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魔法学
佐助の迷い
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カヤがセキトに来てから2か月が経過したある夏の日。佐助は迷い、大統領の屋敷の前に来ていた。理由はただ一つ。奴隷制度を採用しているイズにカヤを行かせるのは酷な話だからだ。
「シン大統領。私はカヤ様をイズへ行かせる計画に反対です。まだ5歳と少ししか生きていない少女に地獄を見せるのはとても心苦しいからです。」
佐助は土下座をしながらシンに訴えかける。その時佐助は自分自身が行くべきではないかと感じていた。しかし現実は非情だった。
「佐助。君の言いたい事は分かる。だが、彼女はこの世にたった一人の魔導士。私たちセキトが彼女を認めても世界は認めない。これは社会問題であり、イズとの条約も締結してしまった。もう逃れられようのない事態なのだ。」
「しかし…!」
佐助は頭をあげようとする。その瞬間佐助の首元に二つの槍が当たり、傭兵が佐助を止めようとした。
「これ以上口を開いたら首が飛ぶと思え。無礼だぞ。」
その言葉に唇を噛む佐助。こんな弱い傭兵は佐助にとっては敵ではなかった。しかし今ここで牙をむいてしまったら自身の立場も危うくなる。これはどの選択肢をとっても悪い方向にしか進まない問題であった。するとシンが口を開く。
「佐助よ。君もカヤと同じこの世にたった一人の刀の使い手。そこまでカヤを心配するのであれば一緒に同行せよ。私は各国首脳に対し、君の事を大和の生き残りと言わない。」
「そのような事をしては、セキトの立場が危うくなります!事実を申し上げる事が正解なのではないですか!」
佐助は嘘をついてはならないとシンに言う。しかし次の瞬間シンの言葉で戦慄した。
「大和の国の賄賂の件は、世界に広まっている。最高の科学力を持った国が多数いるのだ。遠隔でその様子を見る事は容易い。もしそこに大和出身であり、一番隊隊長の君が入りこんだらどうなる。即刻打首だ。」
「なっ…。」
大和がなにか企んでいた事は既に世界中に広まっていた。通信衛星が大和とブルの会談の通信を捉えていたからだ。そこまで予想していなかった佐助はなにも言えなくなってしまった。するとシンは佐助の近くに歩み寄り、肩を掴む。
「佐助、覚悟はあるか?」
その言葉を聞いた瞬間、カヤの笑顔が浮かび上がった。そして覚悟を決める。
「はい。この身が朽ちようとも、命にかえてカヤ様を、このセキトをお守り致します。」
するとシンは安心したのか、急に謝りだした。
「悪いな、佐助。私はこの国の最高指導者として立っているが、国民を、君たちを混乱させてしまっている。だが、イズの問題が解決したら君の事を守り抜く。だから…絶対に生きて帰ってこい。頼む。」
肩に伝わる震えの手は、シンの国民を愛する気持ちがはたらいている証拠であり、佐助の正義感をさらに高めるものだった。
「…シン大統領。私はこの身を国に誓った武士として使命を全うします。必ず生きて戻ってきます。」
そして、佐助は大統領の屋敷をあとにした。
・・・
魔法研究所についた佐助は、カヤを呼び二人で話し合いたいと申しでた。その言葉に困惑するカヤだったが、佐助の真剣な顔に正直でいようと思い、施設の外で話す事にした。そして、施設から出た次の瞬間、佐助は頭を下げたのだ。
「カヤ様。期限まであと10か月です。この時間は非常に短い。ですが私が命を懸けて貴方をお守りします。この命にかえても!ですので…」
その瞬間佐助はカヤにビンタされた。何事かと驚く佐助だったが、次の瞬間カヤは佐助の事を抱きしめていた。
「死ぬなんて私が許さない!これまで何度も稽古をつけてくれたのに、そんな簡単に命を投げ出してはだめ。絶対に一緒に帰ろうよ!」
「…!」
カヤは佐助を尊敬していた。魔法を持ったとしても、一回も木刀を佐助に当てられない事が悔しかったからだ。その剣劇に憧れていた。しかしそれ以上に佐助に生きていて欲しかった。ただそのカヤの想いがまっすぐ佐助の心に突き刺さる。その瞬間佐助は涙が出てきた。
「ありがとうございます。誇り高き武士である私は情けない事に今まで迷っていた。シン大統領と対話した時も迷っていた。しかし、今カヤ様に一喝貰って気づいた事があります。命は絶対に投げ出してはいけないと。私はこれまで死にに行けと命じられた身。ですがもう迷いません。カヤ様。貴方と共に肩を並べ、生きていきます。」
その言葉を聞いたカヤは微笑み、「また稽古をお願いします。」と言い、施設へと戻っていった。
「私に出来る事はカヤ様を幸せにする事。命を落とさない事。それだけで十分だったんだ。」
「やっと気づいたか!」
佐助はその声に驚き、後ろを振り向くと微笑みながらサインが立っていた。そしてサインは二人で話そうといった。
・・・
「ゴズから聞いたよ。佐助は武士であり、戦争の時毎回命を捨ててこいって長に言われていた事を。それはさ、大和の国では絶対だったと思う。でも佐助が初めて長に逆らってこの国に来たって事は、自分自身を見つけてくれる人が欲しかったんじゃないかな。」
「私を見つけてくれる人…。」
「そう、佐助はカヤみたいな優しい人が欲しかった。だから大和の国から逃げてきた。違わない?」
佐助はその言葉に対し考える。確かにここ1か月間ひたむきに頑張るカヤに自身も頑張る事が出来た。いつのまにか友情が芽生えていたのだ。
「やっぱそういう顔をしている。人って一人じゃ生きていけないんだよ。カヤは数日間孤独という名の恐怖に支配されていた。でもあの時僕たち調査団がカヤを見つける事が出来て本当に良かったと思う。まぁ色々大変な事はあったけどね。…それで佐助はさ、どう在りたい?」
「どう在りたい…ですか。私はただ皆さまのお役に立ちたいです。喜んでほしい。それだけです。」
「いいね。でも一人で抱え込まずに僕たち調査団に言ってね。いつでも相談乗るからさ!」
サインはそう言い施設に戻ろうとする。その時佐助は自然に言葉に出ていた。
「サインさん。私は貴方たちに囲まれて本当に感謝しています。これからも一緒にいてください!」
その言葉を聞いたサインは笑顔で頷き、「もちろん!」と言って戻っていった。
「シン大統領。私はカヤ様をイズへ行かせる計画に反対です。まだ5歳と少ししか生きていない少女に地獄を見せるのはとても心苦しいからです。」
佐助は土下座をしながらシンに訴えかける。その時佐助は自分自身が行くべきではないかと感じていた。しかし現実は非情だった。
「佐助。君の言いたい事は分かる。だが、彼女はこの世にたった一人の魔導士。私たちセキトが彼女を認めても世界は認めない。これは社会問題であり、イズとの条約も締結してしまった。もう逃れられようのない事態なのだ。」
「しかし…!」
佐助は頭をあげようとする。その瞬間佐助の首元に二つの槍が当たり、傭兵が佐助を止めようとした。
「これ以上口を開いたら首が飛ぶと思え。無礼だぞ。」
その言葉に唇を噛む佐助。こんな弱い傭兵は佐助にとっては敵ではなかった。しかし今ここで牙をむいてしまったら自身の立場も危うくなる。これはどの選択肢をとっても悪い方向にしか進まない問題であった。するとシンが口を開く。
「佐助よ。君もカヤと同じこの世にたった一人の刀の使い手。そこまでカヤを心配するのであれば一緒に同行せよ。私は各国首脳に対し、君の事を大和の生き残りと言わない。」
「そのような事をしては、セキトの立場が危うくなります!事実を申し上げる事が正解なのではないですか!」
佐助は嘘をついてはならないとシンに言う。しかし次の瞬間シンの言葉で戦慄した。
「大和の国の賄賂の件は、世界に広まっている。最高の科学力を持った国が多数いるのだ。遠隔でその様子を見る事は容易い。もしそこに大和出身であり、一番隊隊長の君が入りこんだらどうなる。即刻打首だ。」
「なっ…。」
大和がなにか企んでいた事は既に世界中に広まっていた。通信衛星が大和とブルの会談の通信を捉えていたからだ。そこまで予想していなかった佐助はなにも言えなくなってしまった。するとシンは佐助の近くに歩み寄り、肩を掴む。
「佐助、覚悟はあるか?」
その言葉を聞いた瞬間、カヤの笑顔が浮かび上がった。そして覚悟を決める。
「はい。この身が朽ちようとも、命にかえてカヤ様を、このセキトをお守り致します。」
するとシンは安心したのか、急に謝りだした。
「悪いな、佐助。私はこの国の最高指導者として立っているが、国民を、君たちを混乱させてしまっている。だが、イズの問題が解決したら君の事を守り抜く。だから…絶対に生きて帰ってこい。頼む。」
肩に伝わる震えの手は、シンの国民を愛する気持ちがはたらいている証拠であり、佐助の正義感をさらに高めるものだった。
「…シン大統領。私はこの身を国に誓った武士として使命を全うします。必ず生きて戻ってきます。」
そして、佐助は大統領の屋敷をあとにした。
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魔法研究所についた佐助は、カヤを呼び二人で話し合いたいと申しでた。その言葉に困惑するカヤだったが、佐助の真剣な顔に正直でいようと思い、施設の外で話す事にした。そして、施設から出た次の瞬間、佐助は頭を下げたのだ。
「カヤ様。期限まであと10か月です。この時間は非常に短い。ですが私が命を懸けて貴方をお守りします。この命にかえても!ですので…」
その瞬間佐助はカヤにビンタされた。何事かと驚く佐助だったが、次の瞬間カヤは佐助の事を抱きしめていた。
「死ぬなんて私が許さない!これまで何度も稽古をつけてくれたのに、そんな簡単に命を投げ出してはだめ。絶対に一緒に帰ろうよ!」
「…!」
カヤは佐助を尊敬していた。魔法を持ったとしても、一回も木刀を佐助に当てられない事が悔しかったからだ。その剣劇に憧れていた。しかしそれ以上に佐助に生きていて欲しかった。ただそのカヤの想いがまっすぐ佐助の心に突き刺さる。その瞬間佐助は涙が出てきた。
「ありがとうございます。誇り高き武士である私は情けない事に今まで迷っていた。シン大統領と対話した時も迷っていた。しかし、今カヤ様に一喝貰って気づいた事があります。命は絶対に投げ出してはいけないと。私はこれまで死にに行けと命じられた身。ですがもう迷いません。カヤ様。貴方と共に肩を並べ、生きていきます。」
その言葉を聞いたカヤは微笑み、「また稽古をお願いします。」と言い、施設へと戻っていった。
「私に出来る事はカヤ様を幸せにする事。命を落とさない事。それだけで十分だったんだ。」
「やっと気づいたか!」
佐助はその声に驚き、後ろを振り向くと微笑みながらサインが立っていた。そしてサインは二人で話そうといった。
・・・
「ゴズから聞いたよ。佐助は武士であり、戦争の時毎回命を捨ててこいって長に言われていた事を。それはさ、大和の国では絶対だったと思う。でも佐助が初めて長に逆らってこの国に来たって事は、自分自身を見つけてくれる人が欲しかったんじゃないかな。」
「私を見つけてくれる人…。」
「そう、佐助はカヤみたいな優しい人が欲しかった。だから大和の国から逃げてきた。違わない?」
佐助はその言葉に対し考える。確かにここ1か月間ひたむきに頑張るカヤに自身も頑張る事が出来た。いつのまにか友情が芽生えていたのだ。
「やっぱそういう顔をしている。人って一人じゃ生きていけないんだよ。カヤは数日間孤独という名の恐怖に支配されていた。でもあの時僕たち調査団がカヤを見つける事が出来て本当に良かったと思う。まぁ色々大変な事はあったけどね。…それで佐助はさ、どう在りたい?」
「どう在りたい…ですか。私はただ皆さまのお役に立ちたいです。喜んでほしい。それだけです。」
「いいね。でも一人で抱え込まずに僕たち調査団に言ってね。いつでも相談乗るからさ!」
サインはそう言い施設に戻ろうとする。その時佐助は自然に言葉に出ていた。
「サインさん。私は貴方たちに囲まれて本当に感謝しています。これからも一緒にいてください!」
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