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城と王子と従者と精霊
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街道をしばらく進み、街に辿り着いた。城下町だ。遠くに城が見える。遠い所為なのか少し霞がかって見えた。
「やば……まじ城じゃん……」
まぢやばくない? ちょっと海外の観光スポット紹介でしか見たことないやつですよあれは。白に金の縁取り、屋根がダークブルーな、いかにもなお城だ。さすがに怖じ気付く。
城までは、城下町にある門を通るしかないようだ。門は開かれているものの、そう楽に通してはもらえないだろう。
「どう、ど、どうする、の?」
私は挙動不審になりながらシルフィを見下ろした。城下町というだけあって人通りも多く、私はジャージで手ぶらでここに立っている現実がなんだか情けなくなってきてしまった。
「え? お城に行くんでしょ?」
シルフィは迷いなく門へ向かう。私も不安になりながら追った。
広い通りを人混みに紛れながら進む。右へ向かう人やら左へ向かう人やらにぶつからないよう、日本のスクランブル交差点で鍛えた回避術を駆使した。何事も使い道はあるものだ。
そうして門の前に到着。私は達成感を覚えつつ、シルフィへ嬉々と声を向けた。
「よし! それじゃシルフィ、まずどうやって話を、ってあれ!?」
シルフィは既に何やら門番と話をしている。というより先へ進もうとしたのを止められている感じだ。
「通してよ! 僕はエコを連れて来たんです、とにかく王様と話をさせてください」
「駄目だ。許可証の無い人間を通すわけにはいかない」
鎧を着た門番は頑なだ。シルフィは門番を憎々しげに睨んで肩を怒らせた。
「もー! だから、エコは特別なんだってば! 王様も見てくれれば分かります!」
「シルフィ、ストップ!」
私は慌てて二人の間に入ると門番へ向かって頭を下げた。その間に気持ちを切り替える。私は機械、ただ仕事をこなすだけの機械だと言い聞かせる。職場でも何度も繰り返したこと、染みついた習慣は私の頭をすぐに会社員へと引き戻した。心は鉄。何を言われても平気だ。
「私、飯降絵子と申します。お分かりになるとは思うのですが、実は私、ちょっと特殊な体質でして、ここへ助けを求めるよう言われて来ました」
「特殊?」
門番は疑わしげに私を観察した。それから鼻でせせら笑う。
「確かにその恰好は特殊だが、フン、たかが娘じゃないか。子供が二人で何を考えているのか知らんが帰れ。王はお前らと違って暇ではない」
全く取り付く島もない。というか、私が魔力を垂れ流しているというのに彼は分からないのだろうか? 私はじっと門番の目を見つめた。彼は鬱陶しそうに溜め息を零す。
「何だ。文句でもあるのか? あまり邪魔をするようなら私もそれなりの対応をしなければならないぞ」と右手を腰の剣に当てた。シルフィは恐れず食って掛かる。
「だから! とにかく王様に会わせてくれれば」
「分かりました!」私はシルフィを押し止めた。「業務中に大変ご迷惑をお掛けしました。それでは失礼します。行こ、シルフィ」
私はシルフィの手を引いて門から離れた。背中に重い視線を感じる。逃げるように、建物の影を曲がって細い通りに入って、やっとシルフィの手を離した。彼は不満そうだ。
「エコ、何で? お城に行かなきゃいけないんだよ」
「分かってる。でも駄目だ。他の方法を考えないと」
腕を組んで考える。まさか魔力垂れ流し状態が分かってもらえないとは予想外だった。シルフィとレドはすぐに気付いていたのでてっきりそれが普通なのかと思っていた。二人とも本当に凄いんだな。改めて見直した。
「やば……まじ城じゃん……」
まぢやばくない? ちょっと海外の観光スポット紹介でしか見たことないやつですよあれは。白に金の縁取り、屋根がダークブルーな、いかにもなお城だ。さすがに怖じ気付く。
城までは、城下町にある門を通るしかないようだ。門は開かれているものの、そう楽に通してはもらえないだろう。
「どう、ど、どうする、の?」
私は挙動不審になりながらシルフィを見下ろした。城下町というだけあって人通りも多く、私はジャージで手ぶらでここに立っている現実がなんだか情けなくなってきてしまった。
「え? お城に行くんでしょ?」
シルフィは迷いなく門へ向かう。私も不安になりながら追った。
広い通りを人混みに紛れながら進む。右へ向かう人やら左へ向かう人やらにぶつからないよう、日本のスクランブル交差点で鍛えた回避術を駆使した。何事も使い道はあるものだ。
そうして門の前に到着。私は達成感を覚えつつ、シルフィへ嬉々と声を向けた。
「よし! それじゃシルフィ、まずどうやって話を、ってあれ!?」
シルフィは既に何やら門番と話をしている。というより先へ進もうとしたのを止められている感じだ。
「通してよ! 僕はエコを連れて来たんです、とにかく王様と話をさせてください」
「駄目だ。許可証の無い人間を通すわけにはいかない」
鎧を着た門番は頑なだ。シルフィは門番を憎々しげに睨んで肩を怒らせた。
「もー! だから、エコは特別なんだってば! 王様も見てくれれば分かります!」
「シルフィ、ストップ!」
私は慌てて二人の間に入ると門番へ向かって頭を下げた。その間に気持ちを切り替える。私は機械、ただ仕事をこなすだけの機械だと言い聞かせる。職場でも何度も繰り返したこと、染みついた習慣は私の頭をすぐに会社員へと引き戻した。心は鉄。何を言われても平気だ。
「私、飯降絵子と申します。お分かりになるとは思うのですが、実は私、ちょっと特殊な体質でして、ここへ助けを求めるよう言われて来ました」
「特殊?」
門番は疑わしげに私を観察した。それから鼻でせせら笑う。
「確かにその恰好は特殊だが、フン、たかが娘じゃないか。子供が二人で何を考えているのか知らんが帰れ。王はお前らと違って暇ではない」
全く取り付く島もない。というか、私が魔力を垂れ流しているというのに彼は分からないのだろうか? 私はじっと門番の目を見つめた。彼は鬱陶しそうに溜め息を零す。
「何だ。文句でもあるのか? あまり邪魔をするようなら私もそれなりの対応をしなければならないぞ」と右手を腰の剣に当てた。シルフィは恐れず食って掛かる。
「だから! とにかく王様に会わせてくれれば」
「分かりました!」私はシルフィを押し止めた。「業務中に大変ご迷惑をお掛けしました。それでは失礼します。行こ、シルフィ」
私はシルフィの手を引いて門から離れた。背中に重い視線を感じる。逃げるように、建物の影を曲がって細い通りに入って、やっとシルフィの手を離した。彼は不満そうだ。
「エコ、何で? お城に行かなきゃいけないんだよ」
「分かってる。でも駄目だ。他の方法を考えないと」
腕を組んで考える。まさか魔力垂れ流し状態が分かってもらえないとは予想外だった。シルフィとレドはすぐに気付いていたのでてっきりそれが普通なのかと思っていた。二人とも本当に凄いんだな。改めて見直した。
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