少し不思議な日向くんと、一つ屋根の下で

星名柚花

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64:ある雨の日の放課後に(2)

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「段ボールは日向が塗ってるやつで終わり?」
 買い出し班の男子たちと会話していた中島くんが作業の進捗状態を確認しに戻ってきた。

「うん。終わり」
 手持ち無沙汰な様子で友達と話していた装飾班の女子が答える。

「んー、どうするかな。段ボールがないんじゃすることもないし、早いけど今日は終わりにするか……」
 午後六時過ぎを差す時計を見て、中島くんは思案顔。

 悠紀くんは床に座ったまま中島くんを見上げている。

 ペンキを塗り終わって、後は乾くのを待つばかり。要するに暇なのだ。
 神谷さんも作業の手を止め、悠紀くんの隣に並んで座っていた。

「他のクラスからわけてもらえないかな?」
「そうだ、2年B組に同じバレー部の先輩がいるんだけど、先輩のところはお化け屋敷をやるって言ってたよ」
「お、テーマがお化け屋敷なら段ボールは大量に必要だよな。たくさん溜め込んでそう」
 髪を茶色に染めた男子――塚原くんがぱちんと指を鳴らし、ナイスアイディア、とばかりに発言者である女子を指さす。

「じゃあ先輩のクラスの文化祭実行委員と交渉して、今度段ボールを集めた後に、もらった分だけ返すっていうのはどう? ダメもとでさ。こうしてじっとしててもしょうがないじゃん」
「そうだね。ダメだったら今日はおとなしく帰るってことで」
「……簡単に言ってくれるけどさ、実際に先輩のクラスに出向いて交渉しに行くのは俺だよな?」
 中島くんはジト目で同じ装飾班の男女を見つめた。

「えー、だって、そこはまあ、文化祭実行委員の出番だし?」
「そうそう、他クラスとの交渉も含めて仕事だし?」
「いや、そんな仕事があるなんて聞いてないんだけど……」
「頑張れ中島! お前ならできる!」
 塚原くんは無責任な笑顔で中島くんの肩を叩いた。

「調子のいいこと言って……はあ。わかったよ。行ってくればいいんだろ、行ってくれば」
「あっ、ちょっと待って」
 中島くんが後頭部を掻きながら動き出そうとしたそのとき、中島くんと話していた女子がスカートからスマホを取り上げて言った。

「友達から連絡が来た。ここ数日雨が続いて、文化祭に使う資材を集めに行くのが難しいって誰かが先生に言ったみたい。いま先生たちが食堂に布とか色画用紙とか段ボールとか運び込んでるって。食堂に行けば段ボールがもらえるみたいだよ!」
「本当に!?」
 装飾班のメンバーは揃って気色を浮かべた。

「大量に段ボールが確保できれば、もうわざわざ集めに行かなくて済むじゃん!」
「ラッキー、行こう!」
「おい、日向も手伝え! 行くぞ!」
「わかった」
 それまで黙って装飾班たちのやり取りを見守っていた悠紀くんが立ち上がる。

「じゃああたしも――」
「いや、神谷さんはいいよ。まだ作業が終わってないだろ? 力仕事は男に任せて」
 真紘さんと比べるとだいぶ不器用に感じるウィンクをしてから、塚原くんは悠紀くんの背を押して教室を出て行った。

「…………」
 不満そうに軽く唇を尖らせて、神谷さんは浮かせていた腰を下ろした。
 そしてカッターを握り、再び段ボールの切断作業に戻る。

 私は教室の前方から一部始終を見ていた。

 適当な席に座り、ディスカウントショップで購入したメイド服のお尻部分に穴を開け、黒い尻尾を縫い付けている。

 この衣装のテーマは『猫娘』。
 給仕用のメイド服に合わせ、黒い猫耳つきのカチューシャもばっちり用意している。
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