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014-② 誓い!
しおりを挟む俺はウィルを見る。茶色の大きな瞳。俺は視線を床に落とした。
「無事ならいいよ……」
「いいって顔をしてないな?」
「……俺の許可なく部屋に入ってくるなって言っただろ」
俺が今できることは憎まれ口を叩くことだけ。
「お前が寝てる間に出るつもりだったんだ」
「俺が引き止めた?」
「ああ」
「そんなわけあるか」
と毒を吐きながら、夜すがらウィルに張りついていたおかげで体が楽になっている事実を俺は否定できない。
癪だが、俺はたぶん無意識下でウィルを求めている……。
「カイ」
「何?」
「俺は戻ってきたぞ」
「だから、何。……うわっ」
脇に手を挟み込まれて持ち上げられた俺はウィルの膝の上に跨り、ウィルを見下ろす格好になる。
「俺を待ってたんだろ」
そう自信たっぷりに言うウィルを黙って見つめる。
喋る犬……。
「聞いたぞ。日に何度も、俺の帰りがいつになるのかをジークに確認してたんだってな。そんなに体がつらかったのか? 早く俺のものにならないからだ……」
真っ直ぐなウィルの言葉が俺の心を突き破る。不意打ちも甚だしい。
俺は急いで顔を両手で隠した。
「恥ずかしいんだよ、お前は」
「一人にして悪かった」
「大丈夫だよ、俺は全然。一人じゃなかった。いつもみんなが助けてくれるから」
俺は顔を上げて、しっかりとウィルを見つめる。
「お前の方こそ大丈夫だったのか? 戦いに……、出た?」
「俺は後始末に行っただけだ。戦闘はしてない」
「本当か?」
「本当だよ」
ウィルには同じ場所に停留するイメージがない。
口では俺を必要としているようなことを言うが、何かあれば容易に俺から離れて、どこかに行ってしまう。
異世界から来た俺が無力で足手まといだから。
俺にはウィルを助けることができない。ウィルと同じラインには立てない。
誰かのために、なんて余裕が俺にない。
どこに行っても人に(野鳥からも)囲まれるウィルはきっと俺の知らない世界で信頼を勝ち得てきた。
がんばってるんだよな、王子様。俺は今のままじゃウィルには敵わない。
だから、もうしばらく一緒にいてくれない? 寂しい? 寂しかったよ。そりゃそうだろ。俺はお前といるのが一番気楽なんだ。
そう心の中で言い訳をしながら、しばらくウィルの胸の中にいた。
ウィルの背中に回した手が布越しでもその体毛に埋もれた。
俺はこれまで知らなかった。
なんて。
なんて抱き心地が良くて気持ちいいんだ、この生き物は……!
俺はウィルの胸にもぞもぞと顔を埋める。
「カイ?」
引っついたことが照れくさくなって、体を起こして急いで鼻をウィルの鼻にくっつけた。これはウィルを驚かせるためのスイッチだから……。
「いつも素直になれなくてごめん。俺はお前がここに戻ってきてくれて嬉しいよ、ウィル」
言えた。俺の気持ちは少しだけ伝わったかな。
すると。
ペロッと唇を舐められた。
「……っ」
両腕を掴まれていたこともあって避けられなかった。
ウィルは何も言わずに俺の唇をペロペロ舐め続ける。
何だ、これ。
俺はその場に岩のように固まった。
目を閉じて、口をキュッと結びながら、ウィルの戯れが終わるのを待つ。
一向に終わらない。過ぎていく時間がとんでもなく長く感じた。
犬相手なら、ここまではアリなのではないだろうか……?
でも、ニンゲンなら?
!?
いよいよ、わからなくなってきたぞ!?
ウィルは責務とやらを果たすために俺との結婚を望んでいた。
そこに特別な感情はなかったはずだが、俺のことを大事に思ってくれていることは確か。
ウィルが俺にスリスリしてくるのは犬だからだと思い込むようにしていたが、他で見たことはない。俺はここから出ないから。
見たことがないのは、これもそう。
俺はこれの意味するものを考えねばならない。
これはキスじゃないのか……?
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