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船上
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船旅三日目。ラウロに言われて例の小部屋で魔力を提供していると、上が騒がしいのに気付いた。
「どうしたんだろ」
「終わりました。上に行きましょうか」
狭くて急な階段を上がり、ハッチを開けて甲板に出た。ミケの「追い出せ追い出せ」という声とシルフィがわあわあ言う声が聞こえる。
「一体何が……うわぁ!?」
中央の甲板に小さな魚が大量に乗り上がっていた。ミケやハインツがデッキブラシを使って外へ放り出すも、魚は続々飛び乗る。私は手伝おうと駆け寄った。
「従者くん、これどうする!? 食うか!?」
ミケがラウロを見ながら叫んだ。ラウロは顔をしかめる。
「いりません。魔物が寄って来るとまずいので早く追い出してください」
言った途端、船がぐわんと揺れた。魚を掴もうと腰を曲げていた私はよろけてしまう。
「おっと。大丈夫?」
ハインツが支えてくれたので転ばずに済んだ。
「あ、ありがとう。でも今のってもしかして……」
今度は明らかに何かがぶつかっている衝撃があった。船が大きくぐらついて、私は咄嗟にシルフィの姿を探した。
「シルフィ! 大丈夫!?」
「うん」
シルフィは揺れる船の中でもしっかり踏ん張って立っていた。体幹が強い。私はハインツに支えてもらわないととても立っていられなかった。
「相当な大きさだな」
ユリスが縁に捕まりながら海の方を覗き込んでいる。ラウロは魔法で魚を全て海へ放り出すと、ユリスの下へ駆け寄った。
「魚の群れが、魔物に追われてここに飛び込んだのでしょうね」
「だろうな」
魚もいなくなったしこれで一件落着、と思いきや、また船が大きく揺れた。ラウロは甲板を駆けて、ユリスとは別の方から海を覗き込んでいる。
「どうやら逃がしてはくれないようですね」
「ど、どうするの?」
不安になって聞くと、ラウロは私を見て微笑んだ。
「大丈夫ですよ」
その微笑みに私は嫌な予感がした。どう大丈夫なのか聞こうとするも、シルフィが、
「僕も手伝う!」
強い眼差しで、召喚の本を抱えてラウロを見上げていた。
「召喚士、お前は引っ込んでいろ」ユリスはシルフィを押しのけると、ラウロの目をじっと見た。そして静かに言う。
「ラウロ、魔物は真下だ。手の出しようがない」
「そうですか。では仕方ありませんね」
ラウロは何でもないことのように言って、シルフィに「万が一の時はお願いします」と声をかけた。シルフィは頷く。
「え、ラウロ、何かするの?」
私が問うも、ラウロは私の方を見向きもせず海を見つめた。
「ねえ、何する気なの?」
「……木偶、エコを捕まえていろ」
ユリスが命じるように言って、ハインツは素直に私の体に腕を回した。私がまた問いかけるより早く、ラウロは甲板から海へと飛び込んでいた。
「え? う、嘘」
私は信じられない光景に混乱した。ただでさえ海の中は危ないのに、この状況で飛び込むなんて自殺行為だ。私は咄嗟にユリスに怒鳴っていた。
「何で、ちょっと、危ないんじゃないの!?」
「このままでは船が沈む。ラウロには直接魔物を仕留めに行ってもらっただけだ」
「そんなの、いくら魔法が使えるからって無理に決まってる! 何で行かせたの!」
私以外、海に入ったことがある人はいないはずだ。慣れない海中で魔物と戦うなんてきっとすごく難しい。でも何か勝算があるのかもしれない、そう思って聞いたのに、ユリスの答えは
「他に方法はない」
それだけだった。唖然とした。信じられなかった。
船がぐらぐら揺れる。私、また何も出来ない。立っていることすら出来ない私に、何が出来るっていうんだろう。
「どうしたんだろ」
「終わりました。上に行きましょうか」
狭くて急な階段を上がり、ハッチを開けて甲板に出た。ミケの「追い出せ追い出せ」という声とシルフィがわあわあ言う声が聞こえる。
「一体何が……うわぁ!?」
中央の甲板に小さな魚が大量に乗り上がっていた。ミケやハインツがデッキブラシを使って外へ放り出すも、魚は続々飛び乗る。私は手伝おうと駆け寄った。
「従者くん、これどうする!? 食うか!?」
ミケがラウロを見ながら叫んだ。ラウロは顔をしかめる。
「いりません。魔物が寄って来るとまずいので早く追い出してください」
言った途端、船がぐわんと揺れた。魚を掴もうと腰を曲げていた私はよろけてしまう。
「おっと。大丈夫?」
ハインツが支えてくれたので転ばずに済んだ。
「あ、ありがとう。でも今のってもしかして……」
今度は明らかに何かがぶつかっている衝撃があった。船が大きくぐらついて、私は咄嗟にシルフィの姿を探した。
「シルフィ! 大丈夫!?」
「うん」
シルフィは揺れる船の中でもしっかり踏ん張って立っていた。体幹が強い。私はハインツに支えてもらわないととても立っていられなかった。
「相当な大きさだな」
ユリスが縁に捕まりながら海の方を覗き込んでいる。ラウロは魔法で魚を全て海へ放り出すと、ユリスの下へ駆け寄った。
「魚の群れが、魔物に追われてここに飛び込んだのでしょうね」
「だろうな」
魚もいなくなったしこれで一件落着、と思いきや、また船が大きく揺れた。ラウロは甲板を駆けて、ユリスとは別の方から海を覗き込んでいる。
「どうやら逃がしてはくれないようですね」
「ど、どうするの?」
不安になって聞くと、ラウロは私を見て微笑んだ。
「大丈夫ですよ」
その微笑みに私は嫌な予感がした。どう大丈夫なのか聞こうとするも、シルフィが、
「僕も手伝う!」
強い眼差しで、召喚の本を抱えてラウロを見上げていた。
「召喚士、お前は引っ込んでいろ」ユリスはシルフィを押しのけると、ラウロの目をじっと見た。そして静かに言う。
「ラウロ、魔物は真下だ。手の出しようがない」
「そうですか。では仕方ありませんね」
ラウロは何でもないことのように言って、シルフィに「万が一の時はお願いします」と声をかけた。シルフィは頷く。
「え、ラウロ、何かするの?」
私が問うも、ラウロは私の方を見向きもせず海を見つめた。
「ねえ、何する気なの?」
「……木偶、エコを捕まえていろ」
ユリスが命じるように言って、ハインツは素直に私の体に腕を回した。私がまた問いかけるより早く、ラウロは甲板から海へと飛び込んでいた。
「え? う、嘘」
私は信じられない光景に混乱した。ただでさえ海の中は危ないのに、この状況で飛び込むなんて自殺行為だ。私は咄嗟にユリスに怒鳴っていた。
「何で、ちょっと、危ないんじゃないの!?」
「このままでは船が沈む。ラウロには直接魔物を仕留めに行ってもらっただけだ」
「そんなの、いくら魔法が使えるからって無理に決まってる! 何で行かせたの!」
私以外、海に入ったことがある人はいないはずだ。慣れない海中で魔物と戦うなんてきっとすごく難しい。でも何か勝算があるのかもしれない、そう思って聞いたのに、ユリスの答えは
「他に方法はない」
それだけだった。唖然とした。信じられなかった。
船がぐらぐら揺れる。私、また何も出来ない。立っていることすら出来ない私に、何が出来るっていうんだろう。
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