こじらせ悪役ループ中、異国の皇子に甘く口説かれる

ひがらく

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君と迎える誕生日 5*

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「甘やかしてっていったのは確かに僕だけど、誕生日なのは先生なんだから普通は逆なんじゃ……」
「いいから、そのまま寝ていてください」

 身体を少し後退させ、クロヴィスの下半身に手を伸ばした。
 ズボンのベルトに指をかけ、カチャリと外す。前を寛げさせ下着をずらし、まだ勃ちきっていないそれを取りだしてから、やわやわと握った。

「……っ、ティラン、それはっ」
「動かないで」

 扱い方は理解している、はずだ。自分でするように、クロヴィスからされたように、見よう見まねで、だが。
 両手で、にゅくにゅくと上下に扱いていると、次第に反り立つように勃ち上がってくる。先走った液体がとろとろ溢れ出し、ぬるりとしてきた。それを指で絡ませながら何度も扱いていると、すぐに硬く、膨張してきた。

「先生、ちょっ……」
「気持ちよくないですか?」
「いや、気持ちいいけど、そうじゃなくてっ」
 
 よかった。気持ちよくなくて萎えたままだったらどうしようかと思っていたんだ。けれどまだ完全に勃ちきっていない。これだけでは刺激は足りないのだろう。
 少し躊躇うけれど、クロヴィスのならいける気がする。ごくりと喉を鳴らして、ゆっくりと身を屈ませる。先っぽをちろりと舌先で舐めると、クロヴィスは身体を震わせた。

「せ、せんせ……っ!」
 
 視線を上に向けると、クロヴィスは顔を赤くさせて口を手で覆っていた。普段は余裕のある表情が珍しく焦ったように崩れていて、その姿に思わず口元に笑みが浮かぶ。

「ねぇ、待って。そんなこと、されたらっ、……ずるいよ」
「んんっ……」
 
 落ちてきた横髪を耳にかけながら、喉奥までちゅぷりと咥え込んでいく。すごく熱くて、とても大きい。彼の身体がひくつく振動が、こちらにも伝わってくる。
 主導権を握れた感覚が何だか面白くて、そのまま舌を使いながら吸い付くようにゆっくり扱いていく。けれど咥えるには大きすぎるし、限界まで大きく開いた顎が痛くなってきた。
 こんな凶器じみたものがいつも自分のナカに入っていたのかと思うと、腹の奥がじわりと疼いてきた。

 上顎から喉にかけて擦りつけると、その刺激で自分も気持ち良くなってしまう。唾液と先走りが混ざり合って、口の中も甘く感じてきた。
 本能的に体液を甘く感じてしまうのは〈ツガイ〉だからだろうか。前にクロヴィスがいっていたことは本当だったかもしれない。
 
 口の中に溢れそうになったそれをゆっくり喉の奥へと押しやって、こくんと飲み込んだ。甘くて、あたたかい。腹の奥がじんわりと熱くなって、気持ちがいい。思考もぼんやりと溶けていく。もっと、甘くて濃いものを飲み込みたくて、ちゅぷちゅぷと吸い付いた。

「……っ、先生、気持ちいいんだけど、お願い……それ以上されると」
「……ん、?」

 伸ばされた手が、俺の髪をかき分けるように優しく撫で、耳の縁をそっとなぞってくる。それがくすぐったくて、無意識に喉奥で締め付けてしまい、クロヴィスの肩が小さく跳ねた。

「――ティラン、だめ」

 急に顎を掴まれて、顔を持ち上げられる。その拍子に唇の間からぬるりと抜けたソレは、俺の頬にぺちりと当たった。

 不思議そうに見上げると、クロヴィスは肩で息をしながら顔を真っ赤にさせている。少し戸惑ったその表情は、年相応に見えて何だか可愛くみえた。
 そういうときっと拗ねるから、口にはしないけれど。

 濡れた俺の唇を指でなぞりながら、困ったように眉尻を下げ、熱い吐息を漏らしている。

「こんなこと、どこで覚えたの……」
「……君、ですけど」

 俺だって、してやられてばかりは嫌なんだ。
 このくらいさせてくれたっていいだろう。それに目の前のことに集中していると、不安も少しずつ薄れていく。やはり俺の考えは間違いではなかった。
 このまま俺の気が済むまでやらさせてくれたら助かるのだけれど、迷惑だっただろうか。

「嫌、でしたか」
「違うんだ。すごく嬉しい。本当は止めたくなかったけど、これ以上はちょっと、我慢できそうになくて」
「我慢しなくていいじゃないですか。というよりもいつも君はしてませんよね。何を今さら」
「……あのね、先生。僕はいつも我慢してるし、手加減もしてるんだよ」
「えっ、あれで……!?」

 三日三晩抱き潰されたときも、気絶してしまうほど激しかったというのに、あれで手加減していたというのか。むしろ、あれ以上のことがあるというのか。思わず顔が強張ってしまう。

「……興奮しすぎると傷つけかねないから、自制してるんだよ」
「あっ……」

 そうか。俺は人間で、クロヴィスは竜人だ。体力も持久力も、握力だってまるで違う。片手で俺を抱えられるほどの力を持っているし、ひとつ間違えれば怪我させてしまうことだってあるのだろう。
 となると、クロヴィスは今まで俺に触れるときは力を加減してくれていたのか。
 そのどこまでも紳士的な態度に、顔が熱くなるのを抑えられない。

「だから少し焦ってしまって、まさか先生がここまでしてくれるとは思わなくて、嬉しいんだけど、やられたというか。驚いたというか。暴走してしまいそうで。ごめん、なにいってるかわからないね。ちょっと冷静にさせて。……翼が出るかと思った」

 本当に、危なかったと。クロヴィスは余裕のなさそうな顔で小さく息を吐き、前髪をくしゃりとかき上げた。
 頬はうっすら赤く、呼吸は乱れている。強がるように見せているけれど、縦長の瞳孔は開ききり、唇はわずかに震えている。
 いつもの冷静な彼からは想像できないほど、今のクロヴィスは興奮しきっていて、熱に溶けてしまいそうだった。
 
 こんなふうに、余裕を失った顔を見せるなんて。

 それを俺がさせているのかと思うと、胸がどきどきと高鳴ってしまう。
 
「理性が飛んだ僕に襲われたいなら話は別だけどさ、数日は寝込むよ?」
 
 冗談めかした声だったが、いつもの飄々とした顔は崩れている。理性の境界ぎりぎりにいるのかもしれない。

 以前クロヴィスが俺にいっていた、先生の隠れている二面性を引き出せたら嬉しい、という言葉を思い出した。
 それって、きっとこの気持ちのことだ。たった俺の行動ひとつで、彼の取り繕っている体裁が全て溶け落ちている。誰も見たことのないその表情を引き出せて、俺だけがそれを知っている。
 その事実に、どうしよもなく嬉しくなってしまった。

「それにしても驚いたな。先生って、大胆なんだね」
「……そういうふうにしたのは、君でしょう」

 俺の言葉に、白銀の瞳がぱちりと瞬きしながら、こちらを見返してきた。

「俺をこうしたのは、君だ。クロヴィス」

 もう一度、口にする。
 俺の中に強引に入り込んできて、優しく引っ掻き回して噛み跡を残していった。冷え切っていたはずの心も、身体ごと熱い体温で包み込んでくれた。言葉だけではない「好き」を何度も行動で示してくれた。
 その好意に応えたいと、はじめて思ったんだ。だから。

「好きな人の前なら、少しくらい大胆になってもいいだろ」
「……っ」

 クロヴィスは息をのんで目を大きく見開いたかと思うと、そのまま瞼を閉じ、両手で顔を覆った。そして天井を仰いだまま、動かなくなる。
 その姿がまるで息が止まっているかのように見えて、思わず肩を揺さぶった。

「クロヴィス、どうしたんです。大丈夫ですか?」
「………………大丈夫、ではない。今すぐにでも押し倒してあなたのナカを奥までぐちゃぐちゃに突いて掻き回して孕ませるほど僕のモノを何度もぶちまけて抱き潰したい」
「うわぁ」

 息継ぎもせず言い放ったその言葉に、思わず笑ってしまう。
 
「耐えている。必死に耐えているんだ。でもこれ以上煽られると、無理。お願いだから僕の理性を壊さないで」
「煽ってるつもりはないんですが……」
「先生はもっと僕のことわかってよ。あなたからキスをされただけで、ぜんぶ吹っ飛ぶんだから。それなのに、そんな言葉までいわれたら、もう」

 ――ああ、なるほど。
 クロヴィスはきっと、俺から何かをされるのが弱いんだ。自分から仕掛けるときはあんなに強引なくせに、俺から触れられると、どうしていいのか分からなくなる。

 シャツをタオル代わりに貸したときも、冷えた身体を温めようと寄り添ったときも、俺からキスをしたときも、どれも顔を赤くして、嬉しそうにしつつも少し戸惑っていた。
 思い返せば、あの反応は全部同じだ。

 そして今日は、それ以上のことをされてしまって、いわゆるキャパオーバーで、いっぱいいっぱいになっている、というわけか。
 
 なんだか、可愛いな。
 
 それに気付いてしまえば、なんだか無性に揶揄いたくなって、気づけば口が勝手に開いていた。

「では、我慢してください。今日は俺が君を好きにするので」
「えっ」

 がばっと勢いよく肩を掴まれた。突然のことに驚く。

「……僕をリードしたい?」
「一応、俺も男ですからね」

 本番はなくとも、女性相手ならそういう行為もしてきた、リードするのは慣れている。クロヴィスは俺より背は高いし体格も良い青年だが、誤差だろう……というのは本当は冗談で。性知識も少ないし、男同士のこういう行為にもまだ慣れていない。手ほどきなんてできるはずがない。
 だが想像以上の反応をしてきたクロヴィスに、たまには揶揄うのも面白いなと思った。
 
「ティランが望むのなら叶えてあげたい気持ちはあるけど……耐えられる自信がない」

 どうやら本気で困っているらしい。
 いつもならすぐに「だめ」と却下して押し倒し、自分のペースに持っていくくせに、俺の予想外の行動に、今日はさすがに戸惑っているようだ。
 表情がころころと変わる様子がおかしくて、思わず笑いが込み上げてくる。

「……くくっ、あははは」

 肩が震えて、お腹まで振動が伝わる。
 こんなに笑ったのは久しぶりかもしれない。

「……ティラン?」

 ふと視線を上げると、クロヴィスが驚いたように俺を見ていた。滅多に笑わない俺が笑ったのが意外だったのか、目を丸くして固まっている。
 その顔を見たら、さらにおかしくなって、喉の奥からまた笑いがこぼれた。

「あははっ、冗談です。真に受けないでください。俺が本当にできると思いますか」
「思わないよ。でも今、余裕ないから……その笑顔に免じて、今回の冗談は許してあげる」

 ふてくされたその顔も、可愛く見えてくる。

 こんな一面があるとは思わなかった。いつもは掴みどころのない性格をしているのに、今目の前にいる彼は、幼い頃に出会った純粋なあの子と何も変わらない。
 
「……ねぇ、ティラン」

 まだ小さく笑っている俺に、クロヴィスはそっと顔を近づけてきた。
 少し落ち着きを取り戻したのか、瞳は理性的な光を取り戻している。けれどその白銀にはまだ熱が揺らいでいて、溢れる欲を隠しきれていなかった。
 互いの息が触れ合い、キスができそうな距離まで近づく。
 
「あなたのナカに入りたい」

 腹部に添えられた手が、愛おしそうに撫でてくる。服越しだというのに、ぞくぞくと快感が浮かび上がってくるようで、腹の奥が疼く。

「ここ、奥までゆっくり入ると、柔らかくて、溶けたように熱くて、気持ちいいんだ。突く度にもっと欲しいってひくついて、掻き乱すと離してくれなくて、すべてが愛おしい。あなたのナカに、溢れるほど僕のもので満たしたいんだ」
「……っ」

 甘えるような声に、頬がじんわり熱くなってくる。

「それだけじゃない。僕の手でどろどろに溶けていく姿が愛らしくて、必死に縋りついてくるあなたが可愛くて、ずっと見ていたい。感じていたい。もっと、もっと深い所で繋がっていたいんだ。一緒に気持ちよくなりたい」

 さっきまで慌てていたのが嘘のように、いつの間にか押されている。
 気づけば唇が触れ合っていた。最初は軽く、確かめるような柔らかいキスだった。それがゆっくりと深くなっていき、互いの呼吸が重なって、舌が絡み合う。口内をゆっくりと味わうようなぬるりとした動きに、気持ち良くなっていく。

「ねぇ、だめ?」

 吐息が唇に触れる距離で、甘く、少し焦らすように囁かれる。
 そんなことをいわれてしまえば、もう抗えなかった。

「……だめじゃ、ない」

 言葉を終えるより早く、視界がぐるりと反転し、背中がシーツに沈み込む。
 クロヴィスは満面の笑みで俺を見下ろしていた。

「よかった。上にのられるのも嫌いじゃないけど、僕はこっちの方が好きかな」
「く、クロヴィス……」
「だってティランの、可愛くて気持ちのいい顔がたくさん見られるからね」

 そのしてやったりの笑顔に、完全にやられた。
 気づくのは遅く、シャツの下に潜り込んだ指先が腹を、胸を、敏感な所を探りながらゆっくりと撫で回す。首筋に唇が触れたところから、ちりっと熱が走った。そこに残るのは、甘く残るような赤い痕。
 
「大丈夫、優しくするよ。ご希望通り、少し激しくもするけど」

 少しどころではなかった。
 
 結局はクロヴィスのペースに流されて、気持ちいい以外のことが何も考えられないほどに揺さぶられた。重なり合う唇も肌も心地よく、快楽に全身を包まれたまま、思考はゆるやかに溶けていった。

 それから、どれほど時間が経ったのかもわからない。
 限界まで抱かれ、身体の奥まで満たされた感覚のまま、気絶するように意識を手放した。
 
 ――そして、日付が変わった朝。

 カーテンの隙間からやわらかい光が差し込み、部屋をあたたかく照らしている。
 ゆっくり瞼を開けると、すぐそばにクロヴィスの寝顔があった。相変わらず、陽の下が似合う綺麗な顔だと小さく笑った。静かな寝息が頬に触れ、くすぐったい。
 腕の中に閉じ込められたままのぬくもりに、そっと擦り寄る。

 動いた気配に気づいたのか、クロヴィスの長い睫毛がふるりと震え、その奥から白銀の瞳が現れる。まだ眠たげにとろんと溶けているその瞳が、ゆるやかに細められた。
 
「おはよう、ティラン」
 
 やわらかく囁く声に、ようやく実感する。
 
 何度も繰り返してきた最期の夜を越えて、ようやく新しい朝にたどり着いたのだと。

 俺の果てしないループは、終わったのだ、と。
 
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