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30:人気者の登校風景(3)
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「悠紀く――」
「おはよう日向!」
明るい挨拶が私の呼びかけを掻き消した。
斜め後ろから近づいてきたのは、はち切れんばかりの逞しい筋肉を持った男子生徒だった。
身長は多分180センチを越えている。
常人離れした筋肉も相まって、近づかれると壁のような圧迫感があった。
私は思わず怯んで一歩引いてしまったけれど、亜紀くんは彼の前へ進み出た。
「おはよーかっちゃん! 髪切ったんだな! いかにも主将! って感じ。気合入ってて格好良い! オレ、その髪型凄く好き!」
刈り上げた髪に一本線のレザーアートを入れている男子生徒に向かって、亜紀くんはびっと親指を立てた。
「おお、この髪型の魅力をわかってくれるか! ありがとう!」
亜紀くんと男子生徒は朗らかに笑い合っているけれど、何かの部活の主将ってことは、少なくとも二年生だよね!? 先輩にタメ口!?
「あー、亜紀くんだー、おはよう」
続いて美少女二人組が寄ってきた。
一人は黒髪ロングの日本人形のような美少女、もう一人は明るい茶髪を巻いたビスクドールのような美少女だった。
「久実《くみ》先輩。おはようございます。夏風邪は治りました?」
「うんもうばっちり。心配してくれてありがとう。やっぱり亜紀くんは優しいね」
「そんな、それほどでもありますけど」
「あははは」
「ねえ亜紀くん、聞いて聞いて、私、あの後野本くんと付き合うことになったの!」
「本当に!? 良かったですね麻友《まゆ》先輩!!」
「亜紀くんのおかげだよ。亜紀くんが応援してくれなかったら私――」
「何言ってるんですか、先輩が頑張ったからですよ! おめでとうございます! 結婚式には呼んでくださいね!」
「もー、やだ、何言ってるの」
まんざらでもなさそうな顔でビスクドールのような美少女がはにかんでいると、今度は男子が近づいてきた。
「おはよう亜紀! 『ブルーナッツ』見た!?」
「おーおはよテツ! 見た見た! あれはマジで神アニメだったわ! 勧めてくれてありがとう!」
「亜紀くーん!」
「日向ー!」
「日向くん!」
次々と人が押し寄せ、あれよあれよという間に亜紀くんの周囲に人垣が築かれていく。
私と悠紀くんは空気を読んで少し下がり、離れた場所からその様子を見ていた。
亜紀くんが人気者だっていうのは知ってたけど、ただ歩いてるだけでこんなに人が寄ってくるものなのね。
しかも男女問わず、上級生まで含むとは、亜紀くんおそるべし。
それに比べて悠紀くんに近づこうとする人は誰も……なんて、悲しい現実には触れちゃダメだよね、うん。
私たちは先に行こうかと、手持ち無沙汰な様子で突っ立っている悠紀くんに言おうとしたそのときだった。
「ねえ亜紀くん、その子誰? さっき弟くんと一緒に車から下りてきてたよね? どういう関係なのか聞いてもいい?」
ビスクドールのような美少女――麻友先輩?――の言葉により、亜紀くんを取り巻いていた生徒たちが一斉に私を見た。
十数人に見つめられた私は反射的に身構えた。
敵意や悪意はないとはいえ、合わせて二十を越える瞳に見つめられるというのは、結構なプレッシャーだ。
「おはよう日向!」
明るい挨拶が私の呼びかけを掻き消した。
斜め後ろから近づいてきたのは、はち切れんばかりの逞しい筋肉を持った男子生徒だった。
身長は多分180センチを越えている。
常人離れした筋肉も相まって、近づかれると壁のような圧迫感があった。
私は思わず怯んで一歩引いてしまったけれど、亜紀くんは彼の前へ進み出た。
「おはよーかっちゃん! 髪切ったんだな! いかにも主将! って感じ。気合入ってて格好良い! オレ、その髪型凄く好き!」
刈り上げた髪に一本線のレザーアートを入れている男子生徒に向かって、亜紀くんはびっと親指を立てた。
「おお、この髪型の魅力をわかってくれるか! ありがとう!」
亜紀くんと男子生徒は朗らかに笑い合っているけれど、何かの部活の主将ってことは、少なくとも二年生だよね!? 先輩にタメ口!?
「あー、亜紀くんだー、おはよう」
続いて美少女二人組が寄ってきた。
一人は黒髪ロングの日本人形のような美少女、もう一人は明るい茶髪を巻いたビスクドールのような美少女だった。
「久実《くみ》先輩。おはようございます。夏風邪は治りました?」
「うんもうばっちり。心配してくれてありがとう。やっぱり亜紀くんは優しいね」
「そんな、それほどでもありますけど」
「あははは」
「ねえ亜紀くん、聞いて聞いて、私、あの後野本くんと付き合うことになったの!」
「本当に!? 良かったですね麻友《まゆ》先輩!!」
「亜紀くんのおかげだよ。亜紀くんが応援してくれなかったら私――」
「何言ってるんですか、先輩が頑張ったからですよ! おめでとうございます! 結婚式には呼んでくださいね!」
「もー、やだ、何言ってるの」
まんざらでもなさそうな顔でビスクドールのような美少女がはにかんでいると、今度は男子が近づいてきた。
「おはよう亜紀! 『ブルーナッツ』見た!?」
「おーおはよテツ! 見た見た! あれはマジで神アニメだったわ! 勧めてくれてありがとう!」
「亜紀くーん!」
「日向ー!」
「日向くん!」
次々と人が押し寄せ、あれよあれよという間に亜紀くんの周囲に人垣が築かれていく。
私と悠紀くんは空気を読んで少し下がり、離れた場所からその様子を見ていた。
亜紀くんが人気者だっていうのは知ってたけど、ただ歩いてるだけでこんなに人が寄ってくるものなのね。
しかも男女問わず、上級生まで含むとは、亜紀くんおそるべし。
それに比べて悠紀くんに近づこうとする人は誰も……なんて、悲しい現実には触れちゃダメだよね、うん。
私たちは先に行こうかと、手持ち無沙汰な様子で突っ立っている悠紀くんに言おうとしたそのときだった。
「ねえ亜紀くん、その子誰? さっき弟くんと一緒に車から下りてきてたよね? どういう関係なのか聞いてもいい?」
ビスクドールのような美少女――麻友先輩?――の言葉により、亜紀くんを取り巻いていた生徒たちが一斉に私を見た。
十数人に見つめられた私は反射的に身構えた。
敵意や悪意はないとはいえ、合わせて二十を越える瞳に見つめられるというのは、結構なプレッシャーだ。
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