無明剣零

青鳥翔

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渾沌渦巻くセキト

カノンとの散歩

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 「カノンさん。シン大統領からセキトをまわる許可が下りたよ!!」

 「カヤちゃんおめでとう!!どこか行きたい場所はある?」

 カヤはシンからの許可が下り、わくわくしていた。カヤを匿ってくれたセキトの国民がどんな人たちなのか知りたかったからだ。しかしセキトはとても広い国。全てをまわりきるには相当時間がかかる為、カノンが同行する事となる。

 「んー。この近くに秘境、世界遺産…?みたいなのってある?」

 「ちょっと待ってね。ここには…。」

 カノンは腕時計を使い調べる。腕時計から映し出されたセキトの地図。

 「今私たちがいるのは、ここ。セキトの北に位置するほぼ住居のない場所なんだ。そして首都、大統領の屋敷のあるホースの場所がセキトの丁度真ん中。そして秘境なんだけどおすすめの場所があるんだ。世界一高い山、キール山。ここにはとある滝があるんだけど、落差が凄く、滝つぼはないんだ。ほぼ霧雨が降り注いでいる感じ。行ってみる?」

 「行きたい!」

 「よし、じゃあ軽食を持って行こう!!」

 二人はサンドウィッチを作り、弁当箱に入れ、サインたちに声をかける。するとサインたちは微笑み「いってらっしゃい!」と言い、二人を見送った。

 「カヤちゃん。転送魔法で行く?それとも歩き?」

 「せっかくだから歩きで行きたいな!ここから何分くらいかかる?」

 「その場所までは歩いて10分くらい!ほぼ散歩だけど、初めてだから色々まわろう。」

 カヤとカノンは施設の隣に位置する森林の間を抜けていく。その木々は高さ30メートルにもなる針葉樹林の森だった。

 「綺麗…。カノンさん、少し昔話になるんだけど、王国の図書館で見たんだ。この景色を。とても綺麗で自然豊かだなと思っていたけど、生で見たら凄いね。鳥のさえずりも水のせせらぎの音も素敵。」

 「でしょ!国立公園に指定されても不思議ではない場所だよね。お父さんがカヤちゃんのための魔法研究所をこの場所に置いたのも理解できる。自然豊かなこの大地をカヤちゃんに見せたかったんだろうね!」

 そして木々を抜けるとだんだん水の柱が見えてきた。その高さに驚くカヤ。滝のてっぺんが見えない。それに加え閑静で落ち着きのある場所だった。

 「ここはね。私が小さい頃よくお偉いさんと一緒に来た場所なんだ。お父さんに「お前もこの国の事を勉強しろ!」って言われたからね…笑」

 微笑むカノン。すると滝の裏が光っている事に気づいたカヤが指をさす。

 「あの光るものはなに?生き物とか?」
 
 「そう!ウミベホタルっていう虫なんだけど、なぜかこの地に生息しているんだよね。基本海辺にしか生息していないのに。せっかくだから近くでみてみよう!」

 カノンはカヤの手を取り、光る方へと歩みを進めた。そして近くに寄るとより一層光が増したのだ。

 「ウミベホタルはね。感情によって光の色が変わるんだ。これは落ち着いている時。怒ると赤色。悲しい時は青色。この地に住むウミベホタルだけ色が変わる。不思議な生態を持っているよね。何故ここのウミベホタルだけ色んな色を使いわけるのか今でも不明らしい。」

 「へー。」

 カヤは鮮やかな空間に魅了され、思わず涙が出る。この静かな環境で神々しく光る虫。自然はこんなに素敵なものなんだと感動していた。その様子を優しく見守るカノンだった。

 『カヤちゃん。初めて無邪気な少女の顔をしているのを見た。世界がカヤを認めたから今こうして楽しめる。本当に君は美しいよ。』

・・・

 「さてと、防寒着を着ているからせっかくだし、キール山の展望台へと行こう!ただかなり上でそこに行くまで道が険しいから、カヤちゃん、転送してくれる?」

 「分かった!」

 カノンは展望台の景色をカヤに見せ、カヤはその場所に行く為の魔法を放ち、一瞬でその展望台へと着いた。その場所は空気が澄んでおり、遥か彼方の町まで見える場所だった。

 「やっぱりカヤちゃんの魔法凄いね。私が以前言った”魔法は作品”という言葉を信じてくれて嬉しいよ。」

 「あの時は本当にありがとう、カノンさん。魔法は怖くないって教えてくれたから今こうして素敵な場所へと来れた。本当に綺麗。飛んでゆっくりみてみたいよ!」

 全系統の魔法を使えるカヤは風魔法で空を自在に飛ぶ事も出来るようになっていた。カノンは「せっかくだから見てきな。」と言うと、カヤは喜び空を飛ぶ。

 『素敵だ!夏なのに山に雪が積もっている。心地よい風。こんな場所が施設の近くにあったなんて…。セキトは自然を大切にしているんだね。』

 数分間飛び回るカヤ。その時間カヤの心は嬉しさで潤っていた。

・・・

 昼時。カヤとカノンはサンドウィッチを食べながら、風景を見ていた。

 「カヤちゃんの祖国、サウンドラ王国にはどんな秘境があったの?」

 「私の国には魔術森っていう不思議な森があったよ。その場所には魔獣が沢山いた。翼を持った馬とか、背中に雛を乗せている青い鳥とか。植物も火を噴いたり、大地も心臓のようにうなったり。不思議な場所だったんだ。」

 魔術森は今はもうない。しかし、想像するだけでわくわくが止まらなくなるカノン。

 「行ってみたかったなー!私は新しいものに目がないから、すぐ迷子になりそう笑」

 「サウンドラ王国ってほぼ鎖国をしていた国だから、皆は、特にゴズさんみたいな歴史学者は凄い興味を持っていたと思う。さっきみたいに空を飛んだり、作物に水魔法をかけて栽培していたり。素敵な国だったんだよ!」

 サウンドラ王国を懐かしむカヤ。するとカノンはある事を思いだした。それはゴズとサウンドラ王国のあった島に行くという話。「すっかり忘れていた!」というとカヤは笑う。

 「な、なんで笑っているの…?」

 「いや、カノンさんって完璧に見えてちょっと抜けているところがあるなって思って。」
 
 「…馬鹿にしてるでしょ。」

 「ごめんごめん。こうして今カノンさんと話せて嬉しいよ。この場所を教えてくれてありがとう!」

 カヤは立ち、カノンの手を取る。その様子を見たカノンは微笑みながら「またこの場所に来ようね!」と言った。そして二人は夕焼け空をみた後施設へと戻る。

・・・

 その日の夜。カヤはサインに対し、今日あった事を話していた。それは好奇心旺盛な子供のように。その様子に安心するサイン。

 「カヤ、君は本当に成長したね。これからの9か月間、この国の人と関わって、楽しもう!!」

 「うん!!あ、サインさん。少し頭落として目を閉じて。」

 何故?と思ったサインだったがカヤの言った通りにする。するとカヤはサインの頬にキスをした。

 「えっ…!?ちょ…!!」

 びっくりするサインだったが、カヤは「お休み!」と言いすぐに出て行った。

 
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