勇者から魔王に転生しました

カニ

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勇者が助けを求めるのは間違っているだろうか?

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「おーいおい、いきなりすぎません?」
 次々に破壊されていく町並みを呆然と眺めながら、俺は苦笑いを浮かべていた。

 思い出すのは、数十分前の、王宮でのこと。
「王様!魔物がやって来ました!」
 轟いた兵士の声に、王宮の中に息を飲む声が、いくつも上がった。
「ど、どうしましょう、王様」
 走ってここまでやって来たのか、その兵士は息を荒げて、玉座に座る王様を見上げた。
「もう、ここまで魔物がやって来おったか・・・・・・」
 さっきまでの態度はどこかへ消え、真剣に悩むその姿に違和感しか感じない。
 それをぽけーっと眺めていると、不意に視線があってしまう。
「勇者よ!」
 なんだか嫌な予感がする。いや、ていうか、この先の展開が読めて仕方ねぇ。

「魔物を討伐するのじゃ!」

「命令口調と来たか!」


 想像していたから、特に心の準備ができていないということはなかった。
 あっという間に防具や武器を渡されて、それなりの装備を身に付けた。
 それに、自分はなんだか勇者とからしいから、大丈夫だろうという自信もあった。
 けど、その自信はすぐに崩れ去った。
 目の前に現れた魔物は、3メートルぐらい背丈のある、ゲームでいうトロールみたいなやつ。
 まだ、それだけだったら、自信が崩れるということはない。トロールぐらいなら、鼻に杖を刺せばすぐに倒せる。俺の世界のポッター君はそうしていた。
 俺がこうして立ち止まっているのは、あることに気づいたからだった。

「味方いねぇ!」

 家を壊すトロールの近くに戦う人なんていやしないし、後ろを振り返っても、兵士の一人もいない。
 完全に孤独状態だった。
 そして、それに拍車をかけるのが、どんどん数を増やしてくるトロール。
「これ、勝てるか?いやでも、俺勇者だし、負けるなんてないよな?」
 まあ、パターン的に言えばない、はずだ。だって、まだ冒険始まったばかりだぜ?俺、この世界のことなにも知らねぇままだぜ?
 こんな状態で死ぬのはまずないと思う。
「やるしかねぇよな・・・・・・」
 つまり、退路は断たれていた。
 あの王様、この戦い終わったら絶対殺そう。
 そう意気込んで、俺は不格好に剣を抜いた。

「うぉおっしゃぁああ!かかってこいやぁあ!」

 俺の叫びに、同時に3体のトロールが反応する。
 長剣を片手に携えて、俺は全速力で突っ込

「放てぇ!」
 ドォオン!

 唐突に聞こえた音。しかし、その正体を俺は探ることはできなかった。
 不意に、背中から強烈な衝撃。その勢いで背骨がいくつも折れる音がした。

「お、王様ぁあ!?大砲が勇者様に当たっちゃいましたよぉお!?」
「あ、やべ、やっちった」

 遠退いていく意識。
 騒ぐ声も、耳に入らず、俺はまぶたを下ろす。
 全身を襲う苦痛が徐々に消えていって、なんだか感覚すべてがなくなっていく。

 これで終わり?
 俺、勇者だよな?
 
 そんな思考はぷっつりと途切れて、

 勇者のはずの俺は、こうして死んだ。
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みんなの感想(1件)

神崎
2016.11.01 神崎

2重人格ですか?

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