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29:人気者の登校風景(2)
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「奏城って、本物のお金持ちの子どもが通う学校でしょう。私は完全に場違いだよね。『この貧乏人!』とか言われて濡れた雑巾を顔面に投げつけられたりしたらどうしよう。髪を縦ロールにしたお嬢様に『このブランドはどこのものかおわかりになって?』クイズとか出されたら正解できる気がしない」
割と本気で悩んでいたのだけれど、亜紀くんは「ぶはっ」と噴き出した。
「何その偏見。確かに幼稚部から通ってる奴は100%金持ちの子どもで間違いないけど、それを言うならオレも悠紀もそうだし。オレらが一度でも紬ちゃんに酷いことしたことある?」
「……ないです」
家でも外でも甘やかされまくった記憶しかありません。
「だろ? 断言するけど、髪を縦ロールにして『おわかりになって?』なんて言葉遣いする奴はいねーし、ブランド品当てクイズを出す奴もいねーよ。居たらただのイタイ奴だよそいつ。大丈夫大丈夫」
亜紀くんは私の頭をわしわし撫でた。
「ここに味方が二人もいるんだからさ。もし誰かに意地悪されたら言って。オレは人脈が広いから、腕っぷしの強い奴も頭の良い奴も呼べる。なんかあったらすぐ『戸川紬を守り隊』を結成して現場に飛んでくから、安心してよ」
亜紀くんはニコッと笑った。
悠紀くんは笑いはしなかったけれど、異論はないとでも言いたげに、じっとこっちを見ている。
「……ありがとう」
二人のおかげで肩から力が抜けた。
耳を澄ませて女子生徒たちの会話を聞いてみると、車やブランド品ではなく、夏休み中に出された数学の課題について話していた。
生まれも育ちも違うかもしれないが、彼女たちも自分と同じ高校生なのだ。
「そうだね。変に気負うことないよね。心強い味方が二人もいてくれるんだもの」
微笑む。
「そうだよ。気楽にいこう、気楽に」
ぽんぽん、と私の頭を叩く亜紀くん。
スキンシップや気遣いは嬉しいけれど、ちょっぴり視線が怖い。主に女子の。
周りの生徒の視線がこちらに集中しているんですが。
右斜め前方を歩いている女子グループなんて、振り返ってこっちをガン見してるんですが!
「ねえあの二人そっくりじゃない、しかも超イケメン」
背後からそんな声が聞こえて、私はぴくりと耳を動かした。
あんた知らないの、あの子たち双子だよ、一年生で、あの鴻上真紘の弟だよ。えーうそ、そうだったの? あーでも言われてみれば似てるかも。すっごいイケメンだし。あんたさっきからイケメンイケメンってそればっかりだね、わかるけどはしゃぎすぎ。聞こえたらどうするの。
振り返ると、目が合った上級生らしき二人は静止画のようにぴたりと動きを止め、そそくさと逃げて行った。
いまの声、悠紀くんたちにも聞こえてたのでは?
ちらりと隣を見ると、悠紀くんは右斜め上空にある雲を見上げていた。
いや、彼は本当に雲を見ているのだろうか。
また何か変なもの――幽霊とか妖怪とかを見てたりして。
割と本気で悩んでいたのだけれど、亜紀くんは「ぶはっ」と噴き出した。
「何その偏見。確かに幼稚部から通ってる奴は100%金持ちの子どもで間違いないけど、それを言うならオレも悠紀もそうだし。オレらが一度でも紬ちゃんに酷いことしたことある?」
「……ないです」
家でも外でも甘やかされまくった記憶しかありません。
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亜紀くんは私の頭をわしわし撫でた。
「ここに味方が二人もいるんだからさ。もし誰かに意地悪されたら言って。オレは人脈が広いから、腕っぷしの強い奴も頭の良い奴も呼べる。なんかあったらすぐ『戸川紬を守り隊』を結成して現場に飛んでくから、安心してよ」
亜紀くんはニコッと笑った。
悠紀くんは笑いはしなかったけれど、異論はないとでも言いたげに、じっとこっちを見ている。
「……ありがとう」
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スキンシップや気遣いは嬉しいけれど、ちょっぴり視線が怖い。主に女子の。
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右斜め前方を歩いている女子グループなんて、振り返ってこっちをガン見してるんですが!
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背後からそんな声が聞こえて、私はぴくりと耳を動かした。
あんた知らないの、あの子たち双子だよ、一年生で、あの鴻上真紘の弟だよ。えーうそ、そうだったの? あーでも言われてみれば似てるかも。すっごいイケメンだし。あんたさっきからイケメンイケメンってそればっかりだね、わかるけどはしゃぎすぎ。聞こえたらどうするの。
振り返ると、目が合った上級生らしき二人は静止画のようにぴたりと動きを止め、そそくさと逃げて行った。
いまの声、悠紀くんたちにも聞こえてたのでは?
ちらりと隣を見ると、悠紀くんは右斜め上空にある雲を見上げていた。
いや、彼は本当に雲を見ているのだろうか。
また何か変なもの――幽霊とか妖怪とかを見てたりして。
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