絶対ヒミツの化け男子

星名柚花

文字の大きさ
27 / 30

27:頬にキス

しおりを挟む
「…………」
 実は私、一つ思いついたことがあるんだよね。
 もしかしたら、この方法なら、狸から人間に戻れるかもしれないって。
 
 ――よし、やってみよう!
 私は丸まった狸の背中を見て、意を決した。

「ねえ豆田くん。狸になったときって、ただ早く人間に戻ることを祈りながら待ってるだけ?」
「だけって。そうだけど、なんでそんなこと聞くんだ?」
「試してみたいことがあるんだけど、いいかな? 何しても怒らない?」
「内容による。暴力とかは嫌だ」
 狸が一歩後退する。

「それはないよ。そんなことすると思われてるなんて心外」
 頬を膨らませると、
「嘘だよ。折原がそんなことするわけねーからな」
 と、狸は笑った。ように見えた。

「何する気か知らねーけど、どうぞ」
「じゃあ目を閉じて」
「?」
 指示通りに、狸は目を閉じた。
 私は床に手をつき、ほとんど這いつくばるような格好で狸の鼻先にキスをし、目を閉じた。

 すると。

 ぽんっと、聞いたことのある音がした。
 すぐに回れ右して身体を丸め、目を両手で覆う。

 間違っても、いまの豆田くんを見てはいけない。
 それがお互いのためだし、彼の裸を見たなんて言ったらファンにも殺される。

「も、も、戻っ……!?」
 背中越しに聞く豆田くんの声は驚きに満ちていた。

「戻った!? 成功したんだね!? 良かった、廊下に出てるからその間に服着てね!」
 急いで教室を出て、扉を閉める。
 数分して、豆田くんが「もういいよ!」と言ったため、私は教室に戻った。

「なんでキスしたら戻るってわかったんだ!?」
 豆田くんは興奮気味に尋ねてきた。

「わかったんじゃなくて推測だよ。『人間の姿で動揺したら狸になる』なら、その逆もありなんじゃないかなって。可能性に賭けてみたの」
 私だったら、豆田くんに不意打ちでキスされたらめちゃくちゃ動揺するもん。
 恋人でもないのにキスをするなんて、唇だったらアウトだけど、鼻先ならセーフだよね?
 ……多分。

「でも良かった、豆田くんが動揺してくれて。これで動揺しなかったら私何やってるんだって感じだもんね」
 苦笑して頬を掻く。

「でも一回限りのことだと思うし、これからも通用するとは思わないほうがいいと思う」
「……いや、これからも動揺しまくると思う……」
「え? いま何て?」
 豆田くんが俯いて、小声で何か言ったけれど、聞こえなかったため、私は顔を近づけた。

「とにかくだ!」
 豆田くんは大声を出して、強引に話題を打ち切った。

「無事にこうして戻れたわけだし、見たのか見てないのか、川辻に話を聞きに行こう!」
 豆田くんが拳を握ったとき、予鈴が鳴った。
 昼休み終了五分前を告げるチャイム。

「……五時間目が終わったら、だね」
「だな」
 拳を解いて、豆田くんは頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

愛を知りたがる王子様

広原琉璃
児童書・童話
この学園には、『王子様制度』が存在する。 主席入学で顔も良い、そんな人が王子様になるのである! ……という、ぶっとんだ制度がある私立の女子中学校へ進学した少女、大沢葵。 なんと、今年度の『王子様』に任命されてしまった。 オレ様生徒会長な、流華。 クールな放送部部長、ミナツ。 教師で王子、まお。 個性豊かな先輩王子様と共に、葵の王子様生活が、今始まった……!? 「いや、あの、私は『愛ある物語』が知りたいだけなんですけどー!」 第3回きずな児童書大賞で奨励賞を頂きました、ありがとうございます! 面白いと思ったらお気に入りや感想など、よろしくお願いいたします。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

君との恋はシークレット

碧月あめり
児童書・童話
山田美音は、マンガとイラストを描くのが好きな中学二年生。学校では黒縁メガネをかけて地味に過ごしているが、その裏で人気ファッションモデル・星崎ミオンとして芸能活動をしている。 母の勧めでモデルをしている美音だが、本当は目立つことが好きではない。プライベートでは平穏に過ごしたい思っている美音は、学校ではモデルであることを隠していた。 ある日の放課後、美音は生徒会長も務めるクラスのクールイケメン・黒沢天馬とぶつかってメガネをはずした顔を見られてしまう。さらには、教室で好きなマンガの推しキャラに仕事の愚痴を言っているところを動画に撮られてしまう。 そのうえ、「星崎ミオンの本性をバラされたくなかったら、オレの雑用係やれ」と黒沢に脅されてしまい…。

処理中です...