学院の魔女の日常的非日常

只野誠

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夏の終わりは地底で涼みながらの虫駆除な非日常

夏の終わりは地底で涼みながらの虫駆除な非日常 その2

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「え? 魔力の水薬用の薬草の輸送が遅れてるんですか?」
 騎士隊の教官たちが急かすので生産部隊は持ち回りで夜中も生産し続け、翌朝までには最初にもってきていた水薬用の薬草はすべて使い切ってしまっている。
 それも早朝には新しい薬草が届くという話があったからだ。
「なんでもオオグロヤマアリとは別の大型虫種に襲われて一旦引き返したって話ね。さっき伝令が来て騒いでたわよ。やったね、今日は暇になったね」
 スティフィが朝早くに駐屯地を回ってきて仕入れた情報をミアに伝えた。
 ミアも夜中に魔力の水薬を作っていたので今起きたばかりだ。とはいえ、まだ朝の時間と言っていい時刻ではある。
「ラダナ草くらいならすぐ見つかりますけど、採取に行ったほうがいいんですかね?」
 ミアはこともなさげに、そんなことを言っているがこの辺りは危険地帯の真っただ中だ。
 ミア達がのんびりしていられるのは駐屯地に敷かれている虫除けの陣によるものでしかない。
「止めなさい、この辺りは危険なのよ? わかってるの? 学院の裏山ならまだ離れてるからいいけど、この辺りはオオグロヤマアリの狩場なのよ? そもそも巣の出入り口が一つとは限らないんだし、というか、ここを封鎖してるからもう別に出入口を作っているはずだし。話にでてたように別の大型虫種もいるんだからね?」
 未だ緊張感も危機感もないミアにスティフィが苛立ってそう言うが、ミアには伝わってないように思える。
 この駐屯地に入るのだって騎士隊本隊の護衛されながら魔術学院の在学中の生徒はやって来ている。
 生徒だけで、この駐屯地を出るなど危険すぎてまず許可が出ない。
 それなのにミアは、
「じゃあ、巣の中にでも入ってみますか!」
 などと、言っている始末だ。
 ただこれはミアの冗談なだけで、ミアも巣穴に入るつもりなどはない。
 そのことはスティフィもミアの表情からわかってはいるが、どうしても呆れてしまう。
 ミアには危機管理能力がなくどこまでも呑気だ。
「あんたねぇ…… 大型の虫種って危険なのよ? 下手な外道よりも厄介なんだからね?」
 種としてみれば、外道種などより虫種の方がよほど厄介である。これは大型であろうとなかろうと虫種は大繁殖をするからだ。
 一度大繁殖すると人の手ではもう止めようがない場合がほとんどだ。
 そして、それらはすべてを食い尽くし自滅するまで止まらない。それを止められるのは竜種か一部の上位種くらいだ。
「でも、スティフィはついてきてくれるんですよね?」
 ミアにとってスティフィは何度も危機を救ってくれた恩人でもある。
 またスティフィ自身もミアの護衛と度あるごとに自称しているため、ミアにとってとても印象深く残っているのだ。
 その結果、ミアの中でスティフィは戦闘に関しては誰と戦っても負けないくらい強い、という評価にまで勝手に上がってしまっている。
「あー、信頼してくれてるのは嬉しんだけどね。私は基本的に対人用の戦闘しか教わってないの。それも言ってしまえば暗殺の類のやつよ。正面切ってはそれほどでもないし、ましてや虫種の相手何て専門外、無理よ」
 そう言って右手をひらひらと振って見せた。
 それを聞いたミアは少し不思議そうな表情を見せた。その表情をスティフィが見る前に、
「そうだぞ、あいつら想像以上に厄介だぞ」
 そう言ってエリックが、どこから来たのか、ミアとスティフィの会話に入り込んで来た。
 そして、スティフィの隣に座る。それをスティフィは邪魔そうに見ているが、エリックがそんなことを気にするわけもない。
「あら、エリックさん。今日は巣には入らないんですか?」
 と、ミアが声をかけると、
「昨日の怪我で今日は様子見で、ってことになったんだよ。あいつら土の中に潜って待ち伏せしてて急に毒液をかけてくるんだぞ。それでこのありさまだよ」
 そう言って変えたばかりの包帯姿をエリックは服をはだけさせて見せてきた。
 血ももう出ているわけではないので、包帯の下がどうなっているのかまでは想像もつかない。ただ昨日ミアが見たときはかなり広範囲に酷く爛れていた。
 ミアの作った軟膏が効いていれば、それでもよくはなっているはずだ。
「鎧とか身に着けてなかったの?」
 スティフィが聞くと、
「着ててこれだよ」
 と、エリックは肩をくすめた。
 もちろん、鎧自体が溶かされたわけでなく、鎧の合間から酸が入り込んでの怪我だろうが、それでも昨日は痛々しい痕を残していた。
「だそうよ、ミア、やめときなさい」
 体力はあるが割とどんくさいミアはアリたちにとってはいい餌な事だろう。
 エリックの怪我を見るに、スティフィにとっても鎧の上からあの怪我を負うとは予想外だった。
 想像以上にオオグロヤマアリの酸を飛ばす勢いも酸自体の強さも強いようだ。
 スティフィが着こんでいる革鎧ならある程度は防げるだろうが、そう何度も防げるものでもない。
 下手すれば一度でも酸を受ければで特殊加工されたこの革鎧も穴が開いてしまい、鎧としてはもう機能しなくなるかもしれない。
「えぇ…… せっかく古老樹の杖が活躍する機会だと思ってたのに」
 ミアは不服そうにそう言った。
 確かに超一級品の使徒魔術の触媒の杖を貰いはしたが、今は裏山を歩く時の散策用の杖としか活用されていない。
 ミア自身が使徒魔術を使う機会など今のところないので、使いたくてうずうずしているのだろう。
 スティフィもエリックもその気持ちはわからないわけでもない。
 なにせミアが持っている古老樹の杖は、使徒魔術としては最高峰の触媒なのだ。試してみたくないわけがない。
「って、なんか呼んでね?」
 と、エリックが騎士隊の隊員が集合の号令をかけているのに気が付いてそう言った。
「ほんとだ生産組も呼ばれてますね、行ってきます」
 ミアは立ち上がり集合場所へとかけていった。
 ついでに、エリックは今日は休みだから、と集まりに行く気はないようだ。

「ヒグセイオオムカデ? っていう、ものすごいでっかいムカデが輸送隊を襲ったらしいですよ」
 しばらくして帰って来たミアはそんなことを言った。ついでに生産部隊も今日は休みらしい。
 薬草がないので魔力の水薬も作れない。
 またその多くが非戦闘員の生徒や訓練生なので、無理やり駆り出すのも危なっかしい。
「聞いたことないわね」
 とスティフィが、ムカデなんてどれも知らないわよ、とそう言った顔を見せた直後に、エリックが声を荒げた。
「げ、オオグロヤマアリなんかよりもよっぽど厄介な奴じゃん。噛まれたらすぐ処置しないと壊死しちゃうヤツだよ。うちの実家の方にも生息してるよ」
 エリックはそう言ってうんざりした表情を見せた。
 確かにエリックの生家、ラムネイル商会がある地方にはヒグセイ地方と呼ばれる地方がある。
 ヒグセイ地方も北の地だ。南のこの地と中央を挟んで距離がありすぎる。この辺りにそこいらの地名の付いた虫種が出る方のはやはりおかしい。
 仮に、地下で洞窟が繋がっていても距離がありすぎる。ここまで来ることなどありはしない。
「それも大型虫種なの?」
 と、スティフィがエリックに確認する。
「北のほうでも、俺の脚くらいの太さになるから、こっちだともっとおっきいんじゃない? 知らんけど」
 と答えが返ってきた。
 その大きさなら間違いなく大型の虫種と言って良い。
 単体であるならば、確かにオオグロヤマアリよりも厄介そうだ。
「で、それが群れでこちらに向かってるって話ですよ」
 それに付け加えるように、それでいてまるで他人事のようにミアはそう言った。
「は? 群れで? ムカデは群れで行動しないでしょう? それとも、そのなんとかってムカデは群れで行動すんの?」
 それを聞いて今度はスティフィが声を荒げた。
 どうも根本的にここの虫種の行動はどこかおかしい。
 しかも、騎士隊と訓練生で一度山狩りをし大型の虫種を狩りだした後でこれなのだ。
 スティフィは本格的に、この駐屯地からミアを連れ出し魔術学院に帰ることを思案し始める。
「んなこと聞いたことないな」
 と、エリックも自信なさそうではあるが、そう答える。
「どうなってんのよ」
 と、スティフィはそう言いつつも、どうやってこの平和ボケしているミアを帰らせるか思案する。
 ただ、帰るにしてもこの虫除けの陣が敷かれている駐屯地から今出るのは逆に危険かもしれない。
 この分だと蟻やムカデ以外にも大型の虫種がいてもおかしくはない。
「大丈夫ですよ。この駐屯地には虫除けの陣が敷かれてるんですから」
 と、ミアが落ち着いている理由を口にする。
 それと口にはしないが、ミアが落ち着いているのは身近にスティフィがいるおかげだ。スティフィなら守ってくれるとミアは信頼しきっているところも大きい。
 ただ、確かに虫除けの陣の効果は絶大でこの辺りで羽虫すら見ることはない。そんな場所から単独で帰るほうが危険ではある。
 一番安全で確実なのは、補給部隊が帰るときに同乗させてもらうことだ。
 一度襲われたことで護衛の数も増えてはずなので、その安全性も高いはずだ。
 補給部隊は遅れているだけで、来ることは来るはずだ。それまでにミアを説得させなければ、とスティフィは考えつつも、骨が折れるとため息をつく。
「それはそうだけど、流石にここいらの虫種、おかしいわよね? ミア、魔術学院に帰ることも視野に入れといてよ?」
 とスティフィが言うと、ミアはあからさまに嫌そうな顔をした。
 久しぶりの野外活動と、出自絡みのいざこざで気分を紛らわしたいのかもしれない。もしくは今学院に居ても暇だからかもしれない。
 ただ、そんな呑気なことを言ってられる時間は終わった。
「ギャァァァァァァアァァァァァアァァァァァ!!!」
 複数の悲鳴が響き渡り、何人かの魔術学院の生徒が我先にと逃げていった。
「悲鳴?」
 と、ミアが悲鳴が聞こえたほうに視線を向けると、また数人の人間が大慌てで逃げで行く。
 その後を追うように大きな、それこそミアの胴程の太さのムカデが数匹確認することができた。
 赤子なら丸のみにできるほどのオオムカデだ。
 そこまで大きく黒いムカデはよく目立つ。遠目でも簡単に発見することができた。
「ちょ、ムカデじゃん、虫除け無視して入って来てんじゃん!!」
 エリックが悲鳴じみた声を上げる。
 オオムカデを確認するとスティフィは素早く右手で印を結ぶ。
「害する者の虚ろに燃える黒き片翼よ。障害を腐り朽ち果てたまえ」
 スティフィが素早く使徒魔術を発動させる。先頭を走り、こちらに向かってくる一匹のオオムカデが即座に黒く朽ち、そのままピクリとも動かなくなった。
 だが、次から次へと別のオオムカデが現れる。
「荷物持ち君、ここをお願いします! 私は天幕で休んでる人を起こしてきます」
 そう言ってミアは天幕へと走り出した。
「俺も装備取ってくる!」
 と、エリックも今は丸腰なので自分の天幕へと向かう。
「あの連弩も持ってきて! ミアの天幕にあるから!」
 と、スティフィはその場に残り、エリックに声をかける。
 スティフィはミアについていこうかと思ったが、ミアにはまだ精霊が憑いている。ミアに危害が及ぶことはない。
 それに今は情報収集を優先したい。そのため現場に残ることを選択した。
「わかった、すぐ戻ってくる」
 そうこうしているうちに、近づいてきたオオムカデの頭部を荷物持ち君がその太い腕で的確に叩き潰した。
 頭をつぶされたオオムカデは動きを止めずに、その場でじたばたとのたうち回っている。
 ただのたうち回ってはいるものの、もう目標を定めて襲ってくる様子はない。
 荷物持ち君は同じ要領でオオムカデの頭部だけを次々につぶしていく。
 これなら荷物持ち君に任せておけると、スティフィはその間に、周りの様子を確認する。
 さすがは騎士隊と言ったところか、初動のみ混乱していたが、ハベル教官の的確な指示で既に反撃に出ている。
 エリックが装備を整えて戻ってくる頃には方がついていることだろう。
 ただこの駐屯地も安全でないとなると、無理やりにでもミアを学院まで連れ帰ったほうが良いとスティフィは決断を下す。
 少しすると、付近のオオムカデの頭部をすべてつぶし終わったのか、荷物持ち君が戻って来る。
「ねえ、荷物持ち君。ミアの安全のために学院に連れて帰りたいんだけど協力してくれない?」
 荷物持ち君相手にスティフィが話しかけると、荷物持ち君は頭を横に振った。
「え? なんで? ミアの安全のためよ? ああ、ミアの命令じゃないからっていうの? ミアを説得しないとダメ?」
 と聞き返すと、荷物持ち君は今度は頭を縦に振った。
「古老樹だけれども使い魔ってわけなのね。でもミアは素直に言うこと聞いてくれないわよね、ミアの護衛、頼んだわよ。私は今回、あんまり戦力になれないんだから」
 スティフィがそう言うと、任せろ、とばかりに荷物持ち君が右手を上げた。
 それと同時に慌てた様子でエリックが鎧を付けながら帰ってくる。
 そして、頭の潰されたオオムカデを目の辺りにする。
「あちゃ、もう終わったか? 俺の活躍を見せつけようとしてたんだけどな。ほら、連弩だ。予備の弾倉もいくつか追加で持ってきたぞ」
 持ってきた連弩と予備の弾倉をスティフィに渡し、着けかけの鎧をちゃんと着直すことに専念する。
「ありがと。ここいらのムカデは、ほぼ荷物持ち君が倒してたわよ、もう騎士隊の攻勢が始まってるから鎮圧も時間の問題ね」
 辺りの警戒を怠らずに様子を見つつ、スティフィはどうミアを説得するか考え始める。
 どれくらいのオオムカデが虫除けの陣を無視し、この駐屯地に入り込んだのかわからないが、虫除けの陣が効果を発していないと言うことはなさそうだ。
 その証拠に、羽虫や蚊といった虫種は未だに入り込んでいない。
 虫除けの陣はその効果は絶大だが、あくまで虫除けであり、虫が絶対に入ってこれないわけではない。
 陣の内部から虫に手を出し挑発などをすれば、虫でも陣内に侵入してくることはある。だがそれは非常に稀なことだ。
 大概の虫は虫除けの陣内にはいことを嫌がりその場を去るはずだ。それがここまで、しかも複数、侵入してくると何か他に理由がないと説明がつかない。
「こいつら頭つぶされてまだ動いてんのか…… 凄い生命力だな」
 未だにビチビチとのたうち回ってるオオムカデを剣で突っつきながらエリックは面白がっている。
 それを呆れながらスティフィが見ていると、どこからともなく聞こえてくる細かく震えるような異音に気づく。
 スティフィがその異音の元を追って空を見上げると、かなりの上空にばかでっかい蜻蛉が優雅に空を舞っていた。
「って、何あれ…… まずくない?」
 釣られて視線を追ったエリックは興奮気味に叫んだ。
「うお、あれはリュウヤンマじゃねぇかよ。空の王者だよ。あの大きさのは…… やべぇぞ……」
 ただ最後の方の言葉には若干の絶望が見え隠れしている。
 リュウヤンマは空中戦では竜を狩ることもあると言われている巨大な蜻蛉で、その空中での飛行能力はまさに空の王者に相応しいものだ。
 もちろん肉食性で人だって襲う。
「なんであんなばかでっかい虫が空飛んでんのよ! ミアと合流するわよ、急いで!」

 ミア達一行も含めた生産部隊も騎士隊本体と合流したが、空を飛ぶリュウヤンマという巨大な蜻蛉には手も足もも出ない状態だ。
 リュウヤンマという巨大蜻蛉が高度を下げて近づいてくると物凄い爆音と突風をともっていた。
 それで誰もまともに近寄れもしないし、そもそも対空の兵器も持ち込んでもいない。
 個人で扱える弓矢程度では、リュウヤンマの外骨格を抜くことはまず不可能だ。
 まずは駐屯地に連れてきている馬がその犠牲になった。
 一瞬のうちに地上にいた馬を空高く連れ去り、辺りにその血の雨を降らせた。
 さすがに今の装備では対抗手段がないと判断したハベルは騎士隊の指揮のもと、リュウヤンマが馬に気を取られているうちに、一旦オオグロヤマアリの巣へ全員で逃げ込むこととなった。
 駐屯地の虫除けの陣が効かない以上、他の虫種もやって来る可能性があるし、リュウヤンマが一匹だけとは限らない。
 巣の入口に再び虫除けの陣、いや、より強力な防虫の陣を張りそこを一時的な拠点とするつもりだ。
 だが、これはあくまで苦肉の策だ。


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