少し不思議な日向くんと、一つ屋根の下で

星名柚花

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「そういえば、C組の文化祭の出し物は何するの?」

 始業式の翌朝、九月二日。
 車から下り、学舎を目指して歩きながら、私は右隣にいる亜紀くんに聞いた。

「謎解き脱出ゲーム」
「へー、いいね、面白そう!」
「第一希望がそのまま通るかどうかは今日の会議次第だけどな。うちのクラス、クイズ研究会や数研部に所属してる奴が七人もいるから、そいつらに問題考えてもらって謎解きイベントしたら面白いんじゃない? って話になってさ」
「そうなんだ。決まるといいね」
 言いながら空を見上げる。

 天気は晴れで、青空に雲が浮かんでいた。

 九月に入ってもまだ気温は高く、直射日光を浴びながら歩いていると汗が滲む。
 あと半月もしたらさすがに涼しくなるだろうか?

「おはよー」
 校門の前で三人の女子生徒が朝の挨拶を交わしている。
 彼女たちの横を通り過ぎ、私は双子と共に学園の敷地内へと入った。

「D組の第一希望は妖怪喫茶だよな。悠紀にぴったりじゃん。お前が日頃見てるものをありのまま表現できたら大入り間違いなしだ、頑張れ!」
 亜紀くんは笑顔で弟の肩を叩いてから、わざとらしく「はっ」と気づいたような声を上げ、そっと目を逸らした。

「ああ……ごめん。無理だよな。幼稚園児並みの残念な画力しかなく、工作をすれば自分の手を切り、美術は万年『1』の奴が見たものをありのまま作り上げることなんてできるわけないよな。お前が美術班なんてやったら、客は怖がるどころか謎の展示物を見て一様に小首を傾げて終了だよな」
 胸の前で拳を握り、眉間に苦悩の皺を寄せて、亜紀くんはゆっくりと頭を振った。

「オレとしたことが、本当にごめん。D組の文化祭を台無しにするところだった」
「…………」
「亜紀くん。その辺で」
 無表情の裏で悠紀くんが不機嫌になっているのを感じ取り、私は片手をあげて亜紀くんを制した。

「あ、怒った? 怒った?」
 にやにや笑いながら、ぷにぷにと弟の頬を人差し指でつっつく亜紀くん。

「もう。悠紀くんをからかうのは止めなさいっ」
 私が𠮟りつけたときだった。

「あっ、戸川さん! 亜紀くんたちも! おはよう!」
 前方で固まっていた三人の女子が私たちに気づいて寄ってきた。

 一人は髪をツインテールにした女子、クラスメイトの真田さん。
 真田さんの横に立っているのは麻友先輩。

 最後の一人は三年の関先輩だった。

「おはようございます、関先輩。麻友先輩。それから舞ちゃん。報道部の部長と部員が三人そろって、どうしたんですか?」
 亜紀くんが三人に向き直る。

 その親しげな呼び方からして、亜紀くんは真田さんとも友人であるらしい。
 この学園に通う生徒はほとんどが幼稚部からの繰り上がりだから、顔見知りが多いのも当然だった。
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