少し不思議な日向くんと、一つ屋根の下で

星名柚花

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89:大歓迎(2)

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「なあ、手を掴んでていいのか? おれの能力を知ったときはすぐ手を離したじゃん。記憶を読まれるのは嫌なんだろ」
「いいよ。玲央を受け入れるって決めたときから、この家で暮らす全員、とっくに覚悟はできてんの。そもそもよく考えたらオレ、清く正しく生きてるし。玲央に読まれて困るような記憶なんてないんだよ」
 玲央くんの手を掴んで玄関ホールを歩きながら、亜紀くんはにっと笑った。

「……お前が3D美少女Akikoの正体だって誰かに言ってもいい?」
「それはダメ」
 亜紀くんはぴしゃりとそう言ってから、大広間の前で止まった。

「はい。ここがうちの大広間。開けて」
 亜紀くんは玲央くんの手を引っ張っていたその手で真鍮製のドアノブを指さした。

「……おれが?」
「そう」
 何故? という顔をする玲央くんに、こくりと頷く亜紀くん。
 この後の展開を知っている私は悠紀くんと顔を見合わせて笑った。

「…………」
 玲央くんは眼鏡の奥の黒瞳でしばしためらうようにドアノブを見つめた後、扉を開けた。

 瞬間、けたたましい音が一斉にさく裂し、色とりどりの紙テープが玲央くんめがけて降り注いだ。

「!?」
 びくっと玲央くんの肩が震え、

『お帰りなさいませ玲央様ー!!!』

 ドンドンパフパフー!!
 お手伝いさんたちの声と共に、騒々しい音楽が鳴った。

 飾り付けられた大広間にはクラッカーや楽器を手にしたお手伝いさんたちがずらりと並んでいる。

 今回の参加メンバーはぴったり十人。
 男性である執事の森田さんと、お仕着せを着た女性のお手伝いさん九人だ。

「………………?」
「お荷物をお預かり致します」
 佐藤さんは頭や肩に紙吹雪を乗せた玲央くんが固まっている隙に鞄をさっと取り上げ、大広間を出て行った。

 残り八人となった女性のお手伝いさんたちは、クラッカーや楽器をテーブルの上に置くや否や玲央くんの元に殺到した。

「まーイケメン! 大変だわ、新たなイケメンが降臨したわ! この家にはイケメンしかいないわよどうしましょう!」
「なんて働き甲斐のある職場なのかしら! 今日もお掃除頑張っちゃう!」
「まあまあ、この子ほんとにイケメンじゃない」
「ええそうね、真紘様も超イケメンだけれど、真紘様とはまた違う系統のイケメンよ! 真紘様が白鳥の美しさだとしたら玲央様は野生の狼の美しさね!」
「ああっ、わかる! わかるわ! ちょっとした仕草にも気品を漂わせる優雅な真紘様に対して、玲央様はワイルドな感じ!」
「あらっ、ピアス穴がたくさん! これはワルね!? あなた好青年に見せかけて実はワルだったでしょう!? 隠してもダメよ、おばちゃんにはわかるのよ!」
「何を言ってるのみんな、そんなことより大事なことがあるでしょう!? 歓迎の挨拶という名目で堂々とイケメンにボディタッチする絶好の機会なのよ!? じっくり鑑賞するのは後よ後!」
「この機を逃すな!」
「触れ触れ!」
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