勇者から魔王に転生しました

カニ

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この素晴らしいセカイに勇者を!

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「もっと分かりやすく説明しろよ!」
 ぐだぐだと語った王様を名乗るジジイに、俺はこらえきれず、そう叫んだ。
 それに、王様はきっと俺を睨むと、

「ちゃんと話聞けよ!」

「俺のせいかよ!?」
 傲慢にも程があるだろ。
 しかも、目の前のジジイは、マジでお怒りのように眉をつり上げている。
「ったく、最近の若者はろくに話を聞かないから困った困った。わしがもっと若い頃には、ちゃんと目上の人には、礼儀をもってだな」
「だぁあああ!だから、なげぇっつってんだよ!」
 また、ぐだぐだと話を始める王様に俺は、急いで止めるように、叫んだ。
「あのさ、せめて、俺がここにつれてこられた
理由を簡潔に教えてくんない?」
「さっき言っ「もう一回教えろっていってんの!」
 大儀そうに口を開く王様を遮る。
「なんか、俺に頼みがあるんだろ!?だったら、ちゃんと説明しろよ!」
「えー、仕方ないなぁ」
「なんで、そっちが譲歩したみたいになってんだよ・・・・・・」
 もうこれ以上、ツッコんでも無駄な気がして、俺は肩を落とす。
「よぅしじゃあ、退屈さを吹き飛ばすため、クイズ形式にしよう!」
「は?」
「第1問!」

 デデンッ!

 訳がわからずにすっとんきょうな声を漏らすが、それを無視して、王様は声をあげた。
 なぜか、どこかから聞こえてくる音を合図に、王様はマイクのように、俺に杖を向けた。
「この世界の名前はなんでしょう!」
「俺はそれを聞いてんだけど!?」
「残り10秒」
「カウントダウン始めんな!」
 そう言う俺の声はまるで、無視して、王様は実にまじめな顔で指を折り始める。
「5、4、3」
「無視すんな!」
「1、0。はい残念!」
「いやだから、勝手に進めんなよ!」
 急に始まったクイズは、タイムオーバーで終了。
 しかし、王様は答えを教えず、憎たらしいかを俺に向けてくる。
「分かんなかったかなぁ?」
「分かるか!ちゃんと説明しろよ!」
「文句多いなぁ」
「ずっと同じこと言ってんだけどなぁ!」
 絶対こいつの下にはつきたくない。
 俺がそう、ため息をついていると、王様は飽きたと言うように、ふうと息をはく。
 もう、教える気はない、というように、ぼーっとしだした王様。
 それに、戸惑っていると、不意に別の声がわって入ってくる。
「私の父がすみません」
 それは、たしか王女様と呼ばれていた少女だった。
 ファンタジー世界すげぇ・・・・・・。
 こうしてちゃんと見ると、すごく美人だ。目があって、ちょっと固まってしまう。
「あなたには、勇者としてこの場所に呼んだのです」
「勇者?」
 俺が聞き返すと、王女は「そうです」とうなずく。
 それに、俺は詳しく聞こうとした、が

「王様!」

 急に轟いた声に、俺の言葉は止められる。
 この場にいる全員は、すぐに駆け込んできた、男に視線を集めた。

「魔物が、襲撃してきました!」

 なにも分かっていない内に、それは始まっていた。
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