無明剣零

青鳥翔

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正と負の軋轢

辛いよ。

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 「カヤ様。魔導戦士は人工心臓を完全に貫かなければなりません。私はもう何万もの命を奪ってきたからこれから先も問題ありません。しかしカヤ様は…。」

 佐助は心配していた。しかし、カヤは無言で町を襲う魔導戦士を滅していた。精神で動くのはだめだと自身に言い聞かせていたからだ。その為佐助の言葉に応じる事もせずただ、血を見ていた。

 「そんな…。カヤ様は、平和を掲げる人。それなのに罪なき人を滅するなんて…。」

 佐助は心を痛める。しかし斬ってもきりがない状態で止まるのは馬鹿のやる事だと自身に言い聞かせ、戦闘に参加した。今までの幸せな空間。それは冷酷無比だった佐助の心を優しい人間に戻していた。その為、罪なき人間を手にかける事が辛いと感じていた。そして何十人か倒したところで佐助は立ち止まってしまったのだ。

 「辛い…。辛すぎるよ……。」

 そう口にする。それを魔導戦士は逃さないと攻撃を仕掛けるが、佐助は斬り落とす。しかし、その目には涙が映っていた。

 するとその国の軍がやってくる。魔導戦士をとめる為に来たのだろう。しかし魔導戦士はカヤや佐助のような素早い動作が可能だ。それにより次々に爆発を起こし、その国を守る軍は消え去った。

 「さようなら。」

 カヤは魔導戦士を次々に成敗していく。佐助も負けじと斬り倒していったが、カヤの事が心配でたまらなかった。自分自身のようになってほしくなかったから。今のカヤは殺戮兵器そのものだった。そしてその国にいた魔導戦士はカヤがほぼ片づけてしまった。

 「佐助さん。行きましょう。」

 淡々と準備を進めるカヤと暗い顔をしている佐助は、次の助けを呼んでいる国へと向かった。

・・・

 その土地は既に焦土と化していた。魔導戦士も倒れている。何故かと周りを見渡すと、どうやらガスタンクに攻撃が当たり、大爆発を起こしたとの事だった。この時世界では既に2000万人が犠牲になっていた。これは最早戦争。世界中の科学施設も軍事施設も人間もどんどん消えていく。しかしカヤの目は黒く曇ったまま「次の国へ行きましょう。」と言う。

 次の国へ行っている最中、佐助はただただ刀を振っていた。倒すには本気でやらないと分かっていたからだ。しかし以前のような強さは引き出せなかった。命を大事にしろというセキトの思想に捕らわれ、刀に迷いがでてしまったから。それを感じとったカヤは立ち止まり佐助に声をかける。

 「あの、佐助さん。やる気ある?」

 「もう罪なき人間を殺すのは嫌だ。」

 佐助は本音が出ていた。するとカヤはため息をつく。魔導戦士は化け物同然だから人間ではないと口にしたのだ。前のカヤだとそんな事は言わなかった。しかし精神が麻痺してしまったのか魔導戦士に対してなんの感情も出さなくなってしまったのだ。

 「佐助さん。こいつは既に1000人以上殺している。これが罪なき人間だと思いますか?」

 屍に対し、言うカヤ。確かに言っている事は間違っていない。しかし佐助が人の感情を取り戻したと同時にカヤは人間の感情を失いつつあった。それが佐助にとってとても辛い事であった。サインが殺されて気が動転しているのだろう。それでもカヤの暴走は止まらない。間違えて普通の人間を斬ってしまった時もなにも言わず、先に進んでいく。逃げ惑う人間を見捨て、敵の集中が逸れている時に倒す。そんな事をして前に進んでいくカヤ。

 すると遥か遠くから核爆弾が飛んできた。密集している魔導戦士に一発喰らわせようとしたのだろう。それを見たカヤは何故か核爆弾を国民のいる方向に飛ばし落とした。

 「カヤ様!!なぜそのような事をしたのですか!!」

 「国民がいなくなれば、魔導戦士だけに集中出来ると思ったから。」

 その言葉に絶句する佐助。国民を第一に考えていた以前のカヤはもうその心がない。そしてカヤは魔導戦士の方へ飛んでいく。

 『もうカヤ様を止めるには私の刀で……。』

 佐助もだんだん精神がおかしくなっていった。魔導戦士ではなくカヤを手にかけようとしたからだ。この焦土と化した世界を生き抜くには残虐な行為を繰り返すしかない。10人以上の魔導戦士が佐助を囲んだ瞬間、佐助は一瞬で細切れにした。

 するとゴズから連絡が来た。その通信で正気に戻る佐助。通信を繋げると、ゴズは言った。「セキトが滅んだ。」と。

 「ゴズさん!!今そちらに向かいます!!」

 佐助はカヤの事を呼びとめ、セキトに戻る選択をする。カヤはそれに応じ、施設前に来て戦慄した。

 そこには血塗れになったゴズ、フィアー、カノンがいたのだ。佐助はカヤに対し、「回復魔法をかけてください!」と言い、カヤは急いで回復魔法をかける。すると遠くではミサイルが落ち、焼け野原になったセキトの街並みがみえた。それに絶望する二人だった。

 「……カヤ様。私は今から、戦場に向かいます。もうカヤ様の悲しい顔を見たくない。ゴズさんたちをよろしくお願いします。」

 「ま、待って!!!」

 カヤは叫ぶが、佐助は聞き入れず戦場へと足を踏み入れていった。

・・・

 そこには数百人の魔導戦士が立っており、建物は壊滅的状況。全ての文明は焼き払われ、佐助は真っ赤に燃える光景に笑う事しか出来なかった。

 「…もう、終わりだ……。この世界は、もう終わりだ!!」

 佐助は極身を身に纏い、光速に近い速さで敵を斬り刻んでいく。雷鳴が耳を突き刺し、燃やしつくす。そして冷酷無比になりかけた時。がれきに埋もれたシンが佐助の事を呼んだのだ。

 「はっ…!!シン大統領!!!」
 
 「佐助。君は逃げろ…。カヤ、佐助はこの世界の希望。これから先世界の希望になる。君たちだけでも逃げて…。」

 「そんな事出来ません!!今カヤが施設で治療しています!今から連れて行きます!!」

 佐助は極身を纏いシンを背負うとする。しかしシンはそれを止めた。

 「な、なぜ止めるのですか…!!」

 「もしここで私を救ってしまったらセキトの国民が危険に晒される。もう国民が傷つくのはみたくない。だから頼む。私を見捨ててくれないか…?」

 なにも言えない佐助を押すシン。その瞬間炎を纏ったがれきがシンの上に落下した。

 「シン大統領ーーー!!!」

 佐助は叫けびながら手を伸ばしたが一歩届かず、シンを助ける事が出来なかった。それを目の当たりにした佐助はただ叫び、抑えきれない感情を爆発させた。雷鳴が国中を駆け回り、そして静寂が訪れた。
 

 
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