異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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015-④ 覚醒!

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 ジーンが衣装箱から帯のようなものを取り出して、俺の体に当てがってくる。

「オズ様が最初に出会ったのがジークと殿下でした」
「オズ?」
「ジークの番が決まってすぐのことでして。女オメガとなってしまった彼女は曰くつきになってしまいました」
「どういうこと?」
「ジークの番がそれはもう嫉妬深い方ですから、オズ様には数々の嫌がらせが」
「え? え?」

 その話は知らないのだが。

「オズ様はなんせ、聖女様そっくりですから」
「………」
「ヴァルラはオズ様を保護していました」

「国が保護」

 お姫様扱い……。オズ、そんなの自分のことじゃないか。俺はそこまでじゃないぞ。

「何せ曰くつきですから」

 よくわからない。

「オズはジークの番になるかもしれなかったってこと……?」
「平たく言うとそうなのですが。現状は違いますよね」

 オズの相手はウィルじゃなかった?

「オズ様は殿下預かりになりました」
「ウィルの? どういうこと?」
「殿下から聞いてないんですか? 大事なことですよね。何で?」
「だって俺は」

 言いかけて、俺は口を噤んだ。

 ウィルとオズの関係は何をおいても気になっていた。けれど、聞くのは野暮だと思ったし、二人について俺自身が抱いている感情が何なのかまだうまく説明できなかった。

「殿下を信じてないんですか?」
「信じるって何……」

 スルスルと俺の体から剥がされるように脱がされていく衣装。

「殿下が選んだのはカイ様ですからね?」
「………」

 そう言われるとこそばゆいが。

「……俺が来る前にもう、相性の良さそうなオズと会ってるじゃないか……」
「オズ様は女オメガですしね?」
「体が変化するまで確定じゃないのでは?」
「決めるのは殿下ですから」
「え?」
「え? 違うんですか?」
「え?」

 ジーンは忙しなく動いていた手を止めて、俺に向かってキョトンとした。話が噛み合ってない?

「よくわかんないんだけど。ウィルと一緒に番持ちだったジークもオズのことを気に入ったってこと? それでみんなで混乱したってこと?」

 そんなわけがない。ジークがオズを意識している感じには全然見えなかった……。

「いえ? 番というのは運命で決まっているものなので。ジークの番はちょっと変わってますけど、というのも何度も言いますが大変嫉妬深い女で、ですがジークのような朴念仁にはああいう押しの強い女がお似合いなようです。あっはっは。運命の番ってね、ハタから見ると不思議な関係なんです」

 ジークの番であるオメガが嫉妬深い、ということだけはよくわかった。

 嫉妬。俺も? してない、してない!

「今のオズ様は狂信者からノエル様と同一視されてます」

 ノエル様。

 ……については歴史の授業で習った。ミシェル先生に借りた本にもよく出てきた。
 
 この国の最初の王様と結婚したオメガ。

 女オメガだ。なんとそのときの王様の相手は男オメガではなかった。

 王家に男オメガが求められるようになったのには理由がある……。

 はっきりと明記されてはいないが、最近気づいた。

 やっぱりこの世界でも子供を産めるのは女、そんなの当たり前なんだって。男が出産とかないから。

 教会の祭壇にある彫像の女性は教会のシンボル、アイコンである。

 この世界で神は決して実体化されない。偶像崇拝禁止。

 その代わりの女性像。

 女性像は聖女像と呼ばれている。

「聖女様にオズ様が似ているからこそ、それぞれの思惑とプライドでオズ様が奪い合いされているように見えるんです」
「えっ、奪い合い? ウィルとジークが?」
「その話はもう終わってますってば。今は大局的な話をしています。国家単位の!」
「え?」

 ジーンは衣装をせっせと畳んで衣装箱にしまっていく。

 工房に持ち帰って更に手直しを施すそうだ。俺なんかのために人手を使って……、申し訳ない。

「写真、て言って、わかります?」
「写真? うん?」

 この世界で一度も見たことはないが、ジーンがそう言うからにはあるらしい。

「エギナ共和国に送った、オズ様の写真の複製がミケネによって近隣諸国に出回りました」
「オズのプロマイドがあるんだ!? すごい、アイドルだ……」
「プロマイド? アイドル?」

 元の世界でも興味はなかったけど、バイト先の女の子がアイドル好きで、よくわからない話によく付き合っていた。

「アイドルって何ですか?」
「え? ああ、アイドルっていうのはええと、人気者のことです」
「なるほど。そうですそうです、オズ様はこの国でも諸外国でも大人気なんですよ」

 美人、強い。

「オズはそこまであの像の女の人と似てないと思うけど」
「この国には多くのニンゲンがいますけど、見慣れないとニンゲンなんてみんな同じに見えますよね」
「そうかな?」
「運命の番は違います。早い段階で見分けられます」

 ウィルと初めて出会った日の俺は問答無用で殺されそうになってたけど?

「殿下とオズ様はカイ様が不安に思うような関係でないです。ご心配は無用です」

 また言われた。何で第三者のジーンに言われて俺が安心すると思うんだ。

 ウィルは実際にオズの首を噛んでたし。風車の塔に意味ありげに一緒にいたし。あの場所で何をしていたかなんて二人以外知らないだろ。

 何だかまた腹が立ってきた。
 
「俺が何の心配をしてるって言うんですか……」
「ふふふふふ」

 ジーンは嫌な笑い方をする。俺は俺で凄く嫌そうな顔をしていたと思う。
 
「では、カイ様。今日はこれで終わりです。式当日、現地でお会いしましょう」

 そう言って、ジーンはパチンと衣装箱を閉じた。


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