえ……ご迷惑をおかけしています」
「いや、いいんだよ。それなら、お参りをして行こうか」

 彼は私の手を取って神社へと続く細道へと進み、神社まで私を導いてくれた。
 一緒にお参りをしてから木陰で涼んでいる私に、彼は淡く薄い桃色の布で出来た小さなものを見せてくれた。

「これは……?」
「お守りだよ。記憶が戻るようにと、君のおっちょこちょいが治るようにってね。お皿が一日一枚は減っているからね」

 そう笑って彼は話す。
 反論できないのがものすごく心苦しい。
 誰が見ても分かるくらい落ち込む私の手を彼は取ると、笑いを堪えるように口を開いた。

「ごめん、ごめん。でも鷹華のそんなところ、結構気に入ってるんだ。困ってないか気にかけてくれるところも」
「そんな言い方ずるいです……。でも、どうして私にこんなに良くしてくださるのですか?」
「それは君が――いや、そろそろ店を開ける時間だよ。行こうか」
「えっ?! むむっ……もしかして逸らしていますか?」
「違うよ。困ってる子はほっとけないんだよ……そんな信用出来ないみたいな顔はしないでよ」
「いえ……していませんよ」
「鷹華、今度海に行こうか。君と出会った場所にさ。だから機嫌を直してくれないか」

 そう言って彼は私の手にお守りを握らせると困った様に笑った。
 困らせるつもりはなかった分ちょっと心がもやっとしたけど、私のことを考えてくれるのは嬉しくて頷いた。
 何て書いてあるかはまだ読めないけど、お守りに刺繍してある文字をなぞった。
 今の私には、彼の優しさがただただ嬉しいのです。
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