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女王様の言うことは
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私は疲れ切ってベッドに入り、突っ伏した。長く息を吐く。ユリスも最近は私の人権を守ってくれていたのに、また逆戻りしてしまったみたいだ。慣れたけど、まるで私が人じゃない方が良いみたいに聞こえてちょっと辛い。本当に石とか、腕輪みたいな道具なら良かったんだろうな。
「はあ……」
「随分と長話だったな」
「んわあ!?」
驚いた拍子に危うくベッドから落ちかけた。ミケは片肘を突いて自分の頭を乗せて、テレビでも見るように私を見ていた。
「な、何、起きたの?」
「起きてたんだよ」
「いつから?」
「ずっと。最初から」
「じゃ、じゃあ寝たふり?」
「そ。だって面倒臭そうだったんだもーん」
ミケは悪びれもなくそう言った。賢いなあ。私は苦労した自分がちょっとアホみたいに思えた。
「さすがミケ……」
「あの女王ちょっと厄介だな」
ミケは表情を曇らせた。私は彼の言うことがよく分からない。
「え? カナンさんが?」
「あれはさ、ただ自分が楽しいことだけに全力尽くすような人間だ。ああいうのが一番厄介なんだよ」
「そうなの?」
彼の見ている世界は私とは違うらしい。ただぼんやり流されていた自分がちょっと恥ずかしい。ミケは真面目なトーンで続けた。
「金も立場もあって自分自身はどうでもいい、ただひたすらに暇を潰す手段を求めてる。ああいうのは理屈じゃねえからな。取引しようたって取引になんねえ」
「悪い人じゃないと思うけど」
「それはそうだ。でも場合によっちゃ悪い敵になるぞ。気を付けた方がいいな」
「わ、分かった」
私は念の為胸に留めておくことにした。カナンさんを信用していないわけじゃないけど、ミケの言うことが的外れとも思えない。
ミケは黙って私の方をじっと見ている。
「……何?」
「んー。あのさ、あんたとユリスってどういう関係なわけ? 愛人? それならそうと最初から教えて欲しかったんだけど」
「あい!? 全っ然違います!!」
あまりに突拍子もない言葉に叫んでしまった。夜だし普通に近所迷惑、って近所無いんだった。城だった。ミケは何故か疑いの眼差しを向けてくる。
「逆に怪しいぞその否定」
「本当に無いから。本当に全く何も無いから。怪しいことも何も無い! ただ利害の一致で一緒にいるだけ!」
「ふーん。それにしちゃ随分とご執心だろ」
「え。ああ、だって、私なんて道具みたいなものだし」
「道具みたいな? ほー。そういう特殊な……」
「違うから」
特殊な何なのかは聞きたくないので早々に遮った。二人して何の話をしているんだ本当に! 私は深呼吸をして、改めて否定にかかる。
「とにかく。ユリスと私は必要だから一緒にいるだけ。ユリスは多分……私のことはそんなに好きでもないんじゃないかな。分からないけど。嫌われてはいないはずだけど」
嫌いな相手に頭を撫でさせたりはしないよね。しない、よね。嫌われてはいないはず。ちょっと不安になってきた。こんな状態で愛人云々なんてそれこそ冗談みたいな話だ。
「……まああんたらの事情はともかく」
ミケは頭を掻いて息を吐いた。
「オレの客観的な視点で見るとそう見えるってことだからな。本当はどういう関係でもいいけど立場を分かりやすくした方が良いんじゃないの? それこそ世話係とかでも良いしさ。よく分かんねえから変に邪推すんだよ」
「そっか。確かに。色々曖昧だから良くないんだよね。不便だし……相談してみるよ。ありがとう」
外からどう見えるかなんて自分たちでは分からないものだ。年も恰好もバラバラの私たちを見て変な想像をされてもおかしくはない。誤魔化すにしても口裏を合わせておいた方が何かと便利なはずだ。次会ったらユリスに相談してみよう。
その後は適当にだらだらしているうちに二人揃って寝入ってしまった。こんなにだらけてばかりいるのにやけに疲れるのは何でだろう……?
「はあ……」
「随分と長話だったな」
「んわあ!?」
驚いた拍子に危うくベッドから落ちかけた。ミケは片肘を突いて自分の頭を乗せて、テレビでも見るように私を見ていた。
「な、何、起きたの?」
「起きてたんだよ」
「いつから?」
「ずっと。最初から」
「じゃ、じゃあ寝たふり?」
「そ。だって面倒臭そうだったんだもーん」
ミケは悪びれもなくそう言った。賢いなあ。私は苦労した自分がちょっとアホみたいに思えた。
「さすがミケ……」
「あの女王ちょっと厄介だな」
ミケは表情を曇らせた。私は彼の言うことがよく分からない。
「え? カナンさんが?」
「あれはさ、ただ自分が楽しいことだけに全力尽くすような人間だ。ああいうのが一番厄介なんだよ」
「そうなの?」
彼の見ている世界は私とは違うらしい。ただぼんやり流されていた自分がちょっと恥ずかしい。ミケは真面目なトーンで続けた。
「金も立場もあって自分自身はどうでもいい、ただひたすらに暇を潰す手段を求めてる。ああいうのは理屈じゃねえからな。取引しようたって取引になんねえ」
「悪い人じゃないと思うけど」
「それはそうだ。でも場合によっちゃ悪い敵になるぞ。気を付けた方がいいな」
「わ、分かった」
私は念の為胸に留めておくことにした。カナンさんを信用していないわけじゃないけど、ミケの言うことが的外れとも思えない。
ミケは黙って私の方をじっと見ている。
「……何?」
「んー。あのさ、あんたとユリスってどういう関係なわけ? 愛人? それならそうと最初から教えて欲しかったんだけど」
「あい!? 全っ然違います!!」
あまりに突拍子もない言葉に叫んでしまった。夜だし普通に近所迷惑、って近所無いんだった。城だった。ミケは何故か疑いの眼差しを向けてくる。
「逆に怪しいぞその否定」
「本当に無いから。本当に全く何も無いから。怪しいことも何も無い! ただ利害の一致で一緒にいるだけ!」
「ふーん。それにしちゃ随分とご執心だろ」
「え。ああ、だって、私なんて道具みたいなものだし」
「道具みたいな? ほー。そういう特殊な……」
「違うから」
特殊な何なのかは聞きたくないので早々に遮った。二人して何の話をしているんだ本当に! 私は深呼吸をして、改めて否定にかかる。
「とにかく。ユリスと私は必要だから一緒にいるだけ。ユリスは多分……私のことはそんなに好きでもないんじゃないかな。分からないけど。嫌われてはいないはずだけど」
嫌いな相手に頭を撫でさせたりはしないよね。しない、よね。嫌われてはいないはず。ちょっと不安になってきた。こんな状態で愛人云々なんてそれこそ冗談みたいな話だ。
「……まああんたらの事情はともかく」
ミケは頭を掻いて息を吐いた。
「オレの客観的な視点で見るとそう見えるってことだからな。本当はどういう関係でもいいけど立場を分かりやすくした方が良いんじゃないの? それこそ世話係とかでも良いしさ。よく分かんねえから変に邪推すんだよ」
「そっか。確かに。色々曖昧だから良くないんだよね。不便だし……相談してみるよ。ありがとう」
外からどう見えるかなんて自分たちでは分からないものだ。年も恰好もバラバラの私たちを見て変な想像をされてもおかしくはない。誤魔化すにしても口裏を合わせておいた方が何かと便利なはずだ。次会ったらユリスに相談してみよう。
その後は適当にだらだらしているうちに二人揃って寝入ってしまった。こんなにだらけてばかりいるのにやけに疲れるのは何でだろう……?
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