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011-③ 敵襲!
しおりを挟むかまびすしい鳥の鳴き声で目が覚めた。カーテンを閉め忘れていた。部屋の中が既に明るかった。
「………」
よく寝た。伸びをしてから起き上がり、窓辺に立つ。
窓の外は曇り空だった。遠景にはティタジェイルの街と、丘。
窓の外枠に鷲のような大きな鳥が止まっていた。俺と目が合うと、飛んでいってしまった。
昨日は着替えずに寝てしまった。そのせいで、折角の質のいい服が容赦なくクシャクシャになった。加えて昨日、猫人間から化粧を塗りたぐられたのを忘れていた。化粧が固まって、顔が上手く動かない。
シャワーを浴びることにした。タイル張りのシャワールームはお菓子の家の浴室など比べものにならないほど広い。
温度調節は難しかった。
「あっつ……」
そのうちに慣れるかな?
シャワールームには大きな全身鏡があった。
今日も俺の体に異常はなし。
筋肉が落ちてきた。運動もさしてしてないし。
昨日のオズは、鏡の間に入ってきた途端に場の空気を一変させた。頭巾を外さずとも、妖艶な美しさと存在感によって相手を圧倒する。それがオズ。俺なんかより余程ウィルの隣が似合う。
ウィルも目立つからな……。誰に対しても偉そうだから……。
見た目からして小さい俺はみんなの視界にすら入れてもらえなかったわけで。
論外と言われたような気分。プライド、へし折られてます。
初めからあの雰囲気じゃ、これから先、上手くやっていけそうにない。
まあ、いいか。気に入られたくてここに来たわけじゃないし。
窓の桟に腰掛けて、外壁の向こうに見える街の一角を見つめる。レストランらしき店の前で大勢が食事しているのが見えた。
腹が減ったな、と思う。
トントンとドアが叩かれたので、躊躇わずに開けにいった。
扉の前に、ジークが立っていた。
「おはようございます」
「おはようございます……」
これが犬人間、ジークとの初めての会話だった。
俺はこの国の言葉で簡単な挨拶程度はできるようになっていたが、それでもマルチーズ親子以外で使ったことはなかったんだ。少しドキドキした。
ジークから渡されたのは学校給食のような朝飯だった。
牛乳、パン、ミートボール、サラダ。
完璧な栄養源だ。俺は素直にトレーごと受け取った。
「ありがとうございます。ウィルはもう仕事ですか?」
英語で聞いたら、頷かれた。
「どうして俺が起きたってわかったんですか?」
「一時間おきに扉を叩いた」
「あ、そうなんですか」
さっき時計を見たが、もうすぐ正午だ。俺は立派に迷惑をかけていたらしい。
「すみません。寝過ぎました」
「いいや」
ジークへのウィルの信頼は厚いようで、コンラートがいなければ何でもジークに託けるイメージがある。
しかし、俺とジークとの関わりはこれまでゼロだ。これ以上話すことがないので、俺は取り敢えず引こうとした。
「カイ。ちょっと待って」
呼び止められた。ジークから名前を呼ばれたのも初めてだ。
「はい」
「今日からの予定について話しておきたい」
ジークが流暢なアメリカ英語を話すことをここで初めて知った。
「あとで君の教師を紹介したい。早速今日から授業を始めてもら……」
そのとき、地鳴りのような音が聞こえた。振り返って、部屋の奥の窓の外を見る。
「……!?」
窓の向こうの丘の上に噴煙が立ち昇っていた。
曇り空に閃光が上がって、再び地鳴りが轟く。
「何あれ!?」
ジークを見たら、廊下に佇んだまま身動ぎひとつしていなかった。
「行かなくていいんですか? これって非常事態じゃなくて!?」
「訓練だ」
「え?」
「よくあることだ。気にするな。それに、私は君の警護担当だ。私が君から離れることはない」
上司に言われたから仕方ないのだ、とでも言いたげな感情を殺した無表情。
ジークはウィルほどではないが口調が尊大だ。
黒と茶色と白が混ざった毛並みはウィルより長めでスカしているように見えるのを、初めはカッコいいと思ってしまったんだ……。
好かれていないとわかってからは、俺から近寄るのを避けていた。ウィルの話から、俺の存在そのものがアルファにとって面倒の対象であるということがわかっている。
ジークはアルファだ。匂いでわかる。
ジークは、動揺しまくる俺が持っていたトレーを奪うように持って、部屋の中にずんずんと入ってきた。
「……オズを狙ってラベ川からネズミが入ってくるようになった。今のところ専門部隊だけで対処できている」
「そういうのは訓練て言いませんよ、人が死ぬかもしれないのに何言ってるんですか。ネズミって……」
「キフィソスのレンジャー部隊だ」
「レンジャー……」
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