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歯車は動き出す
灯火は海へと還る
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「私の国の慰霊もしないとね。私は全国民を滅してしまったけど、あの時の笑顔は本物だった。こんな私に力を授けてくれたのも私を信じていたからなんだ。」
カヤは佐助の手を取り、立ち上がらせるとサウンドラ王国の墓地へと向かう。ゴズはサウンドラ王国の慰霊がどんなものなのか気になっていた。そしてカヤの空間魔法によってその場に着くと、そこには綺麗な浜辺が広がっていた。
「カヤ。ここはただの浜辺だが…。」
「そう、サウンドラ王国の祀りは海に亡くなった人の体を投げる事。つまり体を自然に返す事だったんだ。」
カヤの話によると浜辺の砂は亡くなった人の魂が眠っているという言い伝えがあるらしい。するとカヤが数百もの火の弾を浮かばせた。
「私のせいです。申し訳ありません。皆さん、安らかにお眠り下さい。」
次々に水魔法を火の弾にかけ、明るさがなくなっていく浜辺。この時カヤは泣いていた。
・・・
「カヤ。見せてくれてありがとう。魔法での慰霊は聞いた事がなかった。貴重な場面だったよ。」
「ゴズさん。別れってやっぱり辛いね。今は心身ともに15歳になったけど、それでも胸が締めつけられる。もう皆は帰ってこない。」
とても悲しい顔をしているカヤ。心配だったゴズは声をかけようとする。するとカヤが前を向く。
「でも皆はこんな私を許してくれた。私に希望を与えてくれた。だから私はこれからもこの浜辺で祈りを続けようと思う。ゴズさん。佐助さん。またこの地に来て一緒にお祈りしましょう。」
「あ、あぁ…。カヤも佐助も成長したな。俺は辛い過去を持っている二人を支えたい。言葉上手ではないが、寄り添ってもいいか…?」
その言葉はとても優しく、カヤと佐助の心を動かした。次の瞬間、カヤはゴズに抱きつき声を殺して泣いた。
・・・
三人はセキトへと戻り、ゴズはサインと話していた。
「そっか。佐助にそんな過去があったんだね。ゴズはさ。その話を聞いていてどう思った?」
「俺よりも若い二人があんな過去を持っていた事に言葉が出なかったよ。俺があの二人くらいの年齢だったら耐えられない。歴史を知るって大切だが、それと同時に悲しみの感情を持つという事を改めて知った。貴重な体験が出来て、いや二人の事をより深く知る事が出来て良かった。」
するとサインは少し考え、口にした。
「怒らずに聞いてほしいんだけど、ゴズって脳筋に見えて、人の事をしっかりと考えているよね。歴史を知る時もその事実だけを知るのではなくて、その人たちの心情まで学ぼうとしている。それはとても大切な事だし、僕も見習いたい。…二人は今慰霊をして落ち込んでいるかもしれない。だから歴史学者である君に命じます。二人が落ち込んでいる時、君に二人を任せたい。君は僕よりも優れた人だから。」
「あぁ、任せろ。カノンと交代しながら二人の生き方を見守っていきたい。」
するとサインはゴズの肩を掴み「頼んだ。」と言い残し、部屋を出て行った。
───
「慰霊…か。確かにこの国にもそれは存在するが、先祖の霊を迎え入れるという習慣はなかった。これも自然と共存していたからなのか…?」
ゴズは頭を悩ませる。すると、ドアをノックする音が聞こえてきた。「どうぞ」とゴズが言うとフィアーが分厚い本を持ちながら入ってきた。
「珍しいな、フィアー。どうした?」
「カヤさんと佐助さんの事で少し気になった事があって調べてみたんだ。魂に重さがあるという事に興味が沸いてね。」
フィアーはセキトの国立図書館で生死に関する書物を借りて、読んでいた。その書物には魂は火から出来ているから、体が暖かい。そして死後、体が冷たくなるのは魂が消え、体を温めるものがなくなるからだと書かれていた。
「問題はここなんだ。科学的に見ても、人体に炎が纏っている場所はない。筋肉や食べ物の栄養による代謝と言ってしまえばそれで結論が出てしまうが、二人の言っていた事が正しいのなら、宗教的なものが関わっているのかもしれない。」
「なるほど。フィアーでさえ答えを導きだせなかったのだな…。宗教か…。あの二人の行動を見ていても特別な儀式をしていたわけではないし、慰霊というと俺たちもやっている事。これは文化的、慣習なのかもしれないな。」
ゴズとフィアーは二人の考え方に疑問を抱いていた。他の国はセキトと同じようにほぼ無宗教。科学が進み、神を信じなくなったからだ。ただ二人に似ているとしたら、国を象徴する像が建っている事。セキトでは赤いペガサスが祀られている。今のセキトの国民は赤いペガサスについてなにも感じないが、昔は各家に必ず像が置かれていた。それと同じようにカヤと佐助にはなにかを信仰するものがあるのではないかという結論に至り、明日聞く事にしようと結論が出た。
・・・
「カヤ、佐助。昨日フィアーと話してみたのだ。偶像崇拝、もしくはそれに対等ななにかを信じているのではないか?という疑問が生まれてな。そこで二人に聞きたい。二人の国には宗教というものがあったのか?」
ゴズの問いは今後の歴史の糧になるものだった。ゴズはあるだろうと信じていた。しかしカヤと佐助は首を横に振ったのだ。
「私の国にはそういうものはなかった。亡くなった人を天へと静かに送るという事はしていたけど。」
「私の国もそうでした。亡き者はもう帰ってこない。しかし、この時期だけ降霊するという言い伝えがあり、それを信じ生きてきました。」
二人の話を聞いて理解した。サウンドラ王国にも大和の国にも宗教は存在しない。しかしセキトでいう神話のようなものが文化的に根付いている。
「大体分かった。ではもう一つの質問をする。二人は魂の行き先はどこだと考えている?俺はあの世自体は信じている。だが、そこで一生を過ごす事になると思っている。」
「私は生まれ変わりを信じているよ。そうじゃなければ、新しい命は生まれないと思っているから。おかしいと思わない?もし魂が消えてなくなったら次第に生命の数は減っていく。でもそんな事はない。根絶やしにしない限り、生命は生まれてくるんだ。だから私は生まれ変わりを信じている。」
「私も同じ意見です。この時期ご先祖様を家に迎え入れると前に言いましたが、いつかは生まれ変わる時が来る。お父様に同じ質問をした事があるのです。その時お父様は言いました。「魂は次の世代に向かうが、自身の心に生き続ける。」と。これは人によって考えが変わると思います。ただ私はそれを信じ、これからも生きていくつもりです。」
その話を聞いたゴズは、やはりサウンドラ王国と大和の国の考え方は、遥か昔に滅んだ国に似ているなと思った。しかしその国の事をあえて言わなかった。死後の世界を深く考えるのはあまりよくないと考えていたからだ。その為、ゴズは二人に対し「貴重な話が聞けて嬉しい。ありがとう。」と告げた後、部屋を出て行った。
カヤは佐助の手を取り、立ち上がらせるとサウンドラ王国の墓地へと向かう。ゴズはサウンドラ王国の慰霊がどんなものなのか気になっていた。そしてカヤの空間魔法によってその場に着くと、そこには綺麗な浜辺が広がっていた。
「カヤ。ここはただの浜辺だが…。」
「そう、サウンドラ王国の祀りは海に亡くなった人の体を投げる事。つまり体を自然に返す事だったんだ。」
カヤの話によると浜辺の砂は亡くなった人の魂が眠っているという言い伝えがあるらしい。するとカヤが数百もの火の弾を浮かばせた。
「私のせいです。申し訳ありません。皆さん、安らかにお眠り下さい。」
次々に水魔法を火の弾にかけ、明るさがなくなっていく浜辺。この時カヤは泣いていた。
・・・
「カヤ。見せてくれてありがとう。魔法での慰霊は聞いた事がなかった。貴重な場面だったよ。」
「ゴズさん。別れってやっぱり辛いね。今は心身ともに15歳になったけど、それでも胸が締めつけられる。もう皆は帰ってこない。」
とても悲しい顔をしているカヤ。心配だったゴズは声をかけようとする。するとカヤが前を向く。
「でも皆はこんな私を許してくれた。私に希望を与えてくれた。だから私はこれからもこの浜辺で祈りを続けようと思う。ゴズさん。佐助さん。またこの地に来て一緒にお祈りしましょう。」
「あ、あぁ…。カヤも佐助も成長したな。俺は辛い過去を持っている二人を支えたい。言葉上手ではないが、寄り添ってもいいか…?」
その言葉はとても優しく、カヤと佐助の心を動かした。次の瞬間、カヤはゴズに抱きつき声を殺して泣いた。
・・・
三人はセキトへと戻り、ゴズはサインと話していた。
「そっか。佐助にそんな過去があったんだね。ゴズはさ。その話を聞いていてどう思った?」
「俺よりも若い二人があんな過去を持っていた事に言葉が出なかったよ。俺があの二人くらいの年齢だったら耐えられない。歴史を知るって大切だが、それと同時に悲しみの感情を持つという事を改めて知った。貴重な体験が出来て、いや二人の事をより深く知る事が出来て良かった。」
するとサインは少し考え、口にした。
「怒らずに聞いてほしいんだけど、ゴズって脳筋に見えて、人の事をしっかりと考えているよね。歴史を知る時もその事実だけを知るのではなくて、その人たちの心情まで学ぼうとしている。それはとても大切な事だし、僕も見習いたい。…二人は今慰霊をして落ち込んでいるかもしれない。だから歴史学者である君に命じます。二人が落ち込んでいる時、君に二人を任せたい。君は僕よりも優れた人だから。」
「あぁ、任せろ。カノンと交代しながら二人の生き方を見守っていきたい。」
するとサインはゴズの肩を掴み「頼んだ。」と言い残し、部屋を出て行った。
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「慰霊…か。確かにこの国にもそれは存在するが、先祖の霊を迎え入れるという習慣はなかった。これも自然と共存していたからなのか…?」
ゴズは頭を悩ませる。すると、ドアをノックする音が聞こえてきた。「どうぞ」とゴズが言うとフィアーが分厚い本を持ちながら入ってきた。
「珍しいな、フィアー。どうした?」
「カヤさんと佐助さんの事で少し気になった事があって調べてみたんだ。魂に重さがあるという事に興味が沸いてね。」
フィアーはセキトの国立図書館で生死に関する書物を借りて、読んでいた。その書物には魂は火から出来ているから、体が暖かい。そして死後、体が冷たくなるのは魂が消え、体を温めるものがなくなるからだと書かれていた。
「問題はここなんだ。科学的に見ても、人体に炎が纏っている場所はない。筋肉や食べ物の栄養による代謝と言ってしまえばそれで結論が出てしまうが、二人の言っていた事が正しいのなら、宗教的なものが関わっているのかもしれない。」
「なるほど。フィアーでさえ答えを導きだせなかったのだな…。宗教か…。あの二人の行動を見ていても特別な儀式をしていたわけではないし、慰霊というと俺たちもやっている事。これは文化的、慣習なのかもしれないな。」
ゴズとフィアーは二人の考え方に疑問を抱いていた。他の国はセキトと同じようにほぼ無宗教。科学が進み、神を信じなくなったからだ。ただ二人に似ているとしたら、国を象徴する像が建っている事。セキトでは赤いペガサスが祀られている。今のセキトの国民は赤いペガサスについてなにも感じないが、昔は各家に必ず像が置かれていた。それと同じようにカヤと佐助にはなにかを信仰するものがあるのではないかという結論に至り、明日聞く事にしようと結論が出た。
・・・
「カヤ、佐助。昨日フィアーと話してみたのだ。偶像崇拝、もしくはそれに対等ななにかを信じているのではないか?という疑問が生まれてな。そこで二人に聞きたい。二人の国には宗教というものがあったのか?」
ゴズの問いは今後の歴史の糧になるものだった。ゴズはあるだろうと信じていた。しかしカヤと佐助は首を横に振ったのだ。
「私の国にはそういうものはなかった。亡くなった人を天へと静かに送るという事はしていたけど。」
「私の国もそうでした。亡き者はもう帰ってこない。しかし、この時期だけ降霊するという言い伝えがあり、それを信じ生きてきました。」
二人の話を聞いて理解した。サウンドラ王国にも大和の国にも宗教は存在しない。しかしセキトでいう神話のようなものが文化的に根付いている。
「大体分かった。ではもう一つの質問をする。二人は魂の行き先はどこだと考えている?俺はあの世自体は信じている。だが、そこで一生を過ごす事になると思っている。」
「私は生まれ変わりを信じているよ。そうじゃなければ、新しい命は生まれないと思っているから。おかしいと思わない?もし魂が消えてなくなったら次第に生命の数は減っていく。でもそんな事はない。根絶やしにしない限り、生命は生まれてくるんだ。だから私は生まれ変わりを信じている。」
「私も同じ意見です。この時期ご先祖様を家に迎え入れると前に言いましたが、いつかは生まれ変わる時が来る。お父様に同じ質問をした事があるのです。その時お父様は言いました。「魂は次の世代に向かうが、自身の心に生き続ける。」と。これは人によって考えが変わると思います。ただ私はそれを信じ、これからも生きていくつもりです。」
その話を聞いたゴズは、やはりサウンドラ王国と大和の国の考え方は、遥か昔に滅んだ国に似ているなと思った。しかしその国の事をあえて言わなかった。死後の世界を深く考えるのはあまりよくないと考えていたからだ。その為、ゴズは二人に対し「貴重な話が聞けて嬉しい。ありがとう。」と告げた後、部屋を出て行った。
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