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魔法学
空間認識
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朝。カヤたちは施設の内の道場へと入る。
「なるほど。道場?と思っていたけど、こういう事だったんだね。佐助。今日からカヤの稽古を頼むよ。勿論最初は手を抜いてね。」
「はい。気をつけます。ではカヤ様。まずはこの木刀を私に当ててみて下さい。本気で振って構いません。どんな体重の乗せ方をしているのか気になるので。」
佐助は無明剣とほぼ変わらない重さの木刀をカヤに渡す。しかしカヤは困惑していた。佐助が木刀を持っていないからだ。
「その、佐助さんはなぜ木刀を持たないのですか?」
カヤは佐助に対して訊く。しかし佐助はその質問に対しなにも答えず、ただまっすぐ本気で振り下ろすよう促した。そしてカヤが振り下ろした瞬間佐助が消えたのだ。
「えっどこに…。ひっ!」
なんとカヤの背後に佐助がいたのだ。それも音もなくカヤの首に人差し指を当てていた。
「これは大和の国に伝わる”残身”という技です。この技は気を抜かずに相手の存在範囲を見定めるというものです。大和の国には魔法は存在しません。ですが、魔力はなくても敵の行動パターンを読む事は容易。そして”残身”を起こすには3つの動作が必要です。
1つ目は強靭な精神力を持っている事。
2つ目は相手が殺意を持っている事。
3つ目は刀を体の一部と認識する事。
これらが出来ない限り残身を行う事は不可能です。」
残身。これは精神を統一させるための大和の知恵がつまった技だった。しかしその習得はとても難しく、唯一扱えた佐助も習得までに10年の歳月を要した。刀と共に生き、血のにじむ稽古をひたすら体に叩き込み初めて成功する技なのだ。
「刀を体の一部と認識する…?」
「そうです。私はこの刀がなにを言っているのか分かる。道しるべを指してくれるのです。敵のちょっとした動きが空気の揺らぎとなって刀に伝わる。その微弱な波が勝敗を決するのです。その為相手に行動を読まれないよう”極歩”という技を編み出し、まったく音をたてずに走る事を可能としたのです。これは魔法でも科学でも出来ない。人間の強さの象徴なのです。」
「残身…。極歩…。まるで空間魔法みたいですね。空間魔法は目に見えている場所なら一瞬で移動出来ます。しかし私の場合、移動した瞬間微弱な風が伝わってしまいます。それを経験と努力で生み出した佐助さんは凄いです!」
大我が佐助を一番隊隊長に任命したのも頷ける。それほど佐助の技は洗練されたものだった。すると佐助がフィアーの事を呼ぶ。
「フィアーさん。お願いしていたものは完成していますか?もし完成しているのであればカヤ様の頭に装着してほしいのですが。」
「あぁ、出来てるよ。カヤさん、これは相手の目がその赤点に映ると音が鳴る機械。佐助が稽古の時に身につけてほしいと言われたから徹夜で作ったよ。」
その機械は視線感知センサーを搭載したハチマキだった。佐助がカヤの動きを察知し見られたら音が鳴る仕組みとなっており、空間魔法の練度を高めるために佐助がフィアーに頼んだのだ。
「カヤ様。これからは空間魔法を用いながら私に攻撃を当ててみて下さい。私の探知能力は凄まじいため、最短でも私に木刀を当てるまで1か月は要するでしょう。ではかかってきてください!」
カヤはただ頷き精神統一する。この時カヤの脳内は部屋が大きな四角形に網目が張り巡らせられている状態となっていた。これは佐助の場所を敏感に捉えるためだ。そして、佐助の位置を捉えた瞬間魔法を発動させ、カヤは佐助の真上に出現する。
『いける!!』
完全に佐助の脳天を捉えたと思ったカヤ。しかし一歩及ばず回避され額のハチマキを睨まれ、音が鳴った。
「そ、そんな…。」
「やはり、空間魔法を使った瞬間微妙な風が起きていますね。まずは察知されないレベルまで持っていきましょう。多分魔力を出しすぎているのかもしれません。前に出るという式とそこで止まるという式を同時に出す事は可能ですか?」
「まだその域まで達していませんが、可能にします!」
真剣な顔で言うカヤ。すると安心したのか佐助は初めて微笑んだ。
「いきなり沢山動くと辛いと思うので、今日はここまでにしましょう。」
「はい!ありがとうございました。」
そして午前中の稽古は終わった。
・・・
「カヤちゃん。佐助の鍛練はどうだった?」
「本当に凄いと思った!魔法みたいなことを自力で出来るようにするのってとても難しい事だと思うし、私は出来る気しない。でも諦めない!」
カヤはいつも以上に元気だった。その姿を見たカノンは微笑む。
「あ、そうだ。パンケーキ食べる?実はこれ佐助が作ったらしいよ。どうやら甘党みたいで趣味でお菓子作ったりしてるみたい。」
「そうなんだ!いただきます!!…うん、おいしい!あれ、ところで佐助さんは?」
キョロキョロと周りを食堂を見渡すが、佐助の姿がない。するとカノンが口を開いた。
「滝に打たれているみたいだよ。大和では精神統一する時滝に打たれて邪念を捨てる修業があったみたい。ゴズはその独自な文化に惹かれて一緒についていったのをさっき見た。」
「確かにゴズさんそういうの好きそう。後はサインさんも研究中でフィアーさんも魔法の分析か…。って事は今はカノンさんと私しかいないんだ。」
いつもにぎわっているのに今は二人しかいない。皆出かけているみたいだ。するとカノンが「明日町に出てみない?」と言ってきた。
「え、だめだよ…。まだ私はこの国の人に信じられてないから。でも1年後の任務が終わって認められたら行きたいな。」
「そうか…。分かった!絶対に楽しいから楽しみにしていてね!!」
「うん!!」
そしてカノンは部屋を出て行き、カヤは一人になった。
「お父様。私は今全系統の魔法を自由自在に扱えるようになって暴走する事がほぼなくなりました。成長を感じられて嬉しいです。1年後の試練を突破すれば全世界の人から認められるはずです。どうか、天から見守って下さい。」
カヤは両手を合わせ、祈りを捧げていた。
「なるほど。道場?と思っていたけど、こういう事だったんだね。佐助。今日からカヤの稽古を頼むよ。勿論最初は手を抜いてね。」
「はい。気をつけます。ではカヤ様。まずはこの木刀を私に当ててみて下さい。本気で振って構いません。どんな体重の乗せ方をしているのか気になるので。」
佐助は無明剣とほぼ変わらない重さの木刀をカヤに渡す。しかしカヤは困惑していた。佐助が木刀を持っていないからだ。
「その、佐助さんはなぜ木刀を持たないのですか?」
カヤは佐助に対して訊く。しかし佐助はその質問に対しなにも答えず、ただまっすぐ本気で振り下ろすよう促した。そしてカヤが振り下ろした瞬間佐助が消えたのだ。
「えっどこに…。ひっ!」
なんとカヤの背後に佐助がいたのだ。それも音もなくカヤの首に人差し指を当てていた。
「これは大和の国に伝わる”残身”という技です。この技は気を抜かずに相手の存在範囲を見定めるというものです。大和の国には魔法は存在しません。ですが、魔力はなくても敵の行動パターンを読む事は容易。そして”残身”を起こすには3つの動作が必要です。
1つ目は強靭な精神力を持っている事。
2つ目は相手が殺意を持っている事。
3つ目は刀を体の一部と認識する事。
これらが出来ない限り残身を行う事は不可能です。」
残身。これは精神を統一させるための大和の知恵がつまった技だった。しかしその習得はとても難しく、唯一扱えた佐助も習得までに10年の歳月を要した。刀と共に生き、血のにじむ稽古をひたすら体に叩き込み初めて成功する技なのだ。
「刀を体の一部と認識する…?」
「そうです。私はこの刀がなにを言っているのか分かる。道しるべを指してくれるのです。敵のちょっとした動きが空気の揺らぎとなって刀に伝わる。その微弱な波が勝敗を決するのです。その為相手に行動を読まれないよう”極歩”という技を編み出し、まったく音をたてずに走る事を可能としたのです。これは魔法でも科学でも出来ない。人間の強さの象徴なのです。」
「残身…。極歩…。まるで空間魔法みたいですね。空間魔法は目に見えている場所なら一瞬で移動出来ます。しかし私の場合、移動した瞬間微弱な風が伝わってしまいます。それを経験と努力で生み出した佐助さんは凄いです!」
大我が佐助を一番隊隊長に任命したのも頷ける。それほど佐助の技は洗練されたものだった。すると佐助がフィアーの事を呼ぶ。
「フィアーさん。お願いしていたものは完成していますか?もし完成しているのであればカヤ様の頭に装着してほしいのですが。」
「あぁ、出来てるよ。カヤさん、これは相手の目がその赤点に映ると音が鳴る機械。佐助が稽古の時に身につけてほしいと言われたから徹夜で作ったよ。」
その機械は視線感知センサーを搭載したハチマキだった。佐助がカヤの動きを察知し見られたら音が鳴る仕組みとなっており、空間魔法の練度を高めるために佐助がフィアーに頼んだのだ。
「カヤ様。これからは空間魔法を用いながら私に攻撃を当ててみて下さい。私の探知能力は凄まじいため、最短でも私に木刀を当てるまで1か月は要するでしょう。ではかかってきてください!」
カヤはただ頷き精神統一する。この時カヤの脳内は部屋が大きな四角形に網目が張り巡らせられている状態となっていた。これは佐助の場所を敏感に捉えるためだ。そして、佐助の位置を捉えた瞬間魔法を発動させ、カヤは佐助の真上に出現する。
『いける!!』
完全に佐助の脳天を捉えたと思ったカヤ。しかし一歩及ばず回避され額のハチマキを睨まれ、音が鳴った。
「そ、そんな…。」
「やはり、空間魔法を使った瞬間微妙な風が起きていますね。まずは察知されないレベルまで持っていきましょう。多分魔力を出しすぎているのかもしれません。前に出るという式とそこで止まるという式を同時に出す事は可能ですか?」
「まだその域まで達していませんが、可能にします!」
真剣な顔で言うカヤ。すると安心したのか佐助は初めて微笑んだ。
「いきなり沢山動くと辛いと思うので、今日はここまでにしましょう。」
「はい!ありがとうございました。」
そして午前中の稽古は終わった。
・・・
「カヤちゃん。佐助の鍛練はどうだった?」
「本当に凄いと思った!魔法みたいなことを自力で出来るようにするのってとても難しい事だと思うし、私は出来る気しない。でも諦めない!」
カヤはいつも以上に元気だった。その姿を見たカノンは微笑む。
「あ、そうだ。パンケーキ食べる?実はこれ佐助が作ったらしいよ。どうやら甘党みたいで趣味でお菓子作ったりしてるみたい。」
「そうなんだ!いただきます!!…うん、おいしい!あれ、ところで佐助さんは?」
キョロキョロと周りを食堂を見渡すが、佐助の姿がない。するとカノンが口を開いた。
「滝に打たれているみたいだよ。大和では精神統一する時滝に打たれて邪念を捨てる修業があったみたい。ゴズはその独自な文化に惹かれて一緒についていったのをさっき見た。」
「確かにゴズさんそういうの好きそう。後はサインさんも研究中でフィアーさんも魔法の分析か…。って事は今はカノンさんと私しかいないんだ。」
いつもにぎわっているのに今は二人しかいない。皆出かけているみたいだ。するとカノンが「明日町に出てみない?」と言ってきた。
「え、だめだよ…。まだ私はこの国の人に信じられてないから。でも1年後の任務が終わって認められたら行きたいな。」
「そうか…。分かった!絶対に楽しいから楽しみにしていてね!!」
「うん!!」
そしてカノンは部屋を出て行き、カヤは一人になった。
「お父様。私は今全系統の魔法を自由自在に扱えるようになって暴走する事がほぼなくなりました。成長を感じられて嬉しいです。1年後の試練を突破すれば全世界の人から認められるはずです。どうか、天から見守って下さい。」
カヤは両手を合わせ、祈りを捧げていた。
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