異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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015-③ 覚醒!

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 ……あんなに感情を昂らせたジークを見たのは初めてだった。

 俺はジークの説教をウィルの腕の中で聞いたのだが、ジークは相手が俺であることについては怒っていなかったんだ。そこはとっくに諦めてくれたらしい。

 ジークの心配は、俺へと向けられていた。

 今後の俺の生活や婚礼の予定に影響するらしい。ついでに、真面目なジークの倫理に婚前交渉が反していたということもある。

 フライングってそういうこと?

 これから何が起こるって?
 
 いやいや、婚前交渉以前の問題で、相手が犬とかない、から……?

 え? 本当にないのか、俺!?

 ウィルにスリスリされながら、俺は青ざめる。

「やめろってば」
「お前の匂いは麻薬だな……」

 スリスリ……。やめてくれ、また変な気分に……。

 なくない、よな!? 俺、うっかり飛び越えちゃった!?

 そのあと唐突に、やらねばならない仕事を思い出した、とウィルが言い出した。

「えっ」

 去り際があまりにも呆気ないように思ったので、俺からウィルの腕を引っ張って聞いた。

「次に会えるのはいつなんだ」
「今晩また来る」

 そして、スリスリでなくて、ペロペロのキスもどきをされた。

 受け入れてしまう、俺。

「ホントに?」
「ああ」
「そっか、わかった」

 俺の頭を一頻り撫でてから、ウィルは部屋を出ていった。

 残されたジーク。燃え尽きたかのようだ。椅子に座って、脱力している。

 その周りを猫二人がハタキのようなもので祓っていく。部屋の空気が心なしか綺麗になっていく。

 俺は寝巻きから平服に着替えて、ジークの元へ。

 ジークはズーンと沈んでる。

「……私は番持ちだ」
「聞きました」
「しかし、今回は……」

 ジークは六階のエレベーターホールに着いた瞬間に、咽せ返る俺の匂いで倒れそうになったという。

「殿下は……、向こう見ずなところがあり……。今後は過度な接触を私の目が見える範囲で式まで許さない! 適宜厳重に注意していく!!」
「……あ、はい」

 何でそんなに必死。

 責任ある立場なんだな。ジークも大変だな。と、俺は他人事。




 そして。


 
 ……今朝も起きたらウィルが俺の下にいた。

 ぐっすりだな。

 連日真夜中まで仕事、の王子様がお疲れ気味だ。

 今朝の俺はウィルが起きる前にベッドを離れたので事なきを得た。

 ウィルが起きる段になって、見計らったようにジークが食事を届けに来てくれた。

 ウィルは起きるときに俺がベッドにいなかったことが不満そうだった。

 朝食を部屋で一緒に摂った。配膳係であるジークと三人で。

 二匹の犬人間と朝ご飯。……絵本の世界は絶賛継続中だ。

 間もなく、ヒョウの先生が来た。今日は算術の授業である。

 ウィルとジークは一旦部屋を出ていった。その後、授業が終わる時間になってちょうど、ジーンを連れたジークが現れた。しばらくしてウィルも一仕事終えて戻ってきた。

 忙しい二人だ。俺なんかに時間を割いて。

 長い回想をしたが、とにかく今ここである。

 俺は婚礼用衣装を試着中……。

「何で急に考えを変えたんだ?」
「え?」
「何でおとなしく結婚する気になったんだ?」
「ああ……」

 ウィルのくせに普通の感覚でモノを言ってきたな? 感心したぜ。今更だけど……。

「お前が俺に変な呪いをかけてるからだろ」

 言い訳に聞こえるかな。

「かけてない」
「考えたんだ。お前と一緒にいるのは悪くない。今の俺はお前がいないと生きていけないし、アレをしなきゃいいわけだしな……」
「アレ」
「また殴るぞ、お前」

 ウィルは浮かれているらしい。

 俺のことが好き。言わせたのは俺。
 
 それってどんな「好き」なんだ? 俺と同じ気持ちなんだろうか?

 そんなことを考えていたら、だ。

 突然、俺の匂いがブワッと辺りに広がってしまった。自分でもわかるくらいに。

「カイ……ッ!?」

 え? 今? 何でだ?

 ジーンが急いで俺から離れていく。

「すみません。あの、ジークさん、これは……」
 
 すかさずジークが猫を呼ぶ。ジーンは焦るジークを見て声高に笑っている。

「これかぁ、ジーク。確かに一大事だ。放っておいたら死人が出るレベル。式の前に発動させるなんて殿下もやりますね。カイ様、無意識でおられますよね。コントロールできないんでしょう。これが男オメガ……、殿下のフェロモンに反応してるんですね。……いやん、愛だわ」

 愛。……愛!?

「はあ!?」
「匂いづけをしなくてこれだ。殿下も罪深い」

 ジークに睨まれて、ウィルは満足そうに笑ってる。
 
 端的に言って、俺の匂いが以前に増して酷くなったということ。

 結婚式はこれからだというこのタイミングで、更に外を歩きにくくなったってこと。

 ジークが絶望していたのはそこ。

 俺はウィルから与えられた刺激でフェロモンを発するから、式で暴発する可能性がある。

 予測不可能な事態を引き起こす可能性があるということだ。

「大半の招待客から勘違いされるな?」
「勘違いって何を! ……笑うな」

 ニヤニヤしているウィルが放出するフェロモンの量を下げたのがわかった。

「悪かった」
 
 ウィルは全然悪いと思ってる顔をしてない。

 この犬……!

「殿下がいない間はジークがカイ様のおそばにいることが多い?」

 その質問は微妙に答えにくいと思っていると、矢継ぎ早にジーンが言う。

「ジークとカイ様が番に見えてしまうかも」
「それはない」
 
 俺は間髪容れずに断言する。ウィルは笑うだけ。

 ジークはジーンを睨んで、ウィルに耳打ち。二人でコソコソしてるかと思ったら、ウィルが座っていた一人用のソファから立ち上がる。

「時間だ。ジーン、あとは頼む」

 それから俺の頭をギュッと片手で押さえつけてくるように撫でてくる。
 ウィルはすぐに俺の前からいなくなる……。
 
「またしばらくグランバーグを離れるが、いい子にしてるんだぞ」
「お前がな!?」
「体力をつけておけ」

 ウィルには細い細いと言われるが、タヌキ先生のおかげで体力と筋力はだいぶ戻ってきたんだぞ。

 ジークもウィルと一緒に出ていった。

 室内ではジーンによる衣装の手直しが再開した。

「ジーンはジークと全然性格が違うんですね」

 話を変えよう。

「まあ、そうですね。ジークはアルファです。私は違うので」
「え」

 そういえば、二人の顔つきは似ているが体の大きさも毛の色もだいぶ違う。ジークは黒と茶色と白が混ざった毛並み。ジーンの毛は薄茶色。

「母親が違うんです。ジークの母親はジークを産んでから間も無く産後の肥立が悪くて死にましてですね。あ、私の母は健在です」
「あ、そうなんだ……」

 ジークの母親は男オメガに違いない。

 出産で死んだってことはやはり、男の出産はハイリスク……?

 そりゃそうだろ!

 
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