無明剣零

青鳥翔

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魔法学

得意魔法の系統

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 カヤたちが施設で魔法研究を始めてから1か月が経過した。その間カヤは火、水、風、土の4属性の魔法を研究して分かった事がある。カヤの得意な魔法系統は火である事。他の3属性は達人程度の実力しか出せなかった。

 「カヤ、1か月分の記録をして分かった事がある。カヤの無明剣は火属性と相性がいいということ。フィアーに無明剣を調べてもらったところ無明剣の大成分は酸素が占めていた。火は酸素と結合する為、攻撃系の術は火に関連する物にしよう。」

 「分かった。他の系統だと心もとないなと思っていたから火の魔法を極める!」

 そう言ったカヤだったがサインたちにとってはどの魔法も凄まじいものだった。水魔法では大陸全土に雨を降らす事も出来る上、天候を操る事も出来ていた。雷雨を呼び寄せる事も出来、水と風の複合術、スーパーセルを生み出す事も容易であった。土魔法はカヤの最も苦手な属性だったが、軽度の地震やマグマだまりを呼び寄せる事で天変地異を起こすまで成長していた。

 「たった1か月でここまで出来るとは思わなかった。俺の体力増加訓練もめげずに頑張り、走れる時間も伸びてきたしな。」

 カヤを褒めるゴズ。しかし一同の中にフィアーだけ納得いかない様子だった。魔法の影響で天候をいじれてしまうのを恐ろしく感じたからだ。その為カヤに詰め寄る。

 「カヤさん。本当に命の危険を感じた場合のみ天候をいじる事を許可する。約束出来るか?」

 「出来る!この力は天から与えられたもの。世界を貶めるような真似は絶対にしないし、フィアーさんが望まないのであれば天候をいじる事はしない。この魔法は人を救う為にしか使わないから。」

 その真剣なカヤの表情を見たフィアーは愚問だったかと自身に対してため息をつき、カヤの前に小指を出した。

 「えっとこれは…?」

 「この国に伝わる約束だ。お互いの小指を絡めて絶対に約束を守るという誓いを立てる。さぁ右手を出して。」

 「うん。」

 そして二人は約束の誓いをした。カヤはこの時素敵な仲間に出会えて良かったと感じていた。

 「さて、今日は月1のシン大統領との対談だ。もしかしたら国際緊急会議に呼ばれる可能性があるから僕もついていく。カヤ、シン大統領の元に伺いますと連絡したから、大統領室まで行こう。」

 「うん!」

 そしてサインとカヤは転送魔法により大統領室に通じる扉をくぐった。

・・・

 「やぁ二人とも。まずは1か月分の報告をしてくれ。」

 「はっ。私たち調査団はカヤの潜在能力を調べる実験を1か月かけて行っていました。カヤはのみこみがはやいのか火、水、風、土の4系統の魔法を完璧に覚え、実戦に使えるまで成長しました。そして研究員フィアーの調査の結果、無明剣の主な要素は酸素から出来ており、火との相性が良いため戦闘に関しては火属性を主に使うつもりです。以上です。」

 「なるほど。良い報告だ。ありがとう。カヤ自身は心の変化があったか?」

 シンはカヤのすました顔を見て、なにか心が決まったのかと思い尋ねる。

 「はっ。私は訓練始めのうちは魔法を扱う事がとても怖く、暴発してしまう事が多かったです。しかしシン大統領の娘、カノンさんに魔法の在り方を教えてくれました。”魔法は作品。作品は楽しみながら制作していくもの”だと。そこで忘れかけていた気持ちを思い出したのです。それは魔法で皆を幸せにしたいと。そこからは血液中を流れる魔力の感知が上手く出来るようになり、新魔法、無明剣・裂焔を生み出す事に成功しました。これからは更なる強力な魔法の習得に加え、ゴズさんの体力増加訓練を通じて体力を伸ばしたいと考えています。私からは以上です。」

 「情報ありがとう。魔法の制御が上手くいったみたいでよかった。顔立ちが前よりも凛々しい。とても有意義な時間を過ごせているみたいだな。…さて、長話もあれだ、本題に入る。実は1週間前に国際緊急会議があり、そこでおぞましい情報を手に入れた。それはブルのスパイが各国に紛れ込んでいるという噂だ。なにやら一般市民が何人も行方不明になっているらしい。つまり拉致されているという事だ。」

 真剣な顔で情報を伝えるシン。するとカヤが少し怒った表情をしながら意見したのだ。

 「私、そんな事許せないです。ただちに拉致被害者の解放をするべきです。私の国も5千年以上も前の事ですが、魔女狩りというものがありました。特異的な体質を持った魔導士は他国から忌み嫌われ、捕まったら即刻拷問、そして命を奪われたのです。私たちサウンドラ国民はなにもしていないというのに…。私がその事件の調査を受けたいです。」

 「いやだめだ。」

 「なぜです!!」

 カヤを止めようとするサインだったが、カヤは止まらない。確かにカヤの許せない気持ちは分かる。しかしまだ軍にも所属していないカヤは戦場を知らないため、シンはある事を言った。

 「カヤ、その紫髪はサウンドラ王国特有の体質らしいな。今この世界に紫髪の種族はいない。それにもし魔法が使えない状態で捕まったらどうなる。奴隷にされるのがおちだ。そんな危険な任務をたった一人に任せられるはずがない。今は各国連合軍に任せてくれ。」

 「…はい。」

 カヤは少し落ち込んでいた。一刻もはやく拉致被害者を解放したかったのだろう。しかしそれでもシンは意見を曲げなかった。

 「そしてもう一つ君たちに伝えなければならない事がある。入れ。」

 大統領室の扉が開く。するとそこには大和刀を腰に携えた白髪の若者がいた。

 「彼の名は佐助。大和の国からの移住者だ。今回なぜ佐助をこの場に呼んだのかという顔をしているが、結論から言おう。カヤの持つ無明剣は大和刀に近い形状をしている。これから先その剣で戦っていく事になると踏み、佐助を剣の師匠としてつけたいと思い、今回彼を呼んだ。」

 その瞬間カヤの顔は青ざめる。彼の祖国を潰したカヤは申し訳なさでいっぱいになりサインの後ろに隠れた。しかし彼はカヤの予想とは違う言葉をかけたのだ。

 「貴方がサウンドラ王国の王女、カヤ様ですね。事情はシン大統領から聞いています。私は祖国を恨んでいた。大和の長、大我は魔道具という怪しげな道具を他の国に売っていたのです。その大部分は軍事国家ブル。あの凶悪な国家から賄賂を貰っていた長に呆れ、私は祖国からたった一隻の小さな船に乗り、この国セキトへと流れついたのです。あの時は祖国を滅ぼして下さりありがとうございました。」
 
 「…何故そのような顔をしているの?私が恨めしくないの?」

 サインの影に隠れながら言うカヤ。その手は震えていた。

 「私は祖国だけにしか恨みはありません。貴方も見たはずです。ブルの爆撃機が大和を襲撃した光景を。あれは大和勢力がブルと手を結ぼうとして裏切られた結果なのです。あんな醜き国と手を取ろうとした祖国はもういらないと思っていた。そのため大和が消えたと報告を受けた時、心が弾んだのです。カヤ様、一度無明剣を見させて頂けませんか?」

 「わ、分かりました…。」

 カヤは一瞬にして無明剣を生み出す。実験の成果により詠唱なしで生み出す事が出来るようになった無明剣は以前より美しく洗礼された剣となっていた。

 「これは凄い…。私の刀とほぼ同じ形状をしています。これなら私の素流の剣道も通じるはずです。シン大統領。カヤ様と共に研究室に向かってもよろしいですか?」

 「カヤが望むのであれば。ただ今は休ませてあげるのが吉だ。今カヤは混乱している。本当はもっと時間をおいて話したかったが周辺国がそれを許さないからな。悪かったカヤ。私の愚行を許してくれ。」

 その言葉に頷いたカヤはなにも言わず、施設への扉を開き、サイン、佐助とともに戻っていった。

 「シン大統領。カヤ様にあのような事を伝えて良かったのでしょうか。」

 「仕方ないさ。今世界中はカヤの存在に恐怖を抱いている。それに加えブルはなにか企んでいるに違いない。この危機を回避するには誰に対しても嘘偽りのない真実を話す事が大切だ。」

 その時シン自身もこれから先起こる未来に恐怖していた。

・・・

 「皆様。私は佐助という者です。あの大和の国から逃げてきて、セキトの町はずれにある一軒家で住んでいましたが、今回カヤ様の剣術の師として参りました。よろしくお願い致します。」

 佐助は挨拶をするが、サインたちは言葉を返せなかった。祖国を恨んでいたとはいえ、その文明を壊してしまったカヤが目の前にいるというのに、全く動じていないからだ。そこでゴズが口を開く。

 「佐助といったか。俺たちはまだお前を信用しきれていない。カヤを傷つけるような真似をしたら即刻この場から立ち去れ。…といいたいところだが、大和の国の歴史を知っておきたい。」

 「分かりました。認めてもらえるよう、真実をお話しします。」

 そして佐助は大和の国の歴史を語り始めた。
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