異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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021-④ 真剣勝負!

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 俺は再びウィルを見る。別れたときのままの格好をしている。いつもは出てないベロをだらしなく出して荒く呼吸している。

 このケモノが走り出したら何が起こるんだ、と俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

「そのままだ。動くな。カイ」

 声がした方向を見ると、懐かしのコンラートがいた。

「コンラート、さん……」

 俺の背後から現れたように感じたが、ここは迷路だ。どこから何が出てくるかわからない。

 コンラートは大剣を持ち、背筋を伸ばして威風堂々として見えるが、片腕がぶらりと垂れている。使えないらしいことを察して、俺は血の気を失った。

 二人でネズミたちと戦ったのか? それとも。

 コンラートが大剣を構え直して俺の前に出た。

「今の殿下は正気ではない。殿下が落ち着くまで、私が殿下のお相手をする」
「え」
「御自身以外の全てのものを破壊する。カイであっても例外ではない」
「コンラートさん!? 無理ですよね!? 左腕、使えないですよね!?」
「使える」
「嘘吐いた!?」

 ウィルは何も持ってない。

 コンラートが跳躍して丸腰のウィルに大剣を掲げて突っ込んでいく。年甲斐もなく! じゃないし! 動きが早くて全ては追えない。

 コンラートが素早く振り下ろす大剣をウィルは悉く躱している。

 あの二人は真剣で何をしてるんだ……。

 コンラートは血縁アルファだからネズミたちと違ってウィルのプレッシャーには負けてないが、……遊ばれているように見える。無理だろ、これは!
 
「コンラート!」
 
 俺が叫んだところで闘いは止まないわけだ。

 ウィルにいたってはやっぱり俺のことがわかってない。俺のことが見えてない? 闘うのを楽しんでる? 相手を選んで?
 
 俺を無視すんな!

 俺がどんな思いでここに来たと思ってるんだ。運命のつがいって、お前にとってそんな軽い存在なのか!!

 コンラートが体勢を立て直すためにウィルとの距離を取るのを俺は待ってた。、俺は駆け出している。

 コンラートがいくら戦闘慣れしているとは言え、片腕でケモノ化したチート持ちのウィルに勝てると思わないぞ、俺は!

 俺はどこを見てるんだかわからないウィルと対峙する。コンラートの前に立つ。

「カイ! やめろ……!」

 今のウィルには俺のことがわからないだって?

 そんなの許せるか!

「カイ!!」

 どこからかジークの声がした。

「カイ! どこだ!!!」
「ここだ! ジーク、早く来い!!!」

 俺の代わりにコンラートが答える。

 なんてったって、今の俺はそれどころではないので。

 俺は喧嘩が嫌いだ。公平でありたいと思いながら、心を乱されるものを排除して生きてきた。

 俺になんてことさせるんだ、この異世界は。

「……っ」

 俺はウィルの一突き目を避けた!

 ウィルが狙うのは俺の首。突き出される獣の手を俺はとにかく避けるだけ。壁際に追い詰められないように。足元を確保しながら。リーチは負けるが、間合いを常に自分のものにして。

 ウィル。何だよ、その目。何なんだよ、そのバケモノみたいな動き。

 俺はタヌキ先生からみっちりと教わった。

「カイ殿は目がいい」
 
 タヌキ先生の踊りのような護身術はこのときのために習った。

 俺が教わっていたことは、相手の動きを読んで、避けること。逃げること。

 この世界に来るまで目がいいなんて言われたことなかったんだけど、タヌキ先生は俺の目の良さを買ってくれた。

 目の前の相手に集中して、周囲から音を消す。

 そうすると、相手の次の動作が見えるようになるんだ。ただ、集中力は直ぐに途切れてしまうから普段は続かない。

 こんな風に命を賭けでもしないとな!

 現王妃の左手はうまく動かないのだそうだ……。興奮状態で我を失った王様の剣で貫かれた。

 体を張って止めたのだそうだ、王様の暴走を。

 王様の腹心からお前も行けと命令されて、立場の弱かった現王妃は血生臭い戦場に連れていかれて……。

 

 彫像の間はとても広かった。みんな、あの女の彫像に何を祈るのかって。

 赦しを乞うんだ。

 聖女の力はアルファの獣の本性に太刀打ちできなかった。

 アルファを止めるのには血が必要だ。彼女は命を差し出した。

 運命の番は、贖罪を背負い合うもの。

 力の強い直系アルファの番は男でないといけないんだ。命はひとつだから。

 強い男でないと。

 いつの時代も献身は美徳なんだってさ。

「カイ!」

 ジークの声にアンバーの声が重なった。

 次に俺が繰り出すのは、現国王の暴走を止めた、現王妃の必殺技。

 タヌキ先生が、現王妃から俺に伝えるよう言われていたんだって。

 あの人は俺のことが嫌いなんじゃなかったっけ?

 さあ?

 もうどうでもいいや、そんなこと。


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