それなりに怖い話。

只野誠

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ろうか

ろうか

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 古い家だ。
 特にトイレの前の廊下。
 誰かがその上を歩くと、ギギギッと音がする。
 少女が幼いころ住んでいた家はそんな家だった。
 
 その音は結構な音だった。
 特に音のなる床は少女の部屋とトイレの間にある場所だ。
 夜中に誰かがトイレに行くとその少女は目を覚まし、誰かがトイレに行ったことがわかるほどだった。

 そんなことが数日続いた。
 
 夜中に連日起こされ少女も寝不足だ。
 親に寝不足を指摘され、少女も少し憤り、真夜中にトイレに行くからだ、せめて音のなる廊下の前は通らないで、と少女は言い返した。

 その言葉に両親は顔を見合わせる。
 そして互いに夜にトイレ行ったか? と互いに聞き合い、そして、首を捻る。

 少女はどっちかが隠しているのだと思っていた。

 その夜はちょうど週末だったため、少女はどっちが嘘を付いているのか確かめるためにわざわざ夜遅くまで起きていた。
 そして、廊下の音が鳴るのをこっそりとまった。
 部屋の電気は消し、机の卓上ライトだけで本を読み時間を潰していた。

 夜の二時を回った時だろうか。
 廊下からギギギっと音と、誰かが廊下を歩く音がする。
 少女はすぐ、ばれないように卓上ライトも消して、ドアの下にあるほんの少しの隙間から外の様子を伺おうとする。
 床に頭を擦りつけてドアの下から外の様子を覗き見る。

 まっくらだ。
 電気はつけていないようだ。
 なら、母親ではない。母親は怖がりなので真夜中でも電気を着けてから歩くからだ。
 父親が嘘つきか、と少女は憤る。

 バキバキバキと少女の部屋の前で大きな音がする。
 
 ちょうど少女の部屋のドアの前を歩いているようだ。
 
 少女は、よし、扉を開けて文句を言ってやる、そう思った時だ。
 覗いていたドアの下の隙間に、足が見えた。

 青白い足だ。

 ただその足は女性の足に見えた。
 少なくとも父親の大きな足ではない。

 母親だったか、と少女は思いなおして、ドアを開けようと身を起こす。
 そこで気が付く。

 なんで足が見えるのかと。

 このドアの向こうは電気もついてないはずなのに、なんで足が青白く見えたのだろう、と。
 それに気づいた少女は、このドアを開けてはいけない、そう思い始めた。

 少女は焦りながらももう一度ドアの下の隙間から廊下を見る。
 白い足が見える。
 まだドアの前にいる。
 しかも、爪先をこちらに向けている。

 少女は焦る。
 なによりなんで足だけが青白く見えるのかが少女には理解できない。
 それ以外の物など何も見えやしないのに。

 そして、ゆっくりと、本当にゆっくりとドアのノブが回る音がする。
 少女は慌ててドアのノブを手で押さえる。

 ガダガダガダガタガタガタガタ。

 少女がノブを抑えると、今度はドア全体が揺れ始めた。
 少女が悲鳴を上げる。

 そうすると、ドアが揺れるのがピタリと止まる。

 しばらくすると、ドタドタと何かが駆け寄って来て、ドアを開ける。
 父親と母親だ。
 そして、少女になにがあったのかと尋ねる。

 少女は泣きながら起きたことを話し、その日は母親の隣で寝た。

 少女が余りにも怖がるので、少女の部屋は鍵付きになった。
 ただ部屋の扉を揺らされるようなことはもう二度と起きなかった。

 あの足がなんだったのか、少女には未だに理解できない。
 ただ真夜中に廊下の床が軋む音だけは家を建て直すまで聞こえ続けた。



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