無明剣零

青鳥翔

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世界の異変

君は…?

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 深夜0時。サインは懐中電灯を持ちながら海岸を一人歩いていた。

 「綺麗な眺めだなぁ。秘境みたいだ。」

 月明りが海に反射して一直線の光の道が出来ていた。するとサインはあるものに気づく。それは地下に続いている洞窟だった。

 「もしかしたらこの中に人がいるかもしれない。行ってみよう。」

 サインは警戒しながら洞窟の奥深くへ入って行った。

・・・

 「なんだここは。倉庫?」

 懐中電灯で照らしながら倉庫の前に来たサイン。なにやら文字が書いてあるが読めない。しかし中にあった本が目に入ったサインは解読する事にした。

───5千年前。小さな魔法の国であったこの国は存続危機に陥った。空間魔導士が生まれてしまったのだ。空間魔法。それは禁術でもあり人を救う力を持っていた。───

 「禁術で危険な魔法なのに人を救う…?」

 サインは頭を悩ましていた。書いてある内容がよく分からなかったが続けて読む事にした。

───その魔導士は最初は虐待され、地下牢生活を強いられていた。しかしある日天変地異がサウンドラの地を襲った。高さ100メートルはあるだろう津波に大地を抉る竜巻。暴風雨が大地を崩す。その地の民が逃げ惑う中その魔導士が地下牢の外へと脱出し、自らの魔法で打ち消したのだ。本来魔法は自身の体力を削る事で生み出す事が出来る。しかしその魔導士は違った。空気が…自然が味方をしていた。───

 「これは…!大きなニュースだ!すぐに大統領に知らせなければ!!…あ、ここ地下だから繋がらない。仕方ない、もう少し読んでみよう。」

───その魔導士は国王となった。これがサウンドラ王国の始まりである。しかし、サウンドラ王国の人間以外で魔法を使える人間はいなかった。その理由はただ一つ。自然と共存せず、自ら文明を発展していったからだ。彼らは自然を大切にせず、いつも森を、海を、動植物を荒らし、環境破壊を尽くした。その為初代サウンドラ国王は術式というものを彼らに教えず、結界を張る事で自国を守った。───

 「なるほど。確かに僕たちは動物のすみかを奪い、森林伐採をし都市を創っていた。それにこの国の王は切れたという事か。読んでいて心が痛くなってきた。一時期は世界中が大気汚染に悩まされて、あちこちで酸性雨が降り注いでいた。地質学を勉強していたから分かる。人間の文明は世界を壊すって事に。」

 サインは心苦しくなりながら最後のページを開く。そこにはとある少女の事が書かれていた。それは紫色の髪をした空間魔導士の存在。サインがそのページの端を見ると、今から5年前に空間魔導士が生まれたと書かれていた。

 「これって、もしかしてサウンドラ王国と大和が消えた原因なんじゃないか…?こんな古い書物に記述されるという事は王族か貴族…。上級の国民に違いない!これは手掛かりになるぞ!この本を持ち帰り、歴史学者と研究だ!!」

 本を持ったサインは地下洞窟を走り、息を切らしながら外に出た。するとすでに日が昇っており、調査団がサインの事を探していた。

 「皆さん!この書物を国に持ち帰りましょう!この国が生まれたきっかけが書かれた書物です!」

 「おお!」

 調査団は手掛かりを見つけたサインを褒め、すぐに帰国しようとした。その時彼らの後ろから一人の少女が声をかけてきたのだ。

 「貴方たちは…誰?」

 調査団がその声に気づき、振り向く。するとその少女は警戒しているのかその辺に落ちていた木の枝を持ちなにやらぶつぶつと言葉を発した。

 「紫髪の少女…。もしかして君が空間魔導士かい…!!」

 「えっ何故それを…?」

 少女は木の枝を落とす。その瞬間少女は体が震え始めた。そして調査団の真横の大地を抉り取ったのだ。その一瞬にも満たない出来事。調査団の皆が驚き怪しい術から逃げようとした。しかしサインはその少女に近づいていったのだ。

 「こ、来ないで!!貴方たちも私たちサウンドラ王国の人間を襲うんでしょ!!」

 少女は自身の周りに透明な剣を何本も浮かせ、降り注いだ。サインに迫る剣。そしてサインはその攻撃をもろに受けたが、微動だにしなかった。

 「なんで…なんで避けなかったの!!」

 少女は傷だらけのサインを見てへたり込む。するとサインは口を開いた。

 「独りぼっちの子供を放っておくことなんて出来ない。そんなに悲しい顔をしている君を助ける為に私たち調査団はここに来た。」

 「えっ。」

 その言葉を聞いた少女は敵であるのにも関わらず、体が勝手に助けを求めていた。サインの元へと駆け寄り抱きついたのだ。

 「怖かった…怖かったよ…。」

 「…もう大丈夫。僕が君の面倒を見るよ。良かったら名前を教えてくれないか?」

 「…カヤ、サウンドラ王国の王女、カヤ…。」

 「ありがとう。さぁ僕たちと共に国に帰ろう?」

 「うん…。うん!」

 これが魔力を持つ者と持たない者の出会いだった。
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