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52:大好きだから(3)
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「……過去に何かあったんですか?」
「ええ。戸川さんは……その。言いにくいのだけれど。悠紀くんに少し、変わったところがあるのは知っているかしら?」
関先輩は頬に手を当てて、軽く首を横に傾けた。
短めに切り揃えられた彼女の茶髪がふわりと揺れる。
「……はい」
関先輩が言わんとしていることに思い当たって、気分が重くなる。
「こっちに来て」
会話が他人の耳に入ることを嫌ってか、関先輩は私を桜の木の近くに誘った。
麻友先輩は空気を読み、関先輩に会釈してから立ち去った。
「変なものが見えると言ったり、授業中に叫んで立ち上がったり、何もない場所を見て怯えたり。この学園に入学した当時から、悠紀くんは不思議な言動をする子だと有名だったわ。それこそ、学年が違う私の耳に届くほどにね」
関先輩の頭上にある桜の枝には緑の葉が茂っている。
降り注ぐ陽光が関先輩にまだら模様を作っていた。
「三年前。亜紀くんと悠紀くんが中等部に上がったばかりの頃、亜紀くんたちを記事にしようとした報道部員がいたの。なにせ彼らは人並み外れて格好良い。その上、珍しい双子で、弟の悠紀くんはネタの宝庫よ。愚かな報道部員はより多くの大衆の興味を惹くため虚実を綯い交ぜにして、面白おかしい記事を書こうとしていた。もしその記事が表に出れば、悠紀くんが奇異の目で見られることをわかっていながら!」
関先輩は苛立たしげに語尾を強めたものの、すぐに声のトーンを落とした。
「でもその記事が表に出ることはなかった。亜紀くんが報道部の部室に怒鳴り込んで、全てのデータを破壊したから」
「え」
私は目を見張った。
「私は当時報道部員じゃなかったから、人づてに聞いただけなんだけれど。弟を貶められそうになった亜紀くんの怒りは凄まじかったらしいわよ。あの騒動があってから、悠紀くんの陰口を叩く人はぐんと減ったわ。亜紀くんが特別何かをしたわけじゃない。ファンが自ら動いたの」
懐かしむように目を細める関先輩を見ながら、もしかして、と思う。
もしかして円香ちゃんが真田さんに怒ったのは、円香ちゃんもまた亜紀くんの隠れファンの一人で、過去の事件を知ってたからなのかな。
円香ちゃんも花菜ちゃんも社長令嬢で、長く学園にいるから、事件を知ってても全くおかしくはない。
「ええ。戸川さんは……その。言いにくいのだけれど。悠紀くんに少し、変わったところがあるのは知っているかしら?」
関先輩は頬に手を当てて、軽く首を横に傾けた。
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「……はい」
関先輩が言わんとしていることに思い当たって、気分が重くなる。
「こっちに来て」
会話が他人の耳に入ることを嫌ってか、関先輩は私を桜の木の近くに誘った。
麻友先輩は空気を読み、関先輩に会釈してから立ち去った。
「変なものが見えると言ったり、授業中に叫んで立ち上がったり、何もない場所を見て怯えたり。この学園に入学した当時から、悠紀くんは不思議な言動をする子だと有名だったわ。それこそ、学年が違う私の耳に届くほどにね」
関先輩の頭上にある桜の枝には緑の葉が茂っている。
降り注ぐ陽光が関先輩にまだら模様を作っていた。
「三年前。亜紀くんと悠紀くんが中等部に上がったばかりの頃、亜紀くんたちを記事にしようとした報道部員がいたの。なにせ彼らは人並み外れて格好良い。その上、珍しい双子で、弟の悠紀くんはネタの宝庫よ。愚かな報道部員はより多くの大衆の興味を惹くため虚実を綯い交ぜにして、面白おかしい記事を書こうとしていた。もしその記事が表に出れば、悠紀くんが奇異の目で見られることをわかっていながら!」
関先輩は苛立たしげに語尾を強めたものの、すぐに声のトーンを落とした。
「でもその記事が表に出ることはなかった。亜紀くんが報道部の部室に怒鳴り込んで、全てのデータを破壊したから」
「え」
私は目を見張った。
「私は当時報道部員じゃなかったから、人づてに聞いただけなんだけれど。弟を貶められそうになった亜紀くんの怒りは凄まじかったらしいわよ。あの騒動があってから、悠紀くんの陰口を叩く人はぐんと減ったわ。亜紀くんが特別何かをしたわけじゃない。ファンが自ら動いたの」
懐かしむように目を細める関先輩を見ながら、もしかして、と思う。
もしかして円香ちゃんが真田さんに怒ったのは、円香ちゃんもまた亜紀くんの隠れファンの一人で、過去の事件を知ってたからなのかな。
円香ちゃんも花菜ちゃんも社長令嬢で、長く学園にいるから、事件を知ってても全くおかしくはない。
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