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12:双子のパパです(2)
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「……こんな家族でごめん。町村さんも断ればいいのに、なんでノったんだ……」
悠紀くんは頭痛でも覚えたのか、眉間に皺を寄せている。
「父さん。戸川さんが困ってる。普通に挨拶して、普通に」
『おや。初対面は緊張するだろうし、意表を突いた登場で楽しんでもらおうと思ったのだが。自己満足で終わってしまったか。無念』
正孝さんと町村さんはサングラスを外した。
改めて見ると、正孝さんは眼光が鋭く、いかにも『切れ者』という雰囲気を漂わせたナイスミドルで、町村さんは妙齢の美人だった。
『では改めて、おはようみんな。いや、日本ではこんばんは、か』
正孝さんは仕事の都合で現在カリフォルニアにいる。
大変申し訳ないことに、早朝にわざわざ時間を割いてもらっているのだ。
――初めまして、戸川紬です。さきほどは驚いてしまって、何も言えず、すみません。楽しい演出ありがとうございました。そのアニメ好きなので嬉しかったです。
ホワイトボードに文字を書き、くるりと回転させてパソコンの上の小さなカメラに向ける。
『ああ良かった、わかってくれて。元ネタがわからなかったらただの奇行だからね』
「わかっててもただの奇行だ」
悠紀くんが小声で呟いた。
『そちらの居心地はどうかな?』
机の上で手を組み、私を見つめて尋ねる正孝さん。
――おかげさまで、皆さんとっても良くしてくれています。本当にありがとうございます。
私はホワイトボードを両手で持ったまま頭を下げた。
『どういたしまして。悠紀が私に頼み事をするなんて珍しいからね。期待に応えるためにも支援は惜しまないよ』
正孝さんは微笑んだ。
『私は海外にいるから直接会うことはできないけれど、何か問題があれば執事の森田に言いなさい。遠慮はいらないから』
――ありがとうございます。
『礼なら悠紀に言ってやってほしい。話は変わるけれど、戸川さんはとても優秀だね。この成績なら奏城学園の転入試験も余裕で受かるだろう』
正孝さんはクリップで閉じられた資料を取り上げて言った。
――転入ですか?
私は目をぱちくりさせた。
『もちろん引き続き三駒に通いたいというなら無理強いをするつもりはない。でも、うちの双子と新しく学校生活を始めるというのも楽しいんじゃないかな』
ああ、正孝さんは知ってるんだ。
私が声を失ったのは高校入学前、春休みのことで。
声が出ない私は入学初日に行われた自己紹介で注目を浴び、それからずっと腫れ物のように扱われてきた。
虐められているわけではない。
話そうと思えば話せる相手はいるし、不意に「二人組を作って」と言われても誰かが組んでくれる。
ただ、学校が終わってまで一緒にいよう、と言ってくれるような親しい友人がいないだけ。
いや、放課後に遊ぼうと誘われたことはあったんだけど、家事があるから、買い物に行かなきゃ行けないからと断り続けてたらそのうち誘われなくなっただけか。
お小遣いは一応もらえてたけど、文房具や参考書を買ったら吹っ飛んじゃうような額だったし。
財政的にも時間的にも、放課後にケーキなんてとても無理だったもんな……。
悠紀くんは頭痛でも覚えたのか、眉間に皺を寄せている。
「父さん。戸川さんが困ってる。普通に挨拶して、普通に」
『おや。初対面は緊張するだろうし、意表を突いた登場で楽しんでもらおうと思ったのだが。自己満足で終わってしまったか。無念』
正孝さんと町村さんはサングラスを外した。
改めて見ると、正孝さんは眼光が鋭く、いかにも『切れ者』という雰囲気を漂わせたナイスミドルで、町村さんは妙齢の美人だった。
『では改めて、おはようみんな。いや、日本ではこんばんは、か』
正孝さんは仕事の都合で現在カリフォルニアにいる。
大変申し訳ないことに、早朝にわざわざ時間を割いてもらっているのだ。
――初めまして、戸川紬です。さきほどは驚いてしまって、何も言えず、すみません。楽しい演出ありがとうございました。そのアニメ好きなので嬉しかったです。
ホワイトボードに文字を書き、くるりと回転させてパソコンの上の小さなカメラに向ける。
『ああ良かった、わかってくれて。元ネタがわからなかったらただの奇行だからね』
「わかっててもただの奇行だ」
悠紀くんが小声で呟いた。
『そちらの居心地はどうかな?』
机の上で手を組み、私を見つめて尋ねる正孝さん。
――おかげさまで、皆さんとっても良くしてくれています。本当にありがとうございます。
私はホワイトボードを両手で持ったまま頭を下げた。
『どういたしまして。悠紀が私に頼み事をするなんて珍しいからね。期待に応えるためにも支援は惜しまないよ』
正孝さんは微笑んだ。
『私は海外にいるから直接会うことはできないけれど、何か問題があれば執事の森田に言いなさい。遠慮はいらないから』
――ありがとうございます。
『礼なら悠紀に言ってやってほしい。話は変わるけれど、戸川さんはとても優秀だね。この成績なら奏城学園の転入試験も余裕で受かるだろう』
正孝さんはクリップで閉じられた資料を取り上げて言った。
――転入ですか?
私は目をぱちくりさせた。
『もちろん引き続き三駒に通いたいというなら無理強いをするつもりはない。でも、うちの双子と新しく学校生活を始めるというのも楽しいんじゃないかな』
ああ、正孝さんは知ってるんだ。
私が声を失ったのは高校入学前、春休みのことで。
声が出ない私は入学初日に行われた自己紹介で注目を浴び、それからずっと腫れ物のように扱われてきた。
虐められているわけではない。
話そうと思えば話せる相手はいるし、不意に「二人組を作って」と言われても誰かが組んでくれる。
ただ、学校が終わってまで一緒にいよう、と言ってくれるような親しい友人がいないだけ。
いや、放課後に遊ぼうと誘われたことはあったんだけど、家事があるから、買い物に行かなきゃ行けないからと断り続けてたらそのうち誘われなくなっただけか。
お小遣いは一応もらえてたけど、文房具や参考書を買ったら吹っ飛んじゃうような額だったし。
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