異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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006-② 捕縛!?

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 遠吠えが聞こえる。

 犬。いや、狼? 遠くの仲間を呼んでいる。遠吠えなんて初めて聞いた。哀愁が漂ってるな。

 遠吠えに返事がない。大丈夫か。お前は寂しくないか。

 犬人間も遠吠えするんだろうか。犬によってはしないというけど。

 鳴けるのなら、俺が死んだときも泣いてくれる?

 なんて。無理か。一日しか一緒にいなかったんだから。いや。一日も経ってなかったな、でも一緒の釜の飯を食べた仲だろがい!

 助けに来い。

 念仏が強まる。念仏は要らん。何の願掛けなの、マジで。

 遠くから怒声と悲鳴が聞こえた。怖いってばよ。俺はゆっくりと顔を上げた。

 が、何も見えなくなっていた。視界が閉ざされたように辺りに煙が充満している。焦げ臭い匂いが鼻を掠める。俺の足元ですか? 俺を燃やしてる? 順調ですか? ふざけんな!

 突然、目の前に若そうな茶色い毛並みの犬人間が現れた。あっ、俺を燃やすのやめたんだ、力技で来たな! と思ったのは、犬人間が俺に向かって剣を振り上げたからだ。

 立派な剣ですね。お幾らですか? なんて言う間も無く。

 剣が振り下ろされた。

 ……結局、俺は火炙りで死ぬんじゃないんだ。

 そもそも飛行機事故で死ぬはずだったんだ、俺は。

 諦めろ、既に終わっていた命だと!
 
 割り切れるか! 諦められるか、死にたくない!

 俺はこんなときでも薄情な犬人間のことを考えてしまうんだ。

 ウィル。

 お前はさ、あのとき俺を殺そうと思えば殺せたんだよ。でもまあ、話を聞いてやろうかって思ってくれたんだよ。

 普通に優しいじゃん……。

 

 そのとき突然、犬人間が俺に覆い被さってきた。えっ。食われる、襲われる!? と思ったら、体重をかけてくるだけ。

 重い。それだけでなくて腐臭を感じた。獣らしい臭いが鼻にツンときて嫌悪感が湧いた。硬い毛が俺の頬を撫でる。ゾワワワワ。

 俺を殺そうとしていた犬人間だったが、どうも様子がおかしい。

 剣が落ちる音がした。恐らくは犬人間の手から。

 犬人間、後ろからやられたらしい。俺を支えにしてくるから、ウゲッ、触るなとなった。

 ていうか。どうなってんの。

 俺は犬人間の肩越しに、大きな黒い影を見た。

 切り付けられた犬人間はゆっくりと俺から剥がれて地面に崩れ落ちた。

 犬人間てのはデカいんだなと思ったのは、倒れるときの音。ドガアン。床が抜けるんじゃないの。

 気味の悪い念仏が谺する中で、人が争うような音はずっとしていた。

 そのとき、パッと俺の顔から何かが外された。
 
「!?」

 目の前には見知った顔。犬の顔。

 黒い毛並みの。

「大丈夫か」

 と聞かれたところで声は出せない。

 そのとき、俺は目隠しをされていたのだと気づいた。

「今、外す」
「………」

 ウィル。

 何でここに。

 困惑する俺をよそに、ウィルが俺から猿轡も外してくれる。そうしたら、聴覚まで戻ってきた。

 人の叫び声。喚き声、呻き声。辺りが騒然としている。

 今頃になってとんでもなく怖くなってきた!

「ぶはぁっ」

 新鮮な空気を吸いたいが、ワガママが言える状態ではない。

 煤が舞っている上に、焦げ臭い。

 念仏は止んでる。煙で見えないが、諍いが起きていることは感じ取れる。

 何なんだ、何が起こってるんだ!

 俺は顔を全部布で覆われていたらしい。

 俺は今まで何を見ていたんだ。やっぱり、夢か?

「先生からお前が攫われたと連絡があった」
「た、助けに来るのが遅いぞ!?」
「元気そうだな」
「全然だ!」
「狐が逃げ切って報告を上げてきた。お前を攫ったのは隣国ダードルのセクトだ。オズとお前を間違えたらしい」
「聞きたいことが増えた……」

 ウィルが俺の体を締めつけている紐を外そうとしてくれている。

「狐は大丈夫なのか?」
「無事だ。狐だぞ」

 どういう意味?

 取り敢えず、助かっちゃった?

 ウィルは腰から小刀を引き抜いて、俺の体をぐるぐる巻きにしていた太縄を瞬く間に切ってくれた。無駄な動きがない。さすがだ。

 俺は体が解放されるのを実感した。ウィルに体を支えられたので、柱に括り付けられて宙に浮いていた状態だったことに気づいた。

 片腕で抱きしめられるように担がれる。ウィルにしてみたら村で駆け寄ってきた子供と同じ扱いなんだろうな、俺は。

 俺の方はウィルのふわふわの首にしがみつく。とんでもなく安心した。

「ふっ」

 笑われた。言語化できない俺の気持ちまでわかるのか。

「む……」

 恥ずかしいな。なんかやな感じ。

 周りの騒々しさとは一線を画して、そのときの俺の気持ちは落ち着いていた。

「おとなしいな」
「疲れたんだ」
「そうか。安心するのはまだ早い。ここを抜けてからだ」

 降ろしてくれ、ともいえない。
 頭がぼんやりしている。並走したら足手纏いになるような気がした。
 だからといって、今の俺はどう考えてもお荷物。
 しかし、俺を置いていってもいいなんて、言えない雰囲気。俺を抱えるウィルの力が強いから。

 煙たくて視界の悪い教会の中。

 感情を叩き合う音がする。

 まだ危機は去ってない。

 俺とウィルは黒いケープを着た大男達に取り囲まれた。



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