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30:あなたと同じ世界を(1)
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「ミラさん」
私は涙を拭い去り、しっかりとした声で呼びかけた。
「……はい」
いままで俯いていたミラさんが顔を上げる。
「正直に言って、私に悪魔王の呪いが祓えるかどうかはわかりません。けれど、出来る限りを尽くします」
「ありがとうございます! よろしくお願いいたします!!」
ミラさんは勢いよく頭を下げた。
この反応には、私のほうが戸惑ってしまった。
「……浄化できます、と断言したわけではないのに。こんな曖昧な返事で良かったのでしょうか」
「もちろんですよ。むしろ、安請け合いしないからこそ信頼できます。リーリエ様は私たちの望みを託すに相応しいお方だと確信しました」
ミラさんはニコニコしている。
「……そう言われると頑張らざるを得ませんね。期待に添えられたら良いのですが……努力します」
頬を掻き、小声で言う。
「申し訳ありません、いまなんと仰いましたか? 精霊たちの声のせいで聞こえなくて」
ミラさんはずいっと顔を近づけてきた。
「ああ、いえ、努力しますと言っただけです。お気になさらず」
慌てて手を振ると、ミラさんは身体を引いた。
「そうですか。……ねえあなたたち、悪いけれどちょっと黙っててもらえないかしら。いま大事なお話中なのよ」
精霊たちが発する騒音に耐えられなくなったらしく、ミラさんは顔をしかめて虚空を睨んだ。
彼女の視線の先には七体の精霊たち。
あの精霊たちはミラさんが馬車に入ってきたときから、空気を全く読まずに手と手を取り合い、歌いながら踊り呆けている。
どうやらあの精霊たちが発する歌声に邪魔されて、私の声が聞こえなかったようだ。
こんなに大勢の精霊たちがいると、精霊たちが発する声は大量の情報として一気に頭の中に流れてくるため、瞬時の取捨選択が求められる。
それは一種の特殊技能と言えるかもしれない。
聞こえてくる全ての声にいちいち耳を傾けていたら情報を処理しきれず、頭がパンクしてしまう。
必要のない声は雑音として聞き流す。それが身を護る術だ。
私はもう慣れたものだけれど、ミラさんはここまで大勢の精霊たちに囲まれた経験はないらしい。
眉間に刻まれた深い皺が、情報の処理に苦戦中だと語っていた。
「こっちは真面目に懇願してるっていうのに、あなたたちときたら、調子外れな歌を歌って踊って騒いで。おかげで雰囲気ぶち壊し、真顔を保つのも苦労するのよ――ああ、わかった、わかったからいっぺんに喋らないで! 喋るなら内容を整理して、一人ずつ喋って! 耳が痛い。頭が混乱する……うう。よくこんな騒音の中、リーリエ様は平気でいられますね……大変じゃないですか……?」
ミラさんは両手で頭を抱え、情けない顔を私に向けてきた。
私は涙を拭い去り、しっかりとした声で呼びかけた。
「……はい」
いままで俯いていたミラさんが顔を上げる。
「正直に言って、私に悪魔王の呪いが祓えるかどうかはわかりません。けれど、出来る限りを尽くします」
「ありがとうございます! よろしくお願いいたします!!」
ミラさんは勢いよく頭を下げた。
この反応には、私のほうが戸惑ってしまった。
「……浄化できます、と断言したわけではないのに。こんな曖昧な返事で良かったのでしょうか」
「もちろんですよ。むしろ、安請け合いしないからこそ信頼できます。リーリエ様は私たちの望みを託すに相応しいお方だと確信しました」
ミラさんはニコニコしている。
「……そう言われると頑張らざるを得ませんね。期待に添えられたら良いのですが……努力します」
頬を掻き、小声で言う。
「申し訳ありません、いまなんと仰いましたか? 精霊たちの声のせいで聞こえなくて」
ミラさんはずいっと顔を近づけてきた。
「ああ、いえ、努力しますと言っただけです。お気になさらず」
慌てて手を振ると、ミラさんは身体を引いた。
「そうですか。……ねえあなたたち、悪いけれどちょっと黙っててもらえないかしら。いま大事なお話中なのよ」
精霊たちが発する騒音に耐えられなくなったらしく、ミラさんは顔をしかめて虚空を睨んだ。
彼女の視線の先には七体の精霊たち。
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どうやらあの精霊たちが発する歌声に邪魔されて、私の声が聞こえなかったようだ。
こんなに大勢の精霊たちがいると、精霊たちが発する声は大量の情報として一気に頭の中に流れてくるため、瞬時の取捨選択が求められる。
それは一種の特殊技能と言えるかもしれない。
聞こえてくる全ての声にいちいち耳を傾けていたら情報を処理しきれず、頭がパンクしてしまう。
必要のない声は雑音として聞き流す。それが身を護る術だ。
私はもう慣れたものだけれど、ミラさんはここまで大勢の精霊たちに囲まれた経験はないらしい。
眉間に刻まれた深い皺が、情報の処理に苦戦中だと語っていた。
「こっちは真面目に懇願してるっていうのに、あなたたちときたら、調子外れな歌を歌って踊って騒いで。おかげで雰囲気ぶち壊し、真顔を保つのも苦労するのよ――ああ、わかった、わかったからいっぺんに喋らないで! 喋るなら内容を整理して、一人ずつ喋って! 耳が痛い。頭が混乱する……うう。よくこんな騒音の中、リーリエ様は平気でいられますね……大変じゃないですか……?」
ミラさんは両手で頭を抱え、情けない顔を私に向けてきた。
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