こじらせ悪役ループ中、異国の皇子に甘く口説かれる

ひがらく

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旧校舎 3*

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「……何か様子がおかしい」
 
 クロヴィスと密着したまま、狭い戸棚の隙間から教室の中を覗く。

 そこに現れたのは、カナトとテオだった。
 二人が入ってきた瞬間、空気がふわりと変わった。魔力を帯びた濃密な甘い匂いが、肌を撫でるように教室へ流れ込んでいた。
 クロヴィスが咄嗟に隠れた理由は、これだろう。

 それに二人の様子もおかしかった。
 カナトとテオは互いに身を寄せ、唇を重ねている。それもためらいのない荒々しい口づけだった。

 思わず目を見開く。もう、そんな関係だったのか。

「……熱烈だね。まだ付き合ってないって聞いてたけど」
 
 背後のクロヴィスは息をひそめて俺の体を抱き込んでいる。二人して狭い戸棚に座り込んでいるこの状況。今さらながらこの距離の近さに気づいて、喉が小さく鳴る。
 クロヴィスの息づかいが耳に触れ、濡れた服越しに伝わる鼓動と体温が、じわじわと背中へ伝わってきた。
 
 くらりと、しそうになる。
 
 それがカナトの放つ濃密な甘い匂いのせいか、背後から伝わる温もりのせいなのかは、もうわからなかった。
 目の前で繰り広げられる、カナトとテオの深く絡み合う口づけ。その音までもが耳の奥でじわりと広がって、脈がゆっくりと早くなっていくのを感じた。

 これは、やばい。

 腹の奥が苦しい。熱に浮かされそうになる。
 塞がれた口の中で小さく吐息を漏らすと、熱が喉へとせり上がってきた。それに耐えきれず少しだけ身じろぎをすれば、背後から囁くような声が聞こえた。

「……先生、興奮してる?」

 低くかすれた声が、耳の奥に響く。
 背筋がぞくりと震え、思わず肩が揺れた。慌てて小さく首を横に振るが、耳元でくすりと笑い声が聞こえた。

「カナトたちのアレを見て、興奮したんだ?」
「違いますっ、少しは黙って……んむっ」

 しぃ、とさらに強く口を塞がれた。

「先生こそ、声聞こえちゃうよ」
 
 この状況でふたりにバレるのは気まずい。やり過ごすのが無難だろう。この甘い匂いは辛いが、我慢するしかない。
 仕方なく強張っていた体の力を少し抜くと、クロヴィスはよりいっそう俺の身体を抱き込んで密着させてきた。俺の肩に顎を置いて、背中から腰までぴったりと。
 
 はやく終わってくれと願いながら、ふたりの熱い口づけから視線を逸らしていると、ローブの裾がそっと持ち上げられる。クロヴィスの手が腰のあたりから滑り込み、腹部をなぞってきた。そして指は肌を撫でるように上がっていき、胸の方へ。

「んんっ……!?」
 
 突起に指先が触れたとき、その刺激にまたびくりと肩が跳ねる。爪先で引っかくようにしたり、弱い力でくにくにと揉まれるたび、思わず息が乱れて力が抜けていく。
 腕を掴んで引き剥がそうとしてもびくともしない。
 
 息を飲む間もなく、口を塞いでいた長い指が唇のあいだから滑り込むように入り込み、指先が舌に触れた。

「先生、舐めて」
「んっ……ふぁ、ンっ」

 舌を弄ぶように、ちゅぷりと指の腹で擦ってくる。濡れた音が戸棚の狭い空間で響き、やけに大きく聞こえた。舌先から根本まで何度も指を擦ってくる。その刺激さえも今の俺には辛い。溢れた唾液で指が濡れ、唇からとろりとこぼれ落ちる。
 ようやく指が口から引き抜かれると、ぷはっと、息を整えるために何度か呼吸を繰り返した。

「はっ、クロ、ヴィスっ……いい加減、にっ」
「足、開いてくれる?」
「あっ……」

 足の間に入り込んだ手が、ズボンの布を探るようにずらし、下着の内側へと潜り込んできた。そのままくぼみの奥の方へ、ひたりと指先を押し当てられると、思わず身震いする。それは駄目だと慌てて腕を掴むけれど、長細い指はつぷ、と簡単に侵入してきた。

「ひっ……ッ」
 
 最初は指先だけでぐちぐちと、次第に唾液で濡れた指は根本まで潜り込んで、滑らかにナカを掻き回す。咄嗟に膝を閉じても腕を拘束するだけで、指の動きは止まってくれなかった。

「んっ……んんッ、や、やめ……ぁっ」
「先生、この状況、カナトたちには見られたくないよね。声、おさえないと」

 耳に熱い吐息をかけられながら、頭の中まで響くような意地の悪い声に腰が震える。

「ほら、もう二本入った。先生のナカ、熱くてひくついてる。ふふ、気持ちいいね……もっと、弄ってあげる」
「ぁっ、……、んっ、ふぁっ」

 ぐちゅりと、増えた指にナカを何度も擦られて、ぞくぞくと背筋に痺れが走る。出かかった声を何とか喉の奥に押しとどめていると、ちゅっと音を立てながらこめかみにキスをされた。

「後ろだけでイケそ?」
 
 こいつ……!
 俺が強く抵抗できないことをわかっていて、やっている。逃げることができない状況で、いいように遊ばれているのだと気付いて、ぐっと唇をかみ締めた。

「あく、しゅみ」

 涙目で睨みつけると、クロヴィスは口元にうっすらと笑みを浮かべた。
 カナトの甘い魔力にあてられて理性が溶けかかっているのは、俺だけではないのだろう。だがクロヴィスは抑えきれない熱を抱えながらも、どこか楽しげで余裕のある顔をしている。それがまた癪に障る。

「ね、キスしていい?」

 答えを待たずに、顎を掴まれて唇が重なった。
 ためらいもなく舌がぬるりと割って入り、口の中を舐る。舌が絡み合って、溢れた唾液が顎から首筋へと伝う。

「はっ、……ちゃんと、飲んで?」
「……ぅんっ……っぁふ」

 口の中いっぱいになっている唾液をこくん、と喉を鳴らして飲み込めば、クロヴィスはよくできましたと言わんばかりに、音を立てながら軽く唇にキスをしてくる。
 その間も、奥を弄る手は止まらない。内側のぷっくらと膨らんだ柔らかい所を、ぬちゅりと擦り付けるようにわざとらしく押し潰してくる。そのたびにぞわぞわとし、腰から背中へと気持ちのいい何かが走ってたまらなくなる。

 だめだ。

 一度覚えてしまった後ろの快楽を無意識に拾ってしまっている。深いキスをしながら絡まる舌の刺激にも耐えられなくて、狭い空間でくちゅくちゅと響く音を立てながら、高みへと追いやられるのはすぐだった。

「……せんせ、我慢しないで。イッていいよ」
「っん、んッ……――ッ!」
 
 じわじわ込み上げてきた快感に耐え切れず、びくんっ、と大きく跳ね上がった身体を押さえつけるように、強い力で抱きすくめられる。溢れそうになった声はクロヴィスの喉奥に飲み込まれて、カタリと、壁に足がぶつかって音が鳴ったが、ふたりには気づかれなかったようだった。




 カナトとテオが教室からいなくなり、俺は逃げるようにその空間から飛び出した。
 床に膝と手をついて、肩で大きく深呼吸をする。汗がぽたりと、床に落ちた。

「はっ……はぁっ、はぁ」

 狭くて濃密な空間に閉じ込められていたのはせいぜい数十分程度。だとしても耐えるには辛かった。暴れだそうとする欲をおさえて、音を立てないように息を潜めて、それなのに必死でおさえこんでる熱を意地悪く弄ばれて。よく耐えた方だと思う。
 外に出ると、ひんやりとした空気が火照った身体に心地よかった。

「ヴァレンス、せんせ」
 
 だが、後ろから足を引っ張られて、ずるりと身体が地面に横たわった。

「あっ……」
「足、かして」

 ズボンを膝まで下ろされて、腹にまわった腕が力の入らない身体を持ち上げる。そのまま四つん這いの状態で後ろから覆い被さるように抱きかかえられた。
 ぴったりと閉じた足の間に、硬くて大きな熱がぬるりと入ってきて、それが下着越しに俺のものと擦りあい、ずちゅりと動く。

「くろ、ぃす……んっ、ぁ」
「……んっ……気持ちよくなるだけ。入れないから。今日は」

 今日は、ってなんだよ。
 耳元で囁かれる声は、熱にうかされて辛そうだった。
 この辛い熱を発散させたいのは俺も同じだった。だったら、入れないのならいいのかなと、思ってしまった。そのくらい頭がぼんやりとして、思考が上手く働いていない。
 身体が疼いて、仕方がなかったんだ。

「っ、……今日、だけです、から、ね……っぁ」
 
 荒い息と、溢れた互いの体液が絡まり合い、濡れた肌と肌がぶつかり合う音。揺さぶられるだけで、擦れ合うだけで気持ちが良くて、もう何もかもがどうでもよくなってしまう。
 
「はっ、ん、せんせ、……ッ」
「……あっ、んっぁ、……あぁっ」

 ただ熱を発散させるための行為に、もう言葉はいらなかった。

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