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失った記憶を辿りて
記憶を失ったとは自覚できる。それでも失った記憶を取り戻せない
次の日、結界の外に出てみることになった。
『何かあったら助けを呼ぶといい。氷雨の友人だからこの山で無駄に死なせることはしないからね』
「ありがとうございます」
とはいえ怪我をする可能性も高い。懐に用意した火防の霊符を着物の上から確かめて目を瞑った。気配を辿る間も無く、苛烈な神気が近づいてくる。目を開けると数尺先に騰蛇が現れた。警戒をして私の前に出てくれている影縄の肩に手を置く。
「影縄、大丈夫だから後ろに居てくれないか?」
背中を斬られた私にとって、背後を預けられるのは影縄だけだ。騰蛇の神気は恐ろしいが、影縄が後ろに居てくれれば安心して話をすることができる。
「……承知しました」
影縄がゆっくりと私の背後に来たのを確認すると、真っ直ぐと騰蛇を見据えた。騰蛇の顔には戸惑いの感情が露になっている。
「蛍火……いや、秋也。俺のことを覚えていないのか……?」
騰蛇に事実を突きつけるのが何故か苦しい。それでも嘘を吐くことは出来ない。
「残念ながら……騰蛇殿、私は貴方のことを知らない。それに貴方は、私を疎ましく思い部下に私を殺させようとした男の式神だ。手放しで信用することなど出来ない」
騰蛇の瞳が揺れると、唇を強く噛んで俯いてしまった。
秋也は騰蛇の心を傷つけたことに深い罪悪感を覚えていた。だがどうすることも出来ない。どうして私は彼のことを覚えていないのだろうか。覚えていればこの胸のわだかまりは無かっただろうに。
気まずく長い沈黙が流れる中、どこからか巫女の声がした。
『十二天将騰蛇、その少年は貴方の存在と印象が希薄で忘れた訳ではないようですよ。意図的に記憶を消されたと考えた方がよいでしょう』
「龍神の巫女よ。それはどういうことだ?」
騰蛇の問いに答えたのは巫女でなく龍神であった。
『僕が思うに、十二天将との絆を記憶を消すことで無かったことにしたのだろう。そうすれば、その子供が君と契約しようと思わなくなるだろ。君は十二天将の中でも驚恐を司るのだから。まあ、全部憶測だから一旦我が宮に来てくれないかい? 勿論君の神気を抑えてね。巫女が怯えるかもしれないから』
騰蛇が舌打ちすると指を鳴らした。瞬く間に神気の眩い光が包み込んでいく。やがて神気の中から、秋也程の年の姿になった騰蛇が姿を現した。
「これでいいか龍神よ」
『まあ及第点かな。さあ皆此方に来てくれ』
三人で龍神の神域に入る。いまだに騰蛇を警戒しているのか、影縄が私の肩に手を添えると自分の方に引寄せる。心配してくれることはありがたいものだが、過保護なのではないだろうか。絆を深めても影縄には未熟者だと思われているから、仕方がないのだろうか。秋也は苦笑しながらも、影縄の方に身を寄せた。
重傷を負った際に運ばれた宮に来ると巫女の前に正座するように言われた。
「秋也殿、目を瞑ってください」
言われるままに目を瞑ると巫女が私の頭に手を添える。優しい手つきであるが、少し嫌な予感がするのは気のせいか。巫女の霊力が直接頭に流れ込んで来たとき、唐突に意識が闇に沈んだ。
巫女が手を添えた途端、主が崩れるように倒れる。床に主が叩きつけられる寸前、私は主を支えた。
「巫女殿何を……!」
「意識があるままで、記憶を探るのは拷問のようなものです。なので眠ってもらいました」
巫女が騰蛇を手招きすると、騰蛇はゆっくりと巫女の元に来た。
「陰陽師の式神であるのならば同調の仕方は分かりますね? 私と同調してください」
同調とは呼吸、鼓動の速度を合わせて霊気の波動を合わせることであるらしい。私はしたことがなかったので、それが何の意味を持つのかなど知りもしない。
「同調して何をする気だ」
「記憶を探る為に必要なのです。ほら早く」
巫女に手を掴まれ嫌そうな顔をしていたが、騰蛇は巫女の霊気との同調を始める。巫女の霊気が騰蛇の神気と寸分違わぬ波動になると、巫女は再び主の額に触れる。怯えたような顔で身動ぎする主様を私は抱き締めた。
どれくらい経ったであろうか。巫女が手を離した途端、主様が苦しそうに咳をした。背を擦っていると、主様の口元に血が付いているのに気づく。
「巫女殿……これは一体……!」
巫女殿とはなるべく敵対はしたくないが、主様を傷つけるものは許しておけない。私が睨むと、巫女が困ったような顔をした。
「安心してください。この宮では身体の負担はすぐに癒えます。ですが……思ったより負担が重かったようですね。影縄殿すみません。そしてこの子が目覚めたら謝罪しましょう」
巫女は憂い気に主様を見つめると顔を上げた。
「はっきり言いますが、秋也殿は呪詛か何かで騰蛇殿に関する記憶を消されています。いや、消されたというより墨で塗りつぶされたが如く隠蔽をされています」
騰蛇は目を大きく見開くと、拳を握り締めた。
「その呪詛を取り除こうと少し試しましたが、血を吐くほどの負担がかかっているようですね。全部の記憶をここで取り戻そうとすれば、この子は死ぬでしょう」
「ならば……蛍火は俺に関する記憶を失ったままなのか」
巫女は首を横に振った。
「分かりません。時間経過やこの子が術者として腕を上げれば取り戻すかもしれません。……それと呪詛の影響で、もしこの子と貴方が契約をして貴方がずっと本性のままでいた場合も、この子は血を吐いて死ぬでしょうね」
騰蛇の握り締めている拳から、血がぽたぽたと伝った。
思った以上に負担が重かったようで、主は半日経っても目覚めなかった。主の頭を己の膝に乗せて手を握る。騰蛇は黙ってそれを眺めていたが、三刻経ってから口を開いた。
「お前……名前は」
「影縄です。主様が付けてくださいました」
「あの子の呪か」
「はい」
名前というのは短い呪であるそうで、術者は式神に名前を付けることで縛るそうだ。私が「影縄」を名乗ることで、主の式神でいられる。最初は嫌だったのだが、今ではこの名前が好きだと思えるようになった。
「どうしてあの子の傍にいる?」
「どうしてでしょうね。最初は利害関係の一致でした。ですが今は離れたくないのです。あの人が成長する姿を間近で見ていたい。ただそれだけです」
騰蛇は目を細めると口元に笑みを浮かべた。
「お前がいるなら少しは安心だな。……秋也もお前のことを信頼している。俺はもうそんな信頼などされないだろうが」
寂しげな顔をする騰蛇からは驚恐の字が浮かばない。慰めて良いものかも。ただ……
「主様は…己の貴方への言動を悔やんでいたようでしたよ。ですから……今後信頼するかどうかは貴方次第かと」
騰蛇ははっと目を見開くと主の顔を見つめる。主はまだ寝息を立てていた。
「そうか……。そうかもな……」
騰蛇はぽつりと呟いた。
『がっ……あああああっ────!!!』
背中に煮えたぎった液体を掛けられて、幼い私は叫んだ。あまりにも酷く半月生死をさ迷い、1ヶ月程の意識は朦朧としていた。
「蛍火……すまない……守れなくて……」
父ではなく颯月殿でもない男が、幼い私の手を握り締めていた。その温かな手が私をこの世に引き留めているような心地がしたのだ。
『■■■……、ききょう……ごめんなさい……わたしがうまれてこなければ……ちちはおそろしいひとにならなかったのに……』
男は首を横に振る。幼い私の顔に男の涙が落ちた。
『そんなことはない。俺はお前が生まれてくれて良かったと思うし生きていてほしいと思う。だから蛍火……生きてくれ』
男の言葉に救われたのに、男の顔が思い出せない。声が誰なのかも分からない。きっと夢から目覚めればこの事も忘れるかもしれない。
「騰蛇……すまない」
秋也の胸がつきりと痛んだ。
目が覚めると影縄の姿があったが、騰蛇はどこにもいなかった。それに寂しさを覚えた時には、秋也は夢の内容を忘れてしまった。
次の日、結界の外に出てみることになった。
『何かあったら助けを呼ぶといい。氷雨の友人だからこの山で無駄に死なせることはしないからね』
「ありがとうございます」
とはいえ怪我をする可能性も高い。懐に用意した火防の霊符を着物の上から確かめて目を瞑った。気配を辿る間も無く、苛烈な神気が近づいてくる。目を開けると数尺先に騰蛇が現れた。警戒をして私の前に出てくれている影縄の肩に手を置く。
「影縄、大丈夫だから後ろに居てくれないか?」
背中を斬られた私にとって、背後を預けられるのは影縄だけだ。騰蛇の神気は恐ろしいが、影縄が後ろに居てくれれば安心して話をすることができる。
「……承知しました」
影縄がゆっくりと私の背後に来たのを確認すると、真っ直ぐと騰蛇を見据えた。騰蛇の顔には戸惑いの感情が露になっている。
「蛍火……いや、秋也。俺のことを覚えていないのか……?」
騰蛇に事実を突きつけるのが何故か苦しい。それでも嘘を吐くことは出来ない。
「残念ながら……騰蛇殿、私は貴方のことを知らない。それに貴方は、私を疎ましく思い部下に私を殺させようとした男の式神だ。手放しで信用することなど出来ない」
騰蛇の瞳が揺れると、唇を強く噛んで俯いてしまった。
秋也は騰蛇の心を傷つけたことに深い罪悪感を覚えていた。だがどうすることも出来ない。どうして私は彼のことを覚えていないのだろうか。覚えていればこの胸のわだかまりは無かっただろうに。
気まずく長い沈黙が流れる中、どこからか巫女の声がした。
『十二天将騰蛇、その少年は貴方の存在と印象が希薄で忘れた訳ではないようですよ。意図的に記憶を消されたと考えた方がよいでしょう』
「龍神の巫女よ。それはどういうことだ?」
騰蛇の問いに答えたのは巫女でなく龍神であった。
『僕が思うに、十二天将との絆を記憶を消すことで無かったことにしたのだろう。そうすれば、その子供が君と契約しようと思わなくなるだろ。君は十二天将の中でも驚恐を司るのだから。まあ、全部憶測だから一旦我が宮に来てくれないかい? 勿論君の神気を抑えてね。巫女が怯えるかもしれないから』
騰蛇が舌打ちすると指を鳴らした。瞬く間に神気の眩い光が包み込んでいく。やがて神気の中から、秋也程の年の姿になった騰蛇が姿を現した。
「これでいいか龍神よ」
『まあ及第点かな。さあ皆此方に来てくれ』
三人で龍神の神域に入る。いまだに騰蛇を警戒しているのか、影縄が私の肩に手を添えると自分の方に引寄せる。心配してくれることはありがたいものだが、過保護なのではないだろうか。絆を深めても影縄には未熟者だと思われているから、仕方がないのだろうか。秋也は苦笑しながらも、影縄の方に身を寄せた。
重傷を負った際に運ばれた宮に来ると巫女の前に正座するように言われた。
「秋也殿、目を瞑ってください」
言われるままに目を瞑ると巫女が私の頭に手を添える。優しい手つきであるが、少し嫌な予感がするのは気のせいか。巫女の霊力が直接頭に流れ込んで来たとき、唐突に意識が闇に沈んだ。
巫女が手を添えた途端、主が崩れるように倒れる。床に主が叩きつけられる寸前、私は主を支えた。
「巫女殿何を……!」
「意識があるままで、記憶を探るのは拷問のようなものです。なので眠ってもらいました」
巫女が騰蛇を手招きすると、騰蛇はゆっくりと巫女の元に来た。
「陰陽師の式神であるのならば同調の仕方は分かりますね? 私と同調してください」
同調とは呼吸、鼓動の速度を合わせて霊気の波動を合わせることであるらしい。私はしたことがなかったので、それが何の意味を持つのかなど知りもしない。
「同調して何をする気だ」
「記憶を探る為に必要なのです。ほら早く」
巫女に手を掴まれ嫌そうな顔をしていたが、騰蛇は巫女の霊気との同調を始める。巫女の霊気が騰蛇の神気と寸分違わぬ波動になると、巫女は再び主の額に触れる。怯えたような顔で身動ぎする主様を私は抱き締めた。
どれくらい経ったであろうか。巫女が手を離した途端、主様が苦しそうに咳をした。背を擦っていると、主様の口元に血が付いているのに気づく。
「巫女殿……これは一体……!」
巫女殿とはなるべく敵対はしたくないが、主様を傷つけるものは許しておけない。私が睨むと、巫女が困ったような顔をした。
「安心してください。この宮では身体の負担はすぐに癒えます。ですが……思ったより負担が重かったようですね。影縄殿すみません。そしてこの子が目覚めたら謝罪しましょう」
巫女は憂い気に主様を見つめると顔を上げた。
「はっきり言いますが、秋也殿は呪詛か何かで騰蛇殿に関する記憶を消されています。いや、消されたというより墨で塗りつぶされたが如く隠蔽をされています」
騰蛇は目を大きく見開くと、拳を握り締めた。
「その呪詛を取り除こうと少し試しましたが、血を吐くほどの負担がかかっているようですね。全部の記憶をここで取り戻そうとすれば、この子は死ぬでしょう」
「ならば……蛍火は俺に関する記憶を失ったままなのか」
巫女は首を横に振った。
「分かりません。時間経過やこの子が術者として腕を上げれば取り戻すかもしれません。……それと呪詛の影響で、もしこの子と貴方が契約をして貴方がずっと本性のままでいた場合も、この子は血を吐いて死ぬでしょうね」
騰蛇の握り締めている拳から、血がぽたぽたと伝った。
思った以上に負担が重かったようで、主は半日経っても目覚めなかった。主の頭を己の膝に乗せて手を握る。騰蛇は黙ってそれを眺めていたが、三刻経ってから口を開いた。
「お前……名前は」
「影縄です。主様が付けてくださいました」
「あの子の呪か」
「はい」
名前というのは短い呪であるそうで、術者は式神に名前を付けることで縛るそうだ。私が「影縄」を名乗ることで、主の式神でいられる。最初は嫌だったのだが、今ではこの名前が好きだと思えるようになった。
「どうしてあの子の傍にいる?」
「どうしてでしょうね。最初は利害関係の一致でした。ですが今は離れたくないのです。あの人が成長する姿を間近で見ていたい。ただそれだけです」
騰蛇は目を細めると口元に笑みを浮かべた。
「お前がいるなら少しは安心だな。……秋也もお前のことを信頼している。俺はもうそんな信頼などされないだろうが」
寂しげな顔をする騰蛇からは驚恐の字が浮かばない。慰めて良いものかも。ただ……
「主様は…己の貴方への言動を悔やんでいたようでしたよ。ですから……今後信頼するかどうかは貴方次第かと」
騰蛇ははっと目を見開くと主の顔を見つめる。主はまだ寝息を立てていた。
「そうか……。そうかもな……」
騰蛇はぽつりと呟いた。
『がっ……あああああっ────!!!』
背中に煮えたぎった液体を掛けられて、幼い私は叫んだ。あまりにも酷く半月生死をさ迷い、1ヶ月程の意識は朦朧としていた。
「蛍火……すまない……守れなくて……」
父ではなく颯月殿でもない男が、幼い私の手を握り締めていた。その温かな手が私をこの世に引き留めているような心地がしたのだ。
『■■■……、ききょう……ごめんなさい……わたしがうまれてこなければ……ちちはおそろしいひとにならなかったのに……』
男は首を横に振る。幼い私の顔に男の涙が落ちた。
『そんなことはない。俺はお前が生まれてくれて良かったと思うし生きていてほしいと思う。だから蛍火……生きてくれ』
男の言葉に救われたのに、男の顔が思い出せない。声が誰なのかも分からない。きっと夢から目覚めればこの事も忘れるかもしれない。
「騰蛇……すまない」
秋也の胸がつきりと痛んだ。
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