異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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003-② 楽天家!

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「大丈夫だよ。想像しているような不当な扱いは受けないから。寧ろ歓待されるよ」
「歓待される?」

 オズは妖艶に口許を緩めた。一方で犬人間は思案げだ。

「お姫様扱いを受けることになるよ。人生でこんな経験滅多にない。せいぜい期待してて。とんでもないことになるよ」

 なんでそこは王子様じゃないんだ。
 
 俺の頭の中ははてなマークだらけ。

 わからないことだらけだ。

 この世界は俺の世界を受け入れているようだが、俺の世界はこの世界を受け入れていないような気がする。

 一方向に流れているような。

 少なくとも今の俺はまだ。
 こんな不思議な世界では、全部を理解するのは不可能だと思う。

 犬人間が犬の顔をして手を顎にやって考え込んでいる。こいつは吃驚するほど人間らしい動きをする。顔だけは……、どう見ても犬である。

「今日のお前はだいぶ冷静じゃないな」

 女は呆れたように犬人間を見て、そのあとで俺に向き直った。

「気にするな。犬だから」
「『犬』と言うな。それは侮蔑の意味なんだろ」

 犬人間が『犬』と呼ばれたくないことは理解した。俺も気をつけよう。オズはともかく俺が言ったら殺されかねないから。
 
 オズはもう一度部屋からいなくなって、直ぐに戻ってきた。そのときは綺麗に畳まれた服を持っていた。俺の元に来て言った。

「上が寝巻きだよ。下の服は……、明日からしばらく着て。今から今日寝る場所に案内するよ」
「これは」
「客人用の服だ。大きいと思うけど調整できるから」

 ありがたいが過ぎる。だいぶ上質なもののように思えた。犬人間が着ている服の刺繍は細かくて女より上等だが、それ以上な気がして気が引けた。

「ありがとう」
「どういたしまして」

 犬と女はしばらく話していたが、二人の出した結論としては、

「この男はしばらく自分たちで監視する」

 だと思った。ドイツ語だった。俺は全て聞き取れるわけではないが、そこだけ理解した。

そして俺は、この風車付きの犬の家に泊まることになった。

 初対面で斬りかかってきた相手の家にだ。俺、やっぱり夢見てんのかな。
 急に来て泊まれる犬の家って相当なパワーワードだし。
 
「お前は二階の部屋に行け」
「え? それって。いいのか、ウィル」
「……ああ」
「良かったな、カイ! この家で一番いい部屋だぞ!」

 何が良くて何が悪いのかわからない。もう何にもわからない。

「一階はここ?」
「当たり前だろ。馬鹿なのか?」
「………」

 泊まらせてもらう手前、文句は言えないのだが。俺に対する犬人間の不遜な態度はどうにかならないんだろうか? 当たり前なら聞かないんだよ。

「二人はどこで寝るんだ?」
「上だよ」

 更に階上の部屋で寝るらしい。一緒に?
 
 階段に明かりが灯った。なぜかここは電気だ。しかもこれ、センサーライトじゃなかったか?

 階段の足元を照らす橙色の電気が塔の上の方まで連なって見えた。オズを先頭にして次は俺、最後は犬人間の順で階段を上がった。

「この世界はウ……、ウィルみたいな顔の人間? とあなたみたいな? 人間のどっちが多いんだ」

 俺は前を行くオズに向かって聞いた。

「半々かな」
「ここは長閑な場所だけど……、この国の他の場所はどうなんだ。危険?」
「今夜試しに真夜中ここから逃げ出してみろよ。今日は月がないから外は真っ暗だ。目の悪い奴は不利だぞ。夜盗もいれば狼もいる。ついでにウィルは君を逃がさないし雑食だぞ……。実はこいつ、ニンゲンを食うんだ……」
「えっ」
「食わん。見え透いた嘘に騙される奴があるか」
「………」
「立派な大人なんだろ?」

 俺は後ろを向いて言い返したかったが、ジッと耐えた。

 犬人間の年齢は読めないが、動きを見る限り若い気がする。俺の歳を聞いて驚いていたが(驚かれた理由は結局わからなかった)、自分こそ幾つなんだ。これだけ偉そうで年下だったら絶対に許さん。
 唐突に犬人間が後ろから俺の腕を引いてきた。

「あまりオズに近寄るなよ」

 犬人間の嫉妬だ! と勘ぐった俺はこのとき初めて、犬人間と女の仲を怪しんだのだった!

 が、直接聞くのは憚られた。信頼関係とかそういう感じに近い気もする。

 犬人間の方が断然、オズのことを好きっぽい。オズは犬人間の世話をしてる感じがするが、本当の立場はオズの方が上なような気がする。犬人間に言うことを聞かせてるし。

 オズは美人だし、二人は悪くない雰囲気だけど……、人間と犬だし……。そういう考え方ってこの世界だと差別になるの?

 犬人間の片想いなら、ここに二人でいないんじゃないの? わかんないけど。

 聞いたら何でも答えてくれるんだろうか。



 二階にやって来た。

 部屋はひとつ。まず扉が観音開きで異様に重厚だった。この風車の家の扉も観音開きではあったが、それ以上に厳重そうな扉だった。

 オズによって開けられる。

 部屋の中には階下と似た意匠の調度品が並べられていた。また、既に明かりが灯っていた。ーー電気だ。

 壁には金色の額縁に入った風景画が幾つか飾られていた。

 階下もそうだったが、飾られた絵には街や港の風景が多いように思った。どれもこの国の風景ではない気がした。

 俺のいた世界の風景。

 この風車の家もこの部屋の作りも俺の世界のものと大して変わらないんじゃないか? 若干古色蒼然とした感はあるが、電気も蝋燭も。食べ物も。

 外の森も。鳥も。リスも。
 小麦畑も。
 太陽も。
 オズが言っていた、月も。

 同じ。

 目の前の絵の風景はどこの風景なんだ。

 ここは違う世界だそうだ。
 犬人間の存在が物語っている。

 だが、この絵の風景を俺は見たことがある……。

 

「色々思うことはあるだろうが、基本的にここではお前の常識は通じない。下手なことをしたら直ぐに首を刎ねられる覚悟でいろ」

 犬人間が俺を脅しながら、部屋の窓を慣れた手つきで次々と閉めていく。雨戸のようなものを閉めるときに、バンと大きな音が部屋全体に響いた。それで俺はいちいちビクつくのだった。オズを見ると、口元に静かな笑みを浮かべていた。

 犬人間はやっぱり全然俺に優しくない。


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